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学園で前代未聞の結果が出ました。

 王城を後にした私は、言われた通り大急ぎで聖ノミトール学園へとやって来た。

 今回は<清掃用務員>としての"静"の清掃魂(セイソウル)を意識することで、<アサシン>の身体能力強化にもその効果を反映させた。

 まるで『いつの間にお掃除が終わっていた』といった気配の殺し方で、誰にもバレないように、しかして素早く学園に到着できた。

 これなら騒ぎになることもない。


 ――<アサシン>時代よりも隠密スキルが上がっている気がする。


「とりあえず確認してみましたが、"汚れ"は見当たりませんね」


 ひとまず安心できたのは、以前のように"汚れ"が発生した事態ではなかったことだ。

 各種スキルによるサーチを入念に行ったが、"汚れ"は今のところ見当たらない。


 ――ただ、一つだけ気になることがある。

 学園校舎の玄関辺りに、大勢の人だかりができているのも確認できる。

 反応を見る限り、ココラルお嬢様もいらっしゃるようだ。


「……お嬢様に会うのも、なんだか久しぶりな気がします。いずれにせよ、気になることは多いですね」


 人だかりも気になるが、ココラルお嬢様の様子も気になる。

 私はココラルお嬢様の従者。

 忠実なる<メイド>にして、誇り高き<清掃用務員>だ。

 兎にも角にも、私は校舎の玄関へと行ってみることにした。





「お久しぶりです、ココラルお嬢様。しばらくお傍におられず、申し訳ございませんでした」

「来ましたのね、クーリア……。やはりこの件は、当事者であるあなたも知っておくべきだと思い、急だけど呼ばせてもらったのですわ……」


 私がココラルお嬢様の元へ行くと、どこかげんなりとした表情で言葉を返された。

 お嬢様がこのように元気がないのは、余程の事態が起こったからに違いない。


「ココラルお嬢様。お元気がないようですので、まずは私がティータイムの用意を――」

「今それはよいのですわ……。とりあえず、クーリアもあれを見てほしいのですわ……」


 私がココラルお嬢様のためにティーセットを<収納下衣(タンスカート)>から取り出そうとしたが、止められてある一点を指さされた。

 私も指さされた方向に目を向けると、そこには掲示板の前に立たれるファブリ様の姿があった。




「す、すいません! 今から『聖ノミトール学園非公式人気投票』の結果について、実行委員であるこのボク、ファブリ・フレグラから再度発表をします!」


 そしてファブリ様の口から出た、なんとも気になる話の内容。

 『聖ノミトール学園非公式人気投票』とのことだが、一体何の話だろうか?


「『聖ノミトール学園非公式人気投票』というのはこの学園の生徒達が行う、文字通り非公式の人気投票ですわ。とにかく幅広い人達を対象にして、人気投票をしていましたのよ……」

「左様でございますか。それで非公式ながらも、ファブリ様が実行委員をされているということですね」


 首をかしげる私を見て、ココラルお嬢様が疲れた表情をしながらも教えてくださった。


 こういうものは前世の世界でも見たことがある。

 私は全く興味がなかったが、『推し』というものなのだろう。

 おそらくココラルお嬢様が私を呼び、ここまで疲れられているのはこの件が原因だ。

 もしや、投票結果に何か問題が――


「え、えっと。改めて上位三名を発表します! まずは三位ですが――」


 そんな私の疑問とは関係なく、ファブリ様の人気投票結果の発表が始まった。

 掲示板にも大きく、三位のお方の名前が張り出されるが――




『三位:ファブリ・フレグラ』




「すみません! ボクです! すみません!」


 ――実行委員であるファブリ様本人であった。

 ファブリ様は何度も掲示板の前で頭を下げている。

 確かに実行委員であるファブリ様が三位にランクインしていると、場がしらけかねない。


 それでも周囲の反応は――


「気にしないで! ファブリさん!」

「そうだぞ! 俺達はファブリちゃんがいい子だって知ってるから!」

「ありがとうございます! すみません! ありがとうございます!」


 ――上々であった。

 ファブリ様は周囲の生徒達から応援を受け、感謝の言葉を述べながら頭を下げておられる。


 私としてもこの結果は納得だ。

 ファブリ様は平民の出でありながら、とても頑張り屋で成績優秀だ。

 そんな彼女に対して、応援したくなる気持ちが出るのは当然というものだ。




「えっと……で、では、次の発表に移ります。第二位なのですが――」


 周囲の声援に支えられながら、ファブリ様は次の発表へと移る。

 掲示板にも大きく、二位のお方の名前が張り出されるが――




『二位:ココラル・ファインズ』




「ファインズ公爵家のご令嬢、ココラル様です!」


 ――ココラルお嬢様だった。

 これは非常に嬉しい。私も心の中でガッツポーズをとる。

 この広い聖ノミトール学園において、私の主が人気投票で二位にランクインすることは、実に誇りである。


「ココラル様は親しみやすさが増したよな!」

「カリスマ性も最高よね!」


 周囲の反応も素晴らしい。実によく理解しておられる。

 やはりココラルお嬢様は周囲も認める、最高のご令嬢だ。


「おめでとうございます。ココラルお嬢様」

「え、ええ……。感謝いたしますわ、クーリア……」


 私もお嬢様に賛辞の言葉を送るが、どこか反応はよろしくない。

 人気投票で二位という結果を聞いても、どこかげんなりしたままだ。

 もしかすると――


「ココラルお嬢様。もしや、一位の人物に何か問題があるのですか?」

「ええ……。そういうことになりますわね……」


 ――やはりそういうことか。

 そうと決まれば、私は一位の人物に問い詰める必要がある。

 私が敬愛するココラルお嬢様を苦しめる存在ならば、<清掃用務員>としてクールながらもクリーンな答弁をしよう。


「そ、それでは……第一位の発表です……」


 そして私も気になっていた一位の人物の名前が、掲示板へと張り出される――




『一位:クーリア・ジェニスター』




「……ココラル様の従者の……クーリアさんです……」


 ――それは私の名前だった。

いや、そうはならんやろ。

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