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清掃対象:フェイキッド・スクリームⅡ

クーリアが投げかけた言葉は、フェイキッドに何を思う。

「な、何を言ってやがる! 俺は『マリアック・アリビュート』を演じてただけだ! テメェとの付き合いだって、あ、遊びに過ぎねえ!」

「そうおっしゃるのでしたら、あまり狼狽えないでください。私には誤魔化しているようにしか見えません」


 私の言葉を聞いたフェイキッド様は、必死にその言葉を否定してくる。

 だが、右手に持った"ホーク"の銃口は震え、フェイキッド様自身の言葉にも乱れが生じておられる。


 ――このお方は今、動揺されている。


「フェイキッド様。私はこうしてあなたの正体が分かった今でも、一つだけこの胸の内に思うものがあります」

「……何が言いたい? テメェはこの俺に、何が言いたいんだ? クーリア・ジェニスタァァァア!?」


 私から見ると動揺を誤魔化すように、フェイキッド様は私に叫びながら疑問を投げかけてくる。


 これは私の独りよがりかもしれないが、それでも嘘偽りのない気持ちだ。

 私はその気持ちを率直に口にする――




「この私、クーリア・ジェニスターは今でもあなたの友人でございます」

「な……何を言ってやがるんだぁ!? このクソ馬鹿メイドがぁああ!?」




 バギュゥウン!



 ――そんな私の言葉を聞いたフェイキッド様は、"ホーク"から実弾を発射してくる。

 震えた銃口から放たれた弾丸は私には当たらず、そのまま部屋を覆う炎の中へと飲み込まれていく。

 このお方がどう思っているのかまでは分からない。

 それでも私は私の思ったことを口にする。


 私がこのお方をまだ『友人』と思える理由を、どんどんと言葉にして紡いでいく――




「フェイキッド様。あなたが私の命を狙っていたのなら、何故最初から殺そうとしなかったのですか?」

「俺にも『マリアック・アリビュート』っていう立場があるからだ。その立場を考えた上で、テメェの相手をする必要があるからだよ」


 私の命を狙う理由に筋は通っている――


「では、わざわざ『マリアック・アリビュート』として私の懺悔を聞き、果ては私の友人となることを提案してくださったのも、何か理由があってのことですか?」

「……そうだ。『マリアック・アリビュート』という立場を利用しつつ、俺はテメェをいつでもつけ狙うことができたからな」

「あなたのお言葉で、私が気力を取り戻してもですか?」

「そ、それは……」


 私と友人になってくださったことについても、一応の筋は通っている。

 だが、どこか引っかかるものが現れる――


「……それでは、あなたがファインズ公爵邸で『"汚れ"に操られたマリアック・アリビュート』として私を襲った時、途中で手を止めたのはなぜですか?」

「あ、あれは……あれは……」


 ――そして、『操られたマリアック・アリビュートとして私を殺しきれなかった』ことに対しては、ついにまともな言葉を返されなくなってしまった。


 そんなフェイキッド様の姿を見て、私は更なる質問を投げかける――




「ファインズ公爵邸での一件以外でも、あなたは私の命を狙うそぶりを見せながら、どこか私に『手を引く』ことを望まれていました」

「……うるさい」


「最初に下水道で"フェイキッドの亡霊"として会った時も、『ホトトギス』のアジトでも、先程の劇場での一件でも、あなたは『私が"汚れ"騒動から手を引くなら、これ以上命を狙わない』といった都度の発言をされていました」

「……それ以上言うな」




「フェイキッド様。あなたの計画が何かまでは私にも分かりません。ただ、あなたは私に『本当は無事でいて欲しかった』のではないでしょうか?」

「もう……やめてくれぇぇええ!!」




 ――何度も紡がれる私の質問を聞く中で、フェイキッド様は突如これまでの態度から一転し、頭を振り払いながら絶叫され始めた。

 そしてその目からは涙が溢れている。

 まるで抑えられなくなった感情を現すかのように、涙がとめどなく溢れ続けている。




 ――私の直感に過ぎないが、このお方も決して本心で私を狙っていたわけではない。

 このお方もまた、ご自身のおっしゃる『ある計画』に囚われているような気がする。


 それはこれまで、『マリアックの友人』として付き合ってきた私の直感だが、どこかで確信めいたものがある。




「くそぉ……くそぉお!! なんなんだよ!? なんなんだ、テメェは!? なんでこんな状況になってまで、俺のことを信じようとするんだ!?」


 フェイキッド様は、もはやなりふり構わないといった様子を現している。

 <アブソリュート(完璧なる)アクター(役者)>とは思えない、『フェイキッド・スクリーム』としての本心を現すかのように、心の奥底の感情を吐き出すような言葉を続けられる――


「テメェはなんでそんなに、自分を『偽らない』んだ!? なんでそんなに、『嘘』とは思えないことばかり言うんだ!? 『前世はこことは違う世界で生きていた』とか平然と俺みたいな人間にも言うし、どんだけテメェは正直者なんだよぉお!?」

「以前、あなた自身にも言われましたが、私は人付き合いにおいては不器用なのです。ただ、人に対して『隠したり偽ったり』という生き方は、どうにも性に合いません」

「くっそぉ……! 本当に馬鹿で、イカれてて、それなのに……優しくて、真っ当に生きてる女だぜ……! 俺みてえな『嘘で塗り固められた存在』にとって……テメェの存在は眩しすぎるんだよぉおお!!」



 バギュゥウン!



「ぐうぅ!?」


 ――そんなこみ上げる言葉を吐き出す中で、フェイキッド様は右手に持った"ホーク"から再度銃弾を放ち、私の右足を撃ち貫く。

 撃たれはしたが、それでもやはりこのお方の心は乱れている。


「あ……ああぁ……!?」


 現に私を撃ってしまったことに対しても、明らかに動揺しておられる。

 そもそもこのお方が本気でこの場で私を殺すつもりなら、後ろから狙った時に撃ち殺せたはずだ。

 これまでの動きを見ても、それだけの技量は持っておられる。




 ――それでも、このお方に私を殺せそうには見えない。




「フェイキッド様……。私を殺すおつもりなら、しっかりと狙ってください……! それでも最後に、私からもう一度だけこの言葉を言わせてください……!」

「く、来るな……! お、俺に近づくな……!」


 怯えるフェイキッド様の姿を他所に、私は床に落ちていた箒天戟(ホウテンゲキ)で体を支えながら立ち上がる。

 そして、右手に持った箒天戟(ホウテンゲキ)を支えにしながら、左手をフェイキッド様に差し伸べて、どうしても伝えたい言葉を述べた――




「私はあなたの友人です。あなたが『マリアック・アリビュート』でなかろうと、『フェイキッド・スクリーム』であろうと、それだけは変わりません。私にとってはあなたが授けてくださった言葉と思いは、決して『嘘』ではありません」




 ――それは、私の心からの本心だった。




「本当に……本当に馬鹿な女だよ、お前は……。できることなら、もっと……もっと早くお前に会いたかったぜ……」


 そんな私の言葉と態度を見聞きして、フェイキッド様は右手に持った"ホーク"の銃口を下げられた。

 そして今度は左手に持った"ファルコン"の銃口を壁へと向けられる――



 ドゴォォオオン!!



 ――そこから放たれたのは、強力な風の魔法弾。

 "ホーク"とのリンク効果で威力を増したその一発は部屋の壁を容易く破壊し、外へ逃げるための脱出路を作った。




「……そこから逃げろ、クーリア・ジェニスター」

「一体……どういうつもりでしょうか?」

「いいから逃げろ。そしてここから逃げ出した後に、『ある人物』を追え。そうすればお前の言う"汚れ"に関する騒動にも、決着が着けられるはずだ。……お前ならできる」


 フェイキッド様は力が抜けたように顔を下げたまま、私に真実とも言える言葉を伝えてくださった。




「シケアル・スクリームだ。俺の双子の兄貴、シケアル・スクリームを追え。あいつこそが……"汚れ"騒動の『本当の元凶』だ」




 そして出された名前は、シケアル殿下のお名前。

 フェイキッド様の双子の兄であるそのお方の名前を、フェイキッド様は『"汚れ"騒動の元凶』として口に出された。




「……かしこまりました。あなたの言葉を私は信じます」

「本当に……お前はどこまで馬鹿正直なんだよ……」

「『どこまでも』……でしょうかね。さあ! ここは危険です! あなたも一緒に早く逃げましょう!」


 "汚れ"に関する重大な情報は得られたが、今何よりも優先すべきはここからの脱出だ。

 もともと私はマリアックを助けるために、この燃え盛る教会の中へと足を踏み入れたのだ。

 マリアックの正体がフェイキッド様であっても関係ない。

 私は左手を差し伸べて、一緒に脱出するよう促した――






「悪いな……クーリア。俺とはもう……ここでお別れだ」

嘘で塗り固められた、亡霊の選択――

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