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状況を整理してみます。

 私が意識を取り戻した後、ココラルお嬢様は自室に戻ってお休みになられた。

 今日は学園もお休みなられて、お屋敷でゆっくりされるそうだ。

 昨晩のあの騒動の後だ。仕方ない。

 お嬢様にもどうか、ご自愛なさって欲しい。




「……それでですが、マリアックはいつまで私の傍で手を握っているのですか?」

「んう~……。クーリアが元気になるまで~……。ふあ~……」

「私を気遣ってくれるのはありがたいですが、あなたもどうか休んでください」


 ただ、あの後も目が覚めたマリアックは再び私の手を握りながら、回復魔法をかけ続けてくれている。

 おかげで大分調子は良くなってきたが、肝心のマリアックの方が心配になって来た。

 欠伸をしながら眠そうにしている。

 私に『無茶をするな』と言っていたのに、マリアック本人が無茶をしているとはこれ如何に。


 ただ、こうやって私自身が気遣われてもらって改めて分かる。

 私も周囲の方々に同じような思いをさせていたのだろう。

 やはり、自分を大切にすることは大事だ。

 これはまたメモにとっておき、今後の教訓としておこう。

 <清掃用務員>たる者、常に成長を目指すことが重要だ。


 ――そしてきっと、『クーリア・ジェニスターという一人の人間として』も成長できるはずだ。




「クーリア、シスター・マリアック。すまないが、少し話をさせてもらっていいか?」

「旦那様……?」

「え~!? あ~!? す、すみません~!」


 そうして休んでいると、私の部屋に旦那様が入って来られた。

 そんな旦那様の姿を見るや否や、マリアックも慌てて私から手を離す。

 何故このタイミングでやめたのかは分からないが、私も彼女にこれ以上無茶をさせたくなかったところだ。

 いずれにせよ、私も安心できた。


「昨晩は大変だったが、今後のためにもわしも詳細を聞いておきたい。まだ全快しきっていないところで悪いが、二人とも何があったか話してくれないか?」


 旦那様の要件は、昨晩マリアックが"汚れ"に襲われた騒動についてだった。

 私は失礼ながらも横になりながら、あの夜の出来事をご報告した。


 私の枕元に現れた、"フェイキッドの亡霊"。

 その正体が、亡くなられたはずの本物のフェイキッド・スクリーム様かもしれないこと。

 私の行動を食い止めようとする言動。

 ポーションに麻薬を仕込んだのも、"フェイキッドの亡霊"であること。

 そして私への脅しとして、マリアックを"汚れ"で浸食したこと。


 それらを全て、旦那様に洗いざらい説明した。


「なんと……そのようなことが。以前に王城の蔵書室でも話は聞いたが、本当にこの"汚れ"騒動にはあの"フェイキッドの亡霊"が関わっているのか……」


 旦那様は顎に手を当てながら考えこんでおられる。

 何より気にしておられるのは、"フェイキッドの亡霊"の存在のようだ。


「旦那様。"フェイキッドの亡霊"ことフェイキッド・スクリーム様は、本当に幼い頃に亡くなられているのですか?」

「ああ、それについては本当だ。……だったのだが、クーリアの話を聞く限り、もしかすると本当に生きておられるのかもしれないな。だが、それならば何故自らを死んだことにしたのだ……?」


 私も旦那様も、疑問は膨れ上がるばかりだ。


 "フェイキッドの亡霊"の正体。

 亡くなられたはずのシケアル殿下の双子の弟、フェイキッド様の生死。


 この"汚れ"騒動に深く関わっていることは事実だが、その実態は本当に亡霊のように掴めない。




「そういえば、シスター・マリアック。あなたはどうしてこの屋敷にいたのか、覚えておられますかな?」

「そ、それなのですが~……。私も全然~、覚えてないのです~……」


 旦那様は少しでも情報を得ようと、マリアックにも昨晩の出来事を尋ねられた。

 だが、当のマリアック本人は何も覚えていないようだ。

 気が付けばこのファインズ公爵邸にいて、気が付けば包丁で私に襲い掛かっていたとのこと。

 今回の騒動について、マリアックは完全な被害者だ。




 ただ、私の中で一つ不安になることがある――




「……マリアック。私はこのまま"汚れ"を追い、お掃除を続けてもいいのでしょうか?」

「ど、どうしたのですか~? なんだか~、クーリアらしくない~、発言ですよ~……?」

「いえ……。もし私がこのままお掃除を続ければ、またあなたが襲われるかもしれません。私はあなたの友人として、これ以上被害に遭ってほしくありません」


 ――そう。マリアックの身の安全に関してだ。

 "フェイキッドの亡霊"が今回マリアックを"汚れ"のターゲットとしたのは、この私に対する脅しのためだ。

 今回は事なきを得たが、もしかすると"フェイキッドの亡霊"はまた、マリアックを狙ってくるかもしれない。

 ひょっとすると今度は"汚れ"で蝕むだけでなく、マリアック自身の命を狙ってくるかもしれない。

 もしそれでマリアックが本当に命を落としてしまったら、私は耐えることなどできない。


「"汚れ"をお掃除することは、皆様の生活を守ることになります。ですが、このままマリアックに被害が及ぶのなら、やはり私は"フェイキッドの亡霊"に従って、お掃除をやめた方がいいような気もします……」

「ク、クーリア~……」


 そんな不安な胸の内を、私は正直にマリアックに話した。

 マリアックも不安な表情で私を見つめてくる。


 やはり、こんな風に彼女を不安にさせるならば――




「大丈夫ですよ~。私も私で~、自分の身は守りますから~」




 ――そうやって私が悩んでいると、マリアックが私の手を取りながら優しく語り掛けてきた。

 そしてその表情はいつもと同じ、ほがらかで安心する笑顔――


「クーリアのお掃除がないと~、他の人を守ることもできません~。そのためにも~、私はクーリアにお掃除を~、続けてほしいです~」

「それでも、もしまたマリアックに被害が――」

「ですから~! それは私自身が~、なんとかしますよ~! 私だって~、<シスター>としては優秀ですので~!」


 私の拭いきれない不安に対しても、マリアックはない胸に片手を当てながら自慢げに語ってくれる。

 いつものほがらかな笑顔だが、私を心配させまいと気丈に振舞っているのが声から伝わってくる。

 私は彼女を不安にさせたくないのに、これでは逆効果だ。


 私は一体どうすれば――




「クーリア。シスター・マリアックのことが心配なのも分かる。だがその件については、わしの方でも手を打ってある」


 ――私がそんな不安と困惑に陥っていると、傍で話を聞かれていた旦那様が明るく、そして力強く声をかけてくださった。


「今回の一件はすでに、国王であるジーキライのハゲにも報告してある。クッコルセ団長を始めとした王国の戦力を始め、シスター・マリアックが在住している聖ノミトール学園にも、警備の目はすでに張られている」

「ジーキライ陛下がそこまでしてくださって……?」

「それだけじゃない。クーリアの周辺警備として、スミスピアのボケも協力してくれている」

「スミスピア様まで――わわっ!?」


 そう言って旦那様は横になった私の体を抱えながら、窓の外が見えるように移動してくださった。

 私は驚きながらも、旦那様にお姫様抱っこされる形で窓の外を見てみた――




「なんでや!? なんでウチがクーリアちゃんに会ったらあかんのや!?」

「うるせぇなぁ。アトカルのバカの頼みで、オレが護衛をしてんだよぉ。つぅか、お前さんはさっさと例の麻薬の出どころを探れぇ」

「そっちもやっとるわ! せやけど、ウチはクーリアちゃん成分を補充したいんや! 邪魔すんなら、無理にでも押し通ったるわ!」

「上等だぁ。オレぁ、相手がカミさん以上じゃない限り、負ける気なんて更々ねぇんだよぉ……!」


 ――そこに映ったのは、お屋敷の入り口で睨み合うタワキスさんとスミスピア様だった。

 タワキスさんは拳銃"ヤタガラス"を構え、スミスピア様は槍を構えている。

 スミスピア様は奥さんにやられた傷がまだ治っていないはずだったが、もう戦えるまでに回復されている。

 ――それはそれで驚きだ。


「一応、スミスピアにはこの屋敷とクーリアの護衛を任せてたんだが、あの『ホトトギス』のボスが最初の仕事相手になるとはな……」

「クーリア~。皆さんも"汚れ"を放っておけないので~、クーリアのことを頼りにしてるのですよ~。だから私も~、クーリアには頑張ってほしいのですよ~」

「旦那様……。マリアック……」


 ――どうやら、私はまだまだ周囲の親愛なる方々を信じ切れていなかったようだ。

 <清掃用務員>としての力は私にしかないが、私は一人ではない。

 私のことを支えてくれる家族や友人が今はいる。


 そんなお方達を信じれずに、何が<清掃用務員>か。

 報連相の精神に基づく、適材適所と協力。

 それらを行い、信じられてこその<清掃用務員>というものだ。


「……改めて、私の方からお願いします。私も<清掃用務員>として、清掃魂(セイソウル)の限りを尽くし、必ずや"汚れ"の元凶をお掃除いたします。そのためにも、どうかご協力願います」

「ハハハッ。ようやくいつものクーリアらしくなってきたな。それでいい。お前は"汚れ"を掃除することだけ考えろ。それ以外のことは、わしらがいくらでも手を貸してやるさ」

「もちろん~、私も協力しますからね~」


 旦那様に抱きかかえられたまま、私はしっかり協力を願い出ることができた。

 マリアックも私の言葉に笑顔で答えてくれた。




 私のやることは決まっている。

 たとえ"フェイキッドの亡霊"によって困難に陥ろうと、私は敬愛する方々と共に、必ずやこの"汚れ"騒動を清掃業務完了ミッションコンクリーニングさせてみせる。






「な、なんやこの傷だらけな槍のオッサンは!? なんでこんなに強いんや!?」

「言っただろぉ……! オレぁ、相手がカミさん以上じゃない限り、負けねぇってよぉお!!」


 ――ところで、私はさっきから気になっていることがある。

 窓の外ではまだタワキスさんとスミスピア様が揉めているようだが、スミスピア様の優勢なようだ。

 『ホトトギス』のボスであるタワキスさんをも凌駕する、スミスピア様の実力――




 ――それをも凌駕するスミスピア様の奥さんとは、いったい何者なのだろうか?

現状の最強キャラ:スミスピアの奥さん。

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