無事に完売しました。
大盛況のうちに終わった、ガリクー販売計画。
「皆さん! 本当にありがとうございました! おかげさまでガリクーも完売しました!」
クッコルセ団長の『くっ! 殺せ!』騒動が落ち着いた後も、ガリクーの販売は順調に続いた。
そしてお昼頃には全てのガリクーを売ることに成功した。
実家がガリクーの栽培元であるファブリ様も大喜びである。
「それにしても、本当に一瞬で完売してしまったのですわ。クーリアの提案のおかげで、リピーターもつきましたわね」
「それどころか~、ジーキライ陛下が率先して~、栽培促進計画を進めてくださるので~、大成功ですね~」
ココラルお嬢様とマリアックも完売したことで一息つきながら、今回の感想を述べておられる。
陛下がガリクーに興味を持ってくださったことは、本当に大成功だろう。
今後の展開も含めて、ファブリ様のご実家とガリクーの未来は明るい。
「くっ……殺せ……。殺してくれ……」
「そしてあなたはまだ落ち込んでいるのですね。クッコルセ団長……」
そんなお店の奥の方では、クッコルセ団長が暗い表情でしゃがんで落ち込んでいる。
なんとか自害はやめてくださったが、いまだにずっとこんな調子だ。
彼女の<騎士>としての誇りは私も素晴らしいと思うが、限度を考えてほしい。
――もっともこの件に関しては、あっさりと正体をばらしてしまったジーキライ陛下にも責任があるような気がする。
「ジーキライ陛下もクッコルセ団長に自害されては、気分を害するだけです。そのためにも陛下はフクシマンの正体について、クッコルセ団長に黙っていたのございます」
「くっ……そ、そうか……。なら、アタイもこれ以上落ち込むのはやめようか」
私は事前に陛下としていた話の内容も交えながら、なんとかクッコルセ団長を励ます。
そのかいもあって、ようやくクッコルセ団長も元気を取り戻してくれたようだ。
顔を上げて立ち上がり、周囲の様子を確認される。
「それにしても、この店だけもう閉店してしまったな。本当にすごい人気だったな」
「このお店には、『聖ノミトール学園非公式人気投票』の上位四名が揃っているのですわ。それだけ考えても、この人気は納得の結果でしてよ」
クッコルセ団長の言葉に対して、ココラルお嬢様はその見解を述べられる。
確かにこのお店に集まっている店員は、全員が人気投票の上位ランカーだ。
四位のマリアック、三位のファブリ様、二位のココラルお嬢様、一応一位の私。
これだけ見ても、このお店だけ人気が凄いことになるのは当然だ。
「それにくらべて、あのお方の店はまさに閑古鳥が鳴いてるな……」
「あのお方……?」
クッコルセ団長が視線を移しながらそんなことを述べられたので、私も気になって同じところを見てみると――
「なぜだ……。なぜ僕の店には、一切客が来ない……? 僕はこのウォッシュール王国の皇太子だぞ……?」
――シケアル殿下のお店があった。
お客さんは誰もおらず、シケアル殿下が一人だけ店の前に立たれている。
売られている商品は殿下ご自身の絵画といったファン向けのようだが、道行く人には見向きもされていない。
商品の内容以上に値段設定が高すぎるのも、まったく売れない理由と思われる。
「クッコルセ団長。仮にも一国の皇太子があのような醜態を晒していて、構わないのでしょうか?」
「くっ、構わん。ジーキライ陛下とも相談したのだが、最近のシケアル殿下の素行はよろしくない。灸を据えるという意味でも、しばらくこちらから手を差し伸べないようにしている」
どうやらシケアル殿下は父であるジーキライ陛下にも、少し見放されてしまったようだ。
「元々、シケアル殿下は人気が落ち込み気味だったのですわ。そこに『聖ノミトール学園非公式人気投票』でクーリアを咎めるような発言をして、さらに落ちてしまったのですわ」
「あの後の人気投票でも~、三十三位まで落ちましたからね~。かわいそうかもしれませんが~、自業自得ですね~……」
ココラルお嬢様もマリアックも、そんな寂しげなシケアル殿下に対して各々の感想を述べられている。
その内容はシケアル殿下のことを、あまりよく思われていないようであった。
「私としてはシケアル殿下にはもう一度立ち上がり、しっかりと現状を見据えてほしいですね」
「クーリアさんは優しいですね……。シケアル殿下にあんな目に会わされたのに……」
私も私なりの見解を述べるが、ファブリ様からは感心されてしまった。
確かに私はこれまで度々、シケアル殿下によって咎められてきた。
だが人とは失敗の先に学び、そして成長するもの。
これは<清掃用務員>としての心得であるが、人としての心得にもなる。
私が偉そうに言えた立場ではないが、シケアル殿下もこの失敗を乗り越えてほしいものだ。
「さてと……。お店の片付けも、これなら余裕を持ってできそうですね。ボク一人でも大丈夫ですよ」
「そうですか~。では私もそろそろ~、教会に戻りたいので~、お任せしてもいいですか~?」
「大丈夫ですよ。ココラル様もクーリアさんも、よろしければ今のうちに他の場所を回ってきてはどうでしょうか?」
シケアル殿下のことはさておき、お店の片づけを始めようとしたのだが、ファブリ様が提案をなされた。
マリアックも教会に戻るそうだし、ファブリ様お一人でも片付けはできるそうだが――
「本当によろしいのですか? ファブリ様が見て回る時間が――」
「大丈夫ですよ。ボクも時間を見て、他のところを見てきます」
「ここはお言葉に甘えるのですわ、クーリア。わたくしも他の出し物を見に行きたいのですわよ」
私はファブリ様のことが心配になったが、ココラルお嬢様もファブリ様の提案に乗って来られた。
私個人としても、敬愛するココラルお嬢様と一緒に学園祭の出し物を見て回れると思うと、心が躍る。
「それではファブリ様、申し訳ございませんが、私もお嬢様と一緒に少し学園祭を見て回ってきます」
「どうぞごゆっくりと! クーリアさんのおかげでガリクーも完売しましたし、これぐらいどうってことないですよ!」
「それでは~、途中までは私と一緒に~、行きましょうか~」
そうして私はココラルお嬢様と学園祭を見て回ることになった。
途中まではマリアックも一緒について来てくれている。
前世でも何度か学園祭はしていたが、現世での学園祭というのは初めてだ。
「ココラルお嬢様。この学園祭ではどういった出し物がオススメなのでしょうか?」
「わたくしも今回が初めての学園祭なのですわ。色々あるみたいですけど、どれがオススメなのかは分からないのですわ……」
お嬢様にオススメを聞いてみたが、よく考えたらお嬢様は入学一年目であった。
これではせっかくのお嬢様との学園祭で、最適な楽しみ方が見い出せない。
一体どうすれば――
「それでしたら~、演劇を見に行っては~、どうでしょうか~? 丁度開演時間も~、近いですよ~」
――私が考えこんでいると、マリアックが提案をしてくれた。
成程。開演時間が迫っているのなら、演劇を見るのも悪くない。
「わたくしも演劇が見たいですわ! それでは早速、劇場に向かいますの!」
「私は教会に戻りますので~、一緒に行けませんが~、楽しんできてくださいね~。あ~、それと~、これは演劇のパンフレットです~」
ココラルお嬢様も乗り気なようだ。
そんなお嬢様の姿を見てなのか、マリアックが演劇のパンフレットを手渡してくれた。
私は早速お嬢様と一緒に、これから始まる演劇の内容に目を通してみるが――
「演目名は……『誓いの大樹とフェイキッドの亡霊』……?」




