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なぜか人気者です。

なっとる! やろがい!

「……ココラルお嬢様。この学園に、私と同姓同名の生徒がいらっしゃるのでしょうか?」

「いないのですわ! 先程ファブリさんも言いましたけど、この人気投票の一位はあなたなのですわ! クーリア!」


 ココラルお嬢様に確認を取ったが、この『聖ノミトール学園非公式人気投票』における第一位は間違いなく私のようだ。




 ――いや、流石におかしい。

 こんな意味の分からない結果を見れば、周囲の反応も――




「やはり、あのメイドさんだったか……!」

「今回のダークホースだったわね……!」

「俺、あのメイドさんに惚れてたんだよな……」

「お掃除をする姿が美しかった……!」




 ――なぜか上々だった。

 おかしい。いくらなんでもおかしすぎる。

 私がこの学園でやったことなど、ココラルお嬢様のお世話とお掃除ぐらいだ。


「そもそも学園に無関係な私が、なぜ投票対象になっているのでしょうか?」

「この投票はあくまで非公式ですので、それが学園外の人間であっても、投票可能なんですよ……」


 発表を終えた実行委員のファブリ様が、私に説明のためにやってこられた。

 そんな説明を受けながら掲示板に張り出された結果一覧を見てみると、確かにこの学園とは無関係な人物の名前がある。

 フクシマンの名前が三十位に入っている。


「ですがそうとしても、なぜ私が一位なのでしょうか?」

「この人気投票なのですが、『上位の人間が入れる票の効果が大きい』システムになっています」


 なおも疑問が残る私に、ファブリ様がさらに説明を付け加えてくださった。

 票数ではなく、ポイントでランキングが決まるということなのだろう。

 それはそれで構わないのだが、それなら上位の人間が私に票を入れたということになるが――




「わたくしとファブリさんは、クーリアに票を入れたのですわ……」

「まさかこんな結果になるなんて、ボクも思いませんでした……」


 ――原因判明。

 確かにランキングで二位のココラルお嬢様と、三位のファブリ様が私に票を入れれば、それだけで膨大にポイントが入ってしまう。


「それと、勇者科の担任の先生と学園長も、クーリアに票を入れましたわ……」

「非公式なイベントなのに、教員の方も参加されたのですか?」

「あの二人が『どうしてもクーリアさんに入れたい!』と言いましたし、この人気投票は毎年やってるお遊びイベントですからね……」


 まさか教員の方々まで私に票を入れるとは。

 担任の先生も学園長も、それぞれ十位と九位にランクインしている。

 これだけ上位の方々に入れられれば、ポイントで私の順位が上がってしまうのも仕方ないかもしれない。


「クーリアさんって、結構他の生徒からも人気者なんですよ? 以前の学園全体の"汚れ"騒動の話も広まって、いつの間にかファンが増えてたみたいなんですよ……」

「そこにさらに担任の先生と学園長の圧と、それに扇動された周囲の人達の熱がすさまじかったのですわ。おかげでわたくしも<令嬢有頂天(カリスマックス)>を使って、なんとか事態を収める羽目になりましたわ。……半ばヤケクソだったのですわ」


 どうやらココラルお嬢様がお疲れの原因は、私が人気投票で一位になってしまったことに関する騒動が原因のようだ。


 ――私の知らぬ間とはいえ、何と愚かな失態か。

 従者である私が主であるココラルお嬢様より人気投票で上位になったばかりか、私のせいでお嬢様に苦労を掛けさせてしまった。

 私は主に仕えるべき<メイド>としても、まだまだ未熟だ。


「……申し訳ございません。今から私のランキングを取り消すことはできませんか?」

「すみません。もう結果が出た後ですので……」


 ファブリ様に要望を出してみたが、どうにも私のランクインを取り消すことは難しそうだ。


「クーリア。気にすることないのですわ。確かに苦労はしましたけど、わたくしも従者であるあなたが一位になったことを、誇りに思っていましてよ」

「ココラルお嬢様……。そのお言葉はありがたいのですが、私もお嬢様に仕える<メイド>としては――」

「ちなみに、シスター・マリアックもクーリアに票を入れましたわよ? これ以上クーリアがごねると、シスター・マリアックの思いまで無駄にしてしまいますわよ? 彼女も上位に入っているのに、クーリアに入れたのですわよ?」

「え……?」


 お嬢様にそう言われて、私はランキングを再度確認してみる――




『四位:マリアック・アリビュート』




 ――よく見ると、マリアック自身も四位にランクインしている。

 それを見ると、私もココラルお嬢様やファブリ様のランキングの時のように嬉しくなってくる。

 そんなマリアックも私に票を入れてくれたと思うと、なんだか胸からこみあげてくる思いがある。


 ココラルお嬢様達のランクインを知った時の嬉しさとはまた違う。

 うまく言い表せないが、私なりに言うとするならば――




 『友人が支えてくれている』――といったところか。

 その事実がすごく嬉しい。




「……分かりました。私も大人しくこの結果に従います」

「それでいいのですわ。ハァ~……それにしても、クーリアは頑固ですわ。お友達のシスター・マリアックを見習って、クーリアももう少し柔軟になってほしいのですわ」


 なんだかココラルお嬢様にも、マリアックと同じようなことを言われてしまった。

 でも確かに、私の頭は柔軟性が足りないのかもしれない。


 これまで私は自らの"超一流"の<清掃用務員>としての役目ばかり考え、その心得に固執しすぎていた。

 その心得は今も大事だが、ココラルお嬢様にファブリ様、マリアックといった私が敬愛する方々の気持ちまで無碍にするのは、あまりに不作法というものだ。


 今の私は周囲の人々に恵まれている。

 そういった方々と過ごす日々は勉強になるが、同時に私が守るべき日常だ。

 それを考えると、私もまだまだ成長しないといけない。




 それは<清掃用務員>としてではなく、クーリア・ジェニスターという一人の人間としてだ。






「お、おい!? これはどういうことだ!?」


 そんな一通り落ち着いた掲示板の前に、一人の男性が声を荒げながらやって来た。

 その声に反応して、私を含む全員の視線がその男性に集まる――




「この結果はどういうことだ!? なぜ僕が一位じゃない!?」

「シケアル殿下……?」


 私達の前にやって来たのは、顔を歪めたシケアル殿下だった。

 どうやら、この人気投票の結果が気に入らないようだ。


「申し訳ございません、シケアル殿下。様々な要因により、このクーリア・ジェニスターが一位になってしまいました」

「なんだと!? お前のようなただの従者が、どうしてこのイベントで一位になる!?」

「落ち着いてください。そもそもこの人気投票は非公式なものです。大きく今後に左右するものではありません」


 私は頭を下げてシケアル殿下に誠心誠意謝罪する。

 私が知らない間に起こった事態とはいえ、私がシケアル殿下の機嫌を悪くしてしまったのは事実だ。

 どうにか事情も説明して、落ち着いてもらおうとするが――


「黙れ! そもそも僕は何位なんだ!? ええい! ランキングを見せろ!」


 ――まるで聞いてすらもらえない。

 さらに周囲の人々を押しのけて、掲示板に張り出されたランキングに目を向けるが――




『十三位:シケアル・スクリーム』




 ――思ったよりもシケアル殿下の順位は低い。


「な、なぜだ……!? ここは僕が一位になる流れのはずだろう……!?」


 その結果を見て、シケアル殿下は顔を青ざめながら落胆されている。

 確かにシケアル殿下の実力と容姿と身分があれば、本来は一位になっていてもおかしくない。

 それなのに十三位というのは、流石にショックなのだろう。


「こ、こんなはずがない……! こんなシナリオは想定してない……!」


 シケアル殿下はなおも状況が受け入れられないのか、よく分からないことをブツブツと呟いておられる。

 少々自惚れが過ぎるような気もするが、皇太子殿下故のプライドなのだろう。




「……そうだ。そもそも、ここでクーリア・ジェニスターがまだいること自体がおかしい――」


 ただ、そんなシケアル殿下から意味は分からないが、どこか私に恐怖を与えるような言葉が漏れてきた。

 これまで俯いて独り言を呟いていたシケアル殿下だったが、顔を上げると周囲の生徒達に向かって大声で宣言し始めた――




「諸君! ここにいるクーリア・ジェニスターは、元々は悪名高きアサシン組織、『ホトトギス』のメンバーだったんだ!」

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