↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
25/168

清掃対象:王城周辺用水路近郊

※作中のお掃除は真似しないでください。

「必要なのは、この風を操る魔法石に、次亜塩素酸水に――」


 私は取り出した道具を使って、テキパキと清掃道具を組み立てていく。

 二本のハタキを用意し、その先端に風の魔法石を埋め込む。

 用意した風の魔法石は二つのタイプがある。

 『風を吸収するタイプ』と『風を放出するタイプ』。

 この二つの間にさらに『水を溜め込むタイプ』の魔法石を挟み込み、その水の魔法石へ次亜塩素酸水を含ませる。

 <用務眼(ヨウムアイ)>で確認できた"汚れ"の成分を理解し、濃度もしっかり調整してある。

 人体への悪影響もない。今回はこの点が重要だ。


「――よし。ひとまずこれで、道具の準備はできました」


 そうして出来上がった二本の専用ハタキ。

 本来ハタキは埃を落とすものだが、今回は違う用途で使わせてもらう。

 素早く動くための軽量性。ハタキの先端のパタパタ部分での"汚れ"キャッチ性能。

 この二つの性能が頼みの綱だ。


 私はハタキを両手に一本ずつ持って、腰を深く落とした。


「あ、あの~……クーリアさん~? 一体これから~、何を始められるのですか~」

「もちろん、お掃除です。ですが、今回は私もかなり激しく動きます。シスター・マリアックは危険ですので、どうか離れて見ていてください」


 オドオドしながら様子を見ていたシスター・マリアックを制し、私は早速清掃業務(ミッション)へととりかかる。

 相手が空気の"汚れ"となると、大切なのは『空気を巻き込むこと』だ。

 難しい話だが、今の私なら問題ない。

 <清掃用務員>としてだけでなく、<アサシン>のスキルも持つ私ならば――




「<清掃能力強化(クイックルハイパワー)>――<除菌疾走(オーバードライブ)>!!」



 ビュゥウウンッ!



「きゃあ~~!?」


 吹き抜ける風の音と共に、私は地面を蹴ってお掃除を開始した。

 シスター・マリアックがその時に生じた風でスカートを押さえているが、終わった後に謝っておこう。


 ――今優先すべきは、この周辺のお掃除だ。



 タンッ!



 <除菌疾走(オーバードライブ)>の力を使い、私は壁を蹴って建物の上へと上がる。

 そして高所から<用務眼(ヨウムアイ)>で"汚れ"の拡大範囲を確認し、その範囲内で一番高い場所へと飛び移る。


「……この辺りですね。では、このハタキの出番です」


 "汚れ"の範囲の確認。<アサシン>と<メイド>スキルによる人の往来の確認。

 これらが終わった私は二本の専用ハタキを手にしたまま、さらに上空へと飛び上がり――




「……<洗風大掃(サイクロンダイソン)>」



 ビュオオオオ!!



 ――そこから自らの体を、超高速で回転させる。

 それによって巻き起こるのは、まるで吸引力が変わらない掃除機のような強力な竜巻。

 その竜巻の中心に私は身を置き、専用ハタキを持った両手を広げながら回り続ける。


「……よし。想定通りの結果です」


 私はその身を回転させながら、周囲の状況も確認する。

 空気中の"汚れ"は、私が起こした竜巻に吸い寄せられている。

 そして吸い寄せられた"汚れ"をすくいとるように、私は両手のハタキを動かす。


 ハタキのパタパタ部分によって、"汚れ"を含んだ空気がハタキの内側へと入り込む。

 入り込んだ空気はまず『風を吸収する』魔法石によって、私が用意したルートをたどる。

 ルート通りに空気は『水を溜め込む』魔法石へと移り、内部の次亜塩素酸水で清浄される。

 "汚れ"がなくなって綺麗になった空気は『風を放出する』魔法石によって、再び外へと出る。

 この際に空気には適度な次亜塩素酸水が含まれるようになり、大気そのものの清浄効果が高められる。


 前世の世界であった、空気清浄機――

 この世界にはないが、それを代用する手立てはある。

 魔法の世界とは便利なものだ。

 それにここは屋外。空気清浄機以上の空気をお掃除しないといけない。

 それらを考慮した上で、今の私にできること。

 それは――




 ――『私自身が空気清浄機になる』ことだ。




「な、なあ……。あそこの空、女の人が見えないか……?」

「ほ、本当だ……。竜巻が起こってるけど、一体何が……?」

「あ、あれ? なんだか倦怠感がなくなっていくような……?」


 地面の方から人々の話声が聞こえる。

 その話の内容から、私が<洗風大掃(サイクロンダイソン)>で空気清浄機をしている効果があることが伺える。

 この際に重要なのは着地。

 私は竜巻を起こして"汚れ"を引き寄せながら、ゆっくりと地面へと降りていく。

 先に確認しておいた通り、私は人の往来が少ない場所へ着地するよう、少しずつ高度を下げていく。

 着地に合わせて回転も抑え、竜巻も小さくしていく。


 人々に危害を加えず、迷惑も起こさない。

 これまで失敗ばかりの私だが、<清掃用務員>としてこの心構えは外せない。



 ――スタン



 そして私は両手に持ったハタキの動きも止め、地面へと着地する。

 周囲を見渡してみるが、辺りへの影響はない。

 高度を下げるのと同時に、風力を押さえることもできた。


 ――完璧だ。


「ひとまずは第一段階、清掃業務完了《ミッションコンクリーニング》です」


 これで用水路周辺のお掃除は終わった。

 だが、これは第一段階に過ぎない。

 この大気汚染はおそらく、用水路が元凶となっているもの。

 今度は用水路のお掃除に向かわないと――




「ねーねー! おねえちゃんがこのあたりのくらーい空気を、きれいにしてくれたのー!?」


 ――そうして次の戦場(洗場)へ向かおうとする私に、幼い少年が声をかけてきた。


「はい。私がこの周辺の空気を、少々お掃除させていただきました」

「すごーい! おねえさんはきっと、<女神>さまだねー!」


 少年はあどけない表情で、私に思いの丈を述べてくる。

 <女神>だなんてとんでもない。

 私はただ、お掃除をしていただけに過ぎない。


「おねえさーん! <女神>さまなら、ぼくたちのごはんを用意したりできないー!?」

「ごはん……ですか?」

「うーん! このあたりの人はねー! ごはんが少ないんだー!」


 少年に言われて、私は<アサシン>スキルで周囲の人々の体調を視てみる。

 確かに少年が言う通り、栄養の取れていない人が多い。

 シスター・マリアックもこの場所に来て施しをしていたところを見るに、どうにもここは国の福祉が行き届いていないようだ。


「こ、こら! メイドさんが困ってるじゃないかい! す、すみません! うちの子がご迷惑を……」

「……いえ。お気になさらないでください」


 少年の母親と思われる人物が、私に謝罪しにやって来た。

 確かにこの状況は私でもどうにもできない。

 <清掃用務員>の役目はあくまでお掃除。

 人々の生活を現状より下げない努力はできても、上げることはできない。




 ――私は無力だ。

 仕方のないことと分かっていても、心のどこかで罪悪感を感じる。

 私とて<清掃用務員>として、人々の生活を守る使命を背負う者。

 それなのに、私にはこの少年のような人々の生活を、これ以上よくすることができない――






「ハハハー! 少年よ! ご飯に関する相談なら、ここはワッシの出番だー!」


 ――私が一人苦悩していると、後ろから明るくてエネルギッシュな声が聞こえてきた。

 私は振り返り、その声の主を確認した――




「ワッシは『フクシマン』! 人々の生活を底から盛り上げる、正義の福祉ヒーローだー!」

新キャラ(?)登場。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。