1話 西13村の生き残り
今僕はどうしたらいいのか分からない。
僕はマルス・ケントレー。西13開拓村の村長の息子だ。
僕たちは数日前まで平和に暮らしていた。そう村が魔物に襲われるまでは、西13開拓村はスタンビートによる魔物の襲来により村が壊滅した。大人たちは村を守るために魔物に立ち向い殺された。
僕たち子供は家の地下倉庫に押し込められその中で2日過ごした。地下倉庫の2日間は地獄だった。
このまま魔物が、この地下倉庫にいつ入ってくるのか怖くて不安を抱えながらの二日間だった。
一日目で魔物の音はしなくなったが、恐怖で外に出られなかった。だけど食料が無くなりみんなで外に出てきた。
僕たちは夜が明けると地下倉庫から出て村を見回した。そこには壊れた家と人間の骨が散らばっているだけだった。生きている者は誰もいなかった。
僕はどうしたらいいのか分からない。
「マルス、どれからどうする。」
「エミーどうしよう。」
僕を入れて子供が10人、僕とエミーが一番年上で10歳になったばかり、あとは5歳から8歳の子供達しかいない。村のみんなは魔物に殺されてしまった。
この中で僕とエミーが一番年上だ、僕が頑張らないと。
「みんな食べ物を探そう。3人一組で探すんだ。エミー(10)、ルイス(6)マイク(6)とトリス(8)アミ(7)テミ(5)とジミー(8)ケリー(7)シルク(5)の3組で食料を探すんだ。
太陽が真上に来たらこの場所に戻ってくるんだ。僕は村の周りを見てくる。」
「マルス一人じゃ危ないよ。」
「エミー大丈夫だよ。僕は教会で10歳の儀を受けたからもう魔法が使えるんだ。」
「えっ、・・・・・・そうだったね。」
この国では10歳になると10歳の儀という教会で祝福される。その時に神の祝福があり、スキルを手に入れる事が出来る。マルスとエミーは村が襲われる2週間前に10歳の儀で祝福を受けスキルを授かっていたのだ。だがエミーはマルスが戦闘用のスキルでないことを知っている。マルスは戦闘スキルでないことを悔しがっていたからだ。戦闘スキルは剣、槍、弓、魔法が代表的だ。その戦闘スキルを授からなかったことを知っているエミーだが周りに子供たちが居る事で何も言えなくなっていた。
「エミー、みんなを頼むね。」
マルスは村の外に向かい走っていく。
マルスは不安でいっぱいだ、どうすればいいのか分からない。でも何かしないといけない。
村の外は魔物の死骸が至る所に転がっている。骨だけになっている魔物もいるがそのままで死んでいる魔物もいる。マルスは不思議に思い。祝福で授かった。鑑定を使ってみる。
「鑑定」
ゴブリン死骸
「鑑定」
ゴブリン死骸
「鑑定」
オーク死骸
「鑑定」
ビックマウス死骸
「鑑定」
オーク レベル12
スキル 強化
「あっ生きてる。」
マルスは焦って周りを見渡す。剣が落ちているのを見つけ拾う。動く事の出来ない瀕死のオークに剣を突きさす。
するとマルスの中に力が入ってくるのが分かる。
「やっぱり父さんが言ってたことは本当だったんだ。」
マルスは村長であった父に魔物を殺すと自分の力が強くなると教えてもらったことがある。他にも色々と教えてもらった。思い出すと自然と涙が出てくる。マルスは涙を拭いて、魔物の死骸を確認していく。生きている魔物はほとんどいないがたまに虫の息であるが生きている魔物がいる。マルスは生きている魔物を剣で突きさしていく。
マルスは考え事をしながら魔物に鑑定をしていた。
僕の貰ったスキルは鑑定、融合、分離の3つだけだ。融合は物と物をくっつける事が出来る、要は接着剤のように使われることが多い。あまり人気のないスキルであった。分離についても同じようなもので接着していた物を分離することが出来るだけであった。
マルスは魔物を鑑定しながら、自分のスキルの事を考えていた。融合かぁー、もっと実戦で使えるスキルならなー。これじゃ職人にしかなれないよなー。戦士とか魔法使いになりたいよなー。
融合、鑑定、分離とぶつぶつ独り言を言いながら、魔物を確認していくマルスは融合と言った時にスライムを踏んでしまった。するとマルスとスライムが混ざっていく慌てたマルスはスライムを引きはがそうとするがマルスの体の中に混ざってしまったスライムは離す事が出来なかった。
マルスは焦っていた、スライムが自分の中に入ってしまった。何とかしなければいけない、マルスはハッと思い出す。分離というスキルがある。マルスは分離と叫ぶ。するとマルスとスライムが元に戻っていく。
ほっとしたマルス。マルスは戻れると分かると、今度は試したくなった。融合、分離のスキルがあれば合体が出来る、力が強くなるかもしれないと思ったのだ。
マルスはまずは自分のステータスを確認した。
マルス・ケントレー 男 10歳 レベル4 スキル 鑑定 融合 分離
スライム レベル1 スキル 吸収
マルスはもう一度、スライムを融合してみようとスライムをまた踏んで融合と唱える。
融合したマルスは自分を鑑定してみるマルス 男 レベル4 10歳 スキル 鑑定 融合 分離 吸収となっていた。
マルスとスライムが融合したことでスライムの持っていたスキルがマルスも使えるようになっていたのだ。マルスは吸収がどんなスキルか知らなかった。
融合したマルススライムは生きている魔物がいないか探し回った。すると瀕死のオークを見つけた。マルスはそのオークに鑑定をしてみる。オーク レベル11 スキル 剣 強化、マルスは鑑定しながら困っていた。どうすれがいいのか分からなかった。
まずマルスはオークに触れながら吸収と唱えたが何も起こらなかった。融合と同じで自分に取り込めると思ったのだ。
マルスは瀕死のオークの前で考え込んでしまった。どうしようオークに鑑定を掛けたままで剣のスキルが欲しいなと思いながら吸収、吸収とオークを蹴飛ばした。するとオークから剣のスキルが消えてマルスのスキル欄に剣のスキルが移っていた。
「おおおおおおおおおーー何だこりゃーー。」
マルスはスライムの吸収を分離して自分に吸収のスキルを付けれないかと思ったのだ。マルスは他にスライムがいないか必死に探し回った。何匹かのスライムを探して鑑定を行ったすると面白いことが分かった。スライムは弱い魔物である。子供でも倒せるほどに弱い魔物だ。だがスキルが他種多様なものを持っている。火魔法、土魔法、水魔法、治癒魔法、吸収、光魔法、分離と色々なものを持っていた。
マルスは試しに火魔法を吸収してみる。スライムから火魔法のスキルが消えてマルスに火魔法のスキルが付いていた。マルスは火魔法を使ってみる。「ファイヤー。」ボッと一瞬だが手から炎がでた。一応成功だろう。今度は融合しているスライムを分離して火魔法のスキルを自分が持っているかを確認する。
「おお、火魔法が残っている。」
マルスは「ファイヤー」と唱え先ほどと同じ現象が起きた。「おおおーーー。」
マルスは、融合は有能なスキルだと思い直していた。融合スキルだけでは一生、マルススラムとなってしまうが、分離がある事で戻る事が出来る。それよりも鑑定がある事で融合して吸収が使えるようになったことが嬉しかった。一つでもスキルが無かったら無能スキルとなってしまうスキルだ。実際に分離だけの者、鑑定だけの者、融合だけの者がいる。例えば融合、剣、裁縫などと剣以外役に立たない組み合わせの者が多い。
人は2つから4つ程度を祝福時に授かる。後は後天的にスキルを身に着ける事も出来るが努力がかなり必要となる。魔法スキルなどは努力だけでは無理である、何か一つでも魔法スキルがあれば努力して他の魔法も使えるようになるが、最初の祝福で魔法スキルを授からないと魔法が使えないのだ。
マルスは嬉しくなりスライムの魔法スキルを吸収して回った。