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真実を聞かせていただきます。

はい、真面目に考察パート入りまーす。

「……よし。気を取り直して、詳しい話を聞かせてもらおうか。フェイキッドよ」


 私がフェイキッド様の仕掛けた麻薬の効果を上回る業務をこなしていたことはさておき、ジーキライ陛下主導の元、フェイキッド様からこれまでの話の詳細を聞くことになった。


「まずやはり聞きたいのは、『なぜ自らを死んだと偽り、別人に成りすましていたのか?』ということだな」

「ああ。それについても、シケアルの兄貴の命令だ。十年前――俺と兄貴が七歳だったころ、俺は兄貴に命じられたんだ」


 フェイキッド様は頭を抱えながら重い口調で、その当時のことを語ってくださった。


「兄貴に命じられ、俺は一度『フェイキッド・スクリーム』として死んだ。それから一年程、俺は兄貴以外誰も知らない地下に閉じ込められ、<アブソリュート(完璧なる)アクター(役者)>としてのスキルを磨かされていた。さらにそこから<シスター>を始めとした、様々なスキルも覚えさせられた。そうして出来上がった人物が、"フェイキッドの亡霊"にして、表の顔を『マリアック・アリビュート』――つまり、今の俺だ」

「ちょ、ちょっと待ってほしいのですわ! そんな七歳の頃から、シケアル殿下は何か計画を企てていたのですの!? しかもフェイキッド様の<アブソリュート(完璧なる)アクター(役者)>としての才覚まで見出すなど……それはもう、予知の類ではありませんの!?」


 フェイキッド様が語られる中で、ココラルお嬢様が驚きながら質問された。

 確かにあまりにとんでもない話だ。

 もし本当ならシケアル殿下は幼い頃から今に至るまで、少なくとも十年間は計算して動いていたことになる。




「……ああ。兄貴は本当に今この時までの出来事を、ずっと予知していた――いや、もしかすると『そうなることを知った上で、そうなるように動かしてきた』のかもな」




 そこからさらに紡がれたフェイキッド様のお言葉は、私の想像を上回るものであった。


「兄貴は今に至るまでの出来事を、それこそ『演劇の台本のように、決められたシナリオに沿う』ように動かしているように見えた。俺の才能も、誰がどんな人物でどう動くかも、出会う前から『とっくに知ってる』ように計画を動かしてたんだ」

「そ、そんな馬鹿なことがあるのか……!? それではまるで、シケアル殿下はこの世界の神か何かではないか!?」


 フェイキッド様が語られる、シケアル殿下の裏の姿――

 それを聞いた旦那様は、思わず驚きの声を上げられている。


 私も同じ気持ちだ。

 これではまるで、私達がシケアル殿下の手の平で踊っているようではないか。

 旦那様もおっしゃった通り、これではシケアル殿下がこの世界の神のように見えて――




「もしかすると、本当にそうなのかもしれない。……俺もつい最近まではそう思ってた。だが、多分そうじゃないんだ」

「『多分そうじゃない』……とは、どういう意味でしょうか?」


 ――たが、フェイキッド様は違う見解を持たれているようだ。

 私も気になって思わず尋ねると、フェイキッド様はその理由を答えてくださった。


「……クーリア。お前が現れてから――いや、正確には『お前が前世の記憶を取り戻した時』から、兄貴の計画にほころびが出始めたんだ」

「私が前世の記憶を――<清掃用務員>としての記憶を取り戻してからですか?」

「ああ。お前のその<清掃用務員>としてのスキルは、兄貴が計画のために用意していた"力"を無効化し始めたんだ」


 私の存在が、シケアル殿下の計画を狂わせている――

 私の中で疑問は募るが、フェイキッド様は突如席を立ち、本棚から何冊かのノートを持ってこられた。

 あの本棚は確か、『シケアル殿下につながるもの』があるとおっしゃっていたが――


「このノートは俺が個人的に秘密裏に溜め込んでおいた、シケアルの兄貴が持つ資料を書き写したものだ。俺の<アブソリュート(完璧なる)アクター(役者)>のスキルを使えば、内容をそのまま模写することだってできる」

「吾輩の息子ながら、驚いたスキルだな……。これらはもしや、シケアルに反旗を翻すために用意しておったのか?」

「そんなところ……かな? 実際に俺の力じゃ兄貴には勝てねえから、これまではただの悪あがきだったんだがな」


 フェイキッド様が持ってこられたのは、シケアル殿下が持つ情報だった。

 父上であるジーキライ陛下には『悪あがき』のためとおっしゃっているが、その目にはどこか希望の光を感じる。


「まずはこれから説明するか。クーリア達が"汚れ"と言ってたものの正体になるんだが――」


 さらにフェイキッド様は思わず耳を寄せたくなるお言葉を口にされる。

 <清掃用務員>最大の敵――"汚れ"。

 清掃魂(セイソウル)を研ぎ澄ませながら、私はその正体を耳にする――




「……<暗黒魔法>。人の心さえ意のままに操る、禁断の魔法。それこそが"汚れ"の正体だ」

「<暗黒魔法>……」




 ――私もふと呟いたその言葉。

 それこそがこれまで私が、"汚れ"と呼んできたものの正体だった。

 そしてフェイキッド様は用意したノートを開き、さらに説明を始められた。


「<暗黒魔法>は人の『精神エネルギー』に作用することで、その対象を操る魔法だ。効果を弱めにかけると、視認することさえできない。逆に視認できる程強大になると、人体に多大な悪影響を与える。人の体を病のように蝕むことだって可能だ。このノートに書かれているのは、兄貴が城の蔵書室から持ち出した文献の内容を書き写したものだ」

「こ、この内容は!? わしにも見覚えがあるぞ! いつだったかクーリアやジーキライと一緒に調べた時、見つからなかった文献のものだ! まさか、シケアル殿下が持ち出していたとは……!」


 そんなフェイキッド様の説明を聞いて、旦那様も反応される。

 『精神エネルギー』の魔法を調べていた時に旦那様が見つけられなかった文献は、シケアル殿下の元にあった。

 旦那様の目を盗んでまで手にした文献だ。

 おのずとその内容の恐ろしさも増してくる。


「ですが、クーリアには効果の大小にかかわらず、全ての"汚れ"が――<暗黒魔法>が見えていましてよ?」

「ああ。だから俺はクーリアに可能性を感じてる。クーリアの存在が、<清掃用務員>の力が、兄貴の用意したシナリオにとって、最大のイレギュラーだったんだろうよ。事実、クーリアに<暗黒魔法>を無力化されるとは、兄貴自身も想定していなかったみたいだ」


 ココラルお嬢様も疑問に思われた内容を、フェイキッド様に尋ねられておられる。

 その話を聞く中で、私はなんとなくだが『<暗黒魔法>が見えて、無力化することができた理由』を自分自身でも理解していく――




 私は前世の記憶を取り戻したことで、<清掃用務員>としての力も覚醒させた。

 そして同時に覚醒した清掃魂(セイソウル)は、<暗黒魔法>を"汚れ"だと私に認識させた。

 『人の心を操る』ということは、『人の心を汚す』ということ。

 "汚れ"だからお掃除しなければいけないし、お掃除することもできる。

 この魔法の世界に適応した私の清掃魂(セイソウル)は、そうして私の力となったのだろう。




「クーリアによって<暗黒魔法>を無力化(掃除)された兄貴は、用意した計画(シナリオ)がどんどんと崩壊することに危機感を覚えた。そこで兄貴は俺に"フェイキッドの亡霊"として――」

「クーリアを殺させようとした……ということだな? なんということだ……。吾輩の息子が実の弟を使い、そのような恐ろしい計画を立てていたとは……」


 フェイキッド様の話を聞いて、陛下は頭を押さえながら苦悶の表情をしておられる。

 無理もない。シケアル殿下の凶行は常軌を逸しておられる。

 このような事実を突きつけられて、陛下も気が気でないのは言わずもがなだ。


 ただこれらの話の中で、私には不安がある――




「フェイキッド様。本当に私に、シケアル殿下に対抗できる可能性があるのでしょうか?」

「確かに<暗黒魔法>を無力化するだけで、兄貴を止められるとは考えづらい。だが、これ以外にも可能性はある。まず、お前の"魂"は兄貴の"魂"とは『全く逆の色』だからな」

「"魂"の色……ですか?」


 そんな私の不安に対して、フェイキッド様はご自身の思う可能性を語ってくださった。


「クーリア。お前はスミスピアのおっさんに今の清掃道具を作ってもらった時、"魂"の色を見せてもらったはずだ。何色だった?」

「無色透明ですね。渡された魔法石の元の色から、一切変化しませんでした」

「だろうな。実は兄貴も以前、スミスピアのおっさんに正体を隠して剣を作ってもらってるんだ。その時の"魂"の色は……どんな色さえも塗りつぶす漆黒だ」

「漆黒の"魂"……? そういえばスミスピアの奴も、『気味が悪かった』とか言ってたが、まさかその時武器を作った相手が――」

「ああ。シケアルの兄貴だよ」


 旦那様も口を挟まれたが、確かにスミスピア様もそのような話をされていた。

 だが、"魂"の色だけで一体何を図ることが――


「俺は兄貴の持つ漆黒の"魂"について、<暗黒魔法>の影響だと考えている。<暗黒魔法>は言うなれば、どんな"魂"の色をも塗りつぶす力だ。だが、クーリアの"魂"の色は無色透明。何色にも染まらない。こっちはおそらく、<清掃用務員>としての力の影響だろうな」

「つまりクーリアなら、シケアル殿下の持つ漆黒の"魂"にも塗りつぶされないということですの?」

「まあ、そんなところだ。あくまで可能性の話だがな」


 ――私は疑問に感じていたが、フェイキッド様とココラルお嬢様のお話でなんだか可能性が見えてきた。

 まだ確定した話ではないが、私は不思議と少し自信が出てきた。


 それはきっと、友人と主のお言葉だったからだろう。




「さらにさらにだ。俺がクーリアに可能性を見出してる最大の理由が他にもあるんだ」


 フェイキッド様はそうおっしゃると、今度は別のノートを取り出された。

 軽く見た限り先程の文献とは違い、メモ書きのようだが――


「これは兄貴が個人的にとってたメモなんだが、俺には内容がよく分からなくてな。ただ、クーリア。もしかするとお前なら、この内容も分かるんじゃねえか?」


 私はフェイキッド様にそう言われたため、メモの内容に目を通してみる。

 本当にメモ書きであり、基本的にシケアル殿下ご本人にしか読めなさそうな文字が並んでいるが、気になる文字もある――




「『イベント』……『ルート』……『フラグ』……?」

――おわかりいただけただろうか?

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