12話 マルス・ケントレー騎士爵
デリットは西13村へ騎士10人とたどり着いた。着いたときにはマルスは西12村へ行っている為に留守にしていた。
デリットがこの村を出てまだ10日も経っていないのだが村は畑も広がり、家の修繕工事が行われている。残っていた騎士たちが家の修繕を手伝っている。
流石に子供だけでは体格の違いから力仕事は出来ないようだ。力仕事は大人が行い、子供たちは見張りと魔物狩りを行なっていると、残っていた騎士たちから説明された。デリットは子供に魔物狩りかと思ったが、ゴブリン程度の魔物であれば問題ないと思いなおす。
残っていた騎士たちは子供たちから色々と教えてもらっていたので、デリットよりも魔法が使えるようになっていた。魔法で木を伐採する方法、木を乾燥させるやり方などを教えてもらったようだ。そのため騎士たちは魔法の扱いが上手くなりファイヤーボールなどの精度もあがっている。
翌日マルスが戻ってきた。
「マルス村長、話があるんだが時間は取れるかい。」
「あっ、デリットさん大丈夫ですよ。」
マルスとデリットは、村長宅の修繕した部屋で話始める。
「実はね、王都まで一度戻っていたんだ。そこで陛下と話し合いをして来たんだ。マルス村長の事だよ。」
「お、俺の事ですか、スタンピードで生き残った事でしょうか。」
「それも有るが、後はスキルの事だね。人にスキルを与える事が出来るなど普通ではありえない事なんだ。」
「それは俺も驚いています。まさか人にも出来るとは思いませんでしたから。」
「そのスキルの事が公になるとマルス村長が狙われる可能性が出てくるんだ。」
「えっ、何でですか。」
「強欲な貴族や商人たちがたぶん群がってくる。今のマルス村長の地位では対抗できないんだ。そこで陛下はマルス村長に爵位を授けて、村のみんなにも騎士の称号を授けるようにと言われたんだ。」
「村のみんな全員ですか。」
「そうだね、マルス村長を含めた18人全員にだ。」
「あのー、まだ4歳の子もいますがどうなんでしょう。」
「・・・・・陛下は全員と言っていたから4歳でもいいのではないかな。・・・多分。」
「みんなに一度報告してからですね。村の12人はいいとしても、商人のメイスン一家とガレイスさん、モレガさんには承諾が必要でしょう。」
「そうだね、メイスンとガレイス、モレガを呼んで話してくれるかい。」
マルスが呼んだメンバーはエミー、メイスン、セリル、ガレイス、モレガの5人であった。
マルスとデリットを入れた7人で再度デリットから説明がなされた。
「騎士ですか、あのー、うちの子は4歳と6歳なんですが。それにスキルももらっていませんが如何しましょうか。」
「たとえスキルを貰っていなくとも今回は受けてもらう。みんなが平民のままだと貴族に対応できない。万一連れ去られることも有りうるからな。特に此処に居る18人は特別なんだ。」
「デリット様、いいですか。」
「何だガレイス。」
「俺とモレガは冒険者なんです、たいていの相手なら蹴散らすことも逃げる事も出来ます。それでも必要ですか。」
「ガレイスとモレガの強い事も分かっている。だがもう自由な冒険者は出来ないと思ってくれ。名目上マルス村長の家臣となってもらう。拠点をこの場所にしてもらえれば後は自由に出来るように計らう事は出来る。そのくらいしか今は出来ないな。」
「家臣ですかい。ハーー、魔法が使えるようになった恩もあるしな。当分は家臣として働くか。」
「そうだなガレイス。此処に居れば魔物狩りも出来るし悪くないかもな。」
「メイスンとセリルはどうだ。」
「デリット様、私たちは行商をしていただけの平民です、それにただ守ってもらっていただけです。」
「それでも今回は騎士になってもらう。行商に出て家族全員が捕まり一生いいように使われるぞ。小さい子供の為にもあきらめろ。」
「やはりそうなりますよね。分かりました、マルス村長宜しくお願いします。」
「な、何か勝手に話が進んでいるように思うんですが。」
「マルス村長、もう決定しているんだよ。マルス村長には王都に一度来てもらう、これはなるべく早くに来てもらうぞ。マルス村長がいない間は連れてきた騎士たちに守りをさせる。多分だがこの村に騎士が常駐することになると思う。」
「なんかすごい大事になっていますね。あまりよく分かりませんが、この村にスキルを狙って貴族や商人たちがやって来ると言う事ですね。」
「そうだ、今はまだばれていないから大丈夫だが、いずればれる事は確かだな。何しろ村人全員が魔法を使えるなんてありえないからね。」
「ばれる前に体制をつくってしまおうと言う事でしょか。」
「そうだね身分もその一つだね、それと村の防衛も高めないとね。」
「分かりました俺は王都に行きます。」
「マルスが行くなら私も行く。」
「えーー、エミーはお留守番だよ。みんなを守ってもらわないといけないからね。」
「えー、でもマルス一人じゃ心配だよ、マルス抜けているところがあるんだもん。」
「デリットさん俺そんなに風に見られているんですかね。」
「・・・・知らん。だが今回はマルス村長一人だな。王城へ入れるのはマルス村長だけだからな。」
「そうだってエミー、今度王都へ連れて行ってあげるから、今回はお留守番していてね。」
「うううっ分かったわ、今回は諦める。でも王都は遠いから気を付けてね。」
翌日、マルスとデリットと他2名の4人は馬に乗り急ぎ王都へ向かった。
マルスとデリットは7日かけて王都に着くことが出来た。途中でデリットがスライムを生け捕りにしていた。デリットの説明では陛下にみせるために使うと説明されたのでマルスも出来る限りスライムの生け捕りを手伝っていた。中には珍しいスライムもいたのでそれは自分がスキルを取っておいた。デリットにはばれていなかった。
「これが王都ですかでかいですね。何ですかこの防壁は20メートルはありますよ。」
「このくらいないと魔物も敵国も防げないだろう。」
「そうなんですか、うちの村では難かしいですね。」
マルスとデリットは急ぎ王城へ向かう。
「いいかいマルス村長、村長は貴族であっても爵位が無いために陛下と話すことが出来ない、爵位を授かって初めて話すことが出来るようになるんだ。教えたとおりに片足を突き頭を下げていれば進行役の者が指示を出してくれるからな。」
「なんか不安になってきました。」
マルスは王城の謁見の間にきていた。周りには多くの貴族達がマルスを観察している。マルスは片足を絨毯に着き首を垂れている。もう10分以上この体制をしている、マルスは貴族達からの視線と動く事の出来ない体勢に疲れ切っていた。心の中で早く終われと念じていた。
この陞爵式の進行役であろう者が陛下の到着を伝える。
スレイト王国の国王が玉座に座るのが気配で分かった。
陞爵式は淡々と進みマルスは無事騎士爵を授かる事が出来た。問題はここからであった、マルスはこれで終わったと思っていたが、そうではなかった。謁見の間にいた多くの貴族達は退室していったが、少数の者は残っていた。マルスは自分が退室していいのかが分からず、進行役の者に目線を向けるが進行役は首を小さく横に振る。
「マルス騎士爵、ここでスキルを見せてくれぬか。」
「は、はひ、陛下のご希望とあらばお見せいたします。」
「マルスよ、そう緊張するな。」
「だ、大丈夫ひゅう。」
マルスは緊張の為噛んでしまった。少し恥ずかしいが、そんなことを考えている余裕もなくなっていた。
「まずは余にスキルを付けてもらえるか。」
「えっ、陛下にですか。」




