会いたくない人に会わなければいけません。
アサシン時代の知り合い登場。
「ボ、ボス……!?」
「あかんやんか~! クーリアちゃんはウチの大事な妹やで~? クーリアちゃんに酷いことした以上、後で説教な~」
「私はあなたの妹ではありません。いずれにせよ、お久しぶりです。タワキスさん」
私が最初に出会った『ホトトギス』の男も、怯えながら後ずさりする。
そしてやはり最初に聞いた通り、今はこの女性がアサシン組織『ホトトギス』のボスのようだ。
――タワキス・ユリアンヌ。
私が<アサシン>として十五歳のころまでを過ごした、『ホトトギス』での先輩<アサシン>だ。
勝手に私の姉を自称している。
地方の言葉を交えながら話すのが特徴。
歳は私の一つ上で、身長もほとんど同じ。
ただ、胸だけは私よりはるかに大きい。
クッコルセ団長にしてもそうだが、そんなに大きな胸で肩がこらないのだろうか?
正直、邪魔そうにしか見えない。
「なぁなぁ、クーリアちゃん。もしかして、ウチに会いに来てくれたんか?」
「そうですね。結果的にはそうなります。元々用があったのはボスだったのですが、まさかタワキスさんがボスになっているとは思いませんでした」
「キャキャキャ! そこらへんの話も含めて、ウチと久しぶりに二人で語り合おうやないか! お前ら! クーリアちゃんは特別に『ホトトギス』への出入りを許可するんや!」
「へ、へい! 分かりました!」
タワキスさんの命令を聞き、部下の四人の男達は私を迎え入れるようにお辞儀をしてくれた。
そして私はタワキスさんに案内され、『ホトトギス』のアジトである店の中へと入っていく。
「それにしてもやな~、クーリアちゃん。な~んや、雰囲気が変わったみたいやな~」
「会うのは十年ぶりです。それだけの時が過ぎれば、印象も変わります」
「そうか~? な~んや、それ以外の理由もありそうなんやけどな~?」
店の中に入って案内される最中、私はタワキスさんに執拗な質問攻めにあった。
前世の記憶を取り戻し、<清掃用務員>として覚醒したことを説明しても良いのだが、この人にだけは素直に話す気になれない。
私はこの人が苦手なのだ。
サワサワ モミモミ
――先程からも『案内のため』という理由をつけて、私のお尻を揉んでくる。
さらには反対の手で胸まで揉んでくる。
挙句の果てには私の髪に顔を近づけて、匂いを嗅いでくる。
「スーハー! スーハー! あ~~~! やっぱ、クーリアちゃんは最高や~! ここ十年間不足しとった、クーリアちゃん成分が満たされていく~~!」
「……離れてください。お願いします」
『クーリ・アチャン・成分』というものは、様々な薬剤の知識に卓越した<清掃用務員>である私でも知らない。
おそらくはこの世界特有の成分なのだろうが、そんなことはどうでもいい。
タワキスさんはとにかくスキンシップが激しすぎる。
ハッキリ言って、気持ち悪い。
十年前より激しくなった気もする。
<清掃用務員>の心得として、『他者を無碍にしない』というものがあるが、そんな心得を捨てたいぐらい気持ち悪い。
私の清掃魂まで濁ってしまいそうだ。
――泣きたい。
「いや~! 十年前は可愛らしい少女やったクーリアちゃんも、今や立派な女やな~! 尻も胸も、ほんでもって香りも、めっさ色っぽくなっとるわ~!」
「い、いい加減にしてください……。それよりも、タワキスさんの事情の方こそ教えてください」
涙目になりそうなのを堪えながら、私はタワキスさんの方の事情を尋ねる。
そもそもこの人、なぜ『ホトトギス』のボスになったのだろうか?
確かに<アサシン>として優秀な人ではあった。
だが私にとってのこの人は、ボスになる器のような人ではない。
――正直、撫でまわされた記憶しかない。
「あ~、ウチの事情か? まあ、とりあえず今はこないして、『ホトトギス』のボスをやっとる」
「あなたのような人が、よくボスになれましたね……。そもそも、何故ボスになったのですか?」
「ん~? そんことか? 実はな――」
とにかく気になるのは、タワキスさんが『ホトトギス』のボスをしている理由だ。
タワキスさんは私のお尻と胸を揉みながら、その理由を述べられた――
「クーリアちゃんが『ホトトギス』を追いされた後、そんことにムカついて当時のボスを力ずくで追い出して、代わりにウチがボスになった」
「え……ええぇ……」
――その理由は単純と言うか、どこか狂気さえ感じるものであった。
私がいた当時のボスだって、相当手練れの<アサシン>だった。
むしろ<アサシン>として"超一流"であったあの人以上の実力者を、当時の私は知らない。
私も少し後ろに回り込んだだけで、拳銃の銃口を何度額に向けられたことか。
――そんな人をタワキスさんは『力ずく』で追い出してしまったのだ。
しかも話を聞く限り、ほとんど私が『ホトトギス』を抜けた直後の出来事だ。
それから十年間、ずっとタワキスさんが『ホトトギス』のボスだったのか――
「いや~。ウチもボスになったらすぐにクーリアちゃんを連れ戻すつもりやったんやが、なんや公爵家の<メイド>になったとかで、ウチも手を出せんかったんや~」
「そうですか。……ちなみに、私を『ホトトギス』に連れ戻せていたら、どうするつもりだったのですか?」
「まずはウチの伴侶にする。ほんでもって、ウチのために毎食作らせる。クーリアちゃんの尻と胸もいつでも揉めるようにする。ウチ以外の人間との接触を許さへんよう、地下室に閉じ込める。もちろん生活の保障はするが、たまに目隠しプレ――」
「も、もういいです……! それ以上語るのは……やめてください……!」
あまりの気持ち悪さに、嘔吐感がこみ上げてくる。
これ以上話を聞いていると、嫌な涙を堪えることもできない。
――私は改めて感謝する。
ファインズ公爵家に拾ってもらえて、本当に幸せだった。
もし拾ってもらえなかったら、私はタワキスさんの毒牙にかかっていた。
旦那様、ココラルお嬢様。本当にありがとうございました――
「なんやったら、今からでも『ホトトギス』に――」
「絶対に嫌です。それよりも、私の要件を聞いていただけないでしょうか?」
「そんな即答で断らんでもええやん……。まあ、とりあえずウチの部屋で話を聞こか」
私はなんとかタワキスさんの話を遮り、アジトの一室に案内される。
相変わらずお尻と胸をいやらしく擦られながら、私はタワキスさんと一緒のソファーに腰かけさせられる。
そして私の横に座って、引き続き体中を揉みまくってくるタワキスさん。
こういう時は向かい合って座るものではないだろうか?
――やっぱり泣きたい。
助けて、ココラルお嬢様。
「タ、タワキス……さん……! い、一度手を止めて下さい……! ハァ、ハァ……! そして……ま、まずは私の話を……!」
「え~? まだクーリアちゃん成分が足りひんのやけど……しゃーないな~」
なんとかタワキスさんの魔の手から逃れ、私は呼吸を整えながら乱れたメイド服を直す。
そして私がここに来た理由――来たくもない『ホトトギス』まで来て、会いたくもないタワキスさんにまで会いに来た理由を述べた――
「私が『ホトトギス』時代に使っていた魔法銃"ファルコン"。あれは今どちらにありますか?」
なお、色々腐っている。




