3.キリカの感想
次の日の朝。
私は普段通りお嬢様よりも早く起きて身成を整えたら朝ごはんの支度をする。
トーストと半熟の目玉焼き、レタスとトマトのサラダを盛りつけて完成です。
寝ぼけて胸を揉んできたお嬢様をビンタで起こして朝食のテーブルに座らせます。セクハラには暴力で返すのがメイドの流儀です。
毎朝殴られてるんですからいい加減学んでください。
「で、どうでしたの? 楽しかった?」
朝食の席でリリアスお嬢様にエデンオンライン初プレイの感想を聞かれた。
「えぇ、とても楽しめましたよ。 少し怖い思いもしましたけど」
「それは良かったわ。 あなたの恐がる顔も見たかった」
相変わらず趣味が悪いお人だ。
従者をいじめて喜ぶとこが嫌いなのよ。うんざりする。
「でもそこまで痛いことはされてなくてよかったわ」
でもちょっとだけ優しいから憎めない。
「エデンオンラインって痛覚あるんですか?」
「一応はあるわよ。 現実ほどじゃないけれどね」
痛みは心に支障を与えない程度に抑えられてはいるが、お嬢様曰く、それでも即死級の大ダメージを受ければタンスの角に小指をぶつけるのと同じくらい痛いんだとか。
地味に嫌な痛みですね。開発者はサディストですね。
「それでも骨折よりはマシですね」
「そうね、今夜は私の部屋に来なさい。 CO・OPプレイするわよ!」
お嬢様がとても目を輝かせていらっしゃります。
協力プレイがそんなに嬉しいのでしょうか。てか私、お嬢様とやるとは言ってないんですが。
まあお嬢様がやると言ったら、もう決定事項になってるんでしょうね。逆らえば減給です。
「特別手当でますか?」
「ゲームするだけで出るわけないでしょ」
はい、おっしゃる通りです。
「今夜は【最初の街】へきなさい。 私が教えてあげるわ」
街の名前とか知らんがな。
「エデンオンラインのどこですかそれ」
「あら、あなたまだ街にも着いてないの? 昨晩はなにやってたの?」
「なんか蛇倒してレベルアップしてました」
「いきなりレベリングしたのね……」
ヘビーゲーマーのお嬢様は蛇がお好きなんでしょうか。
蛇だけに。
蛇だけに(二回目)
「レベリングって言うほどレベルは上がってないんですが………」
「なら参考までに教えてあげるわ。 私のレベルは―――」
「あ、興味無いんでいいです」
時計を見るとそろそろ学校に行かないと遅刻する時間です。
この人の自慢話なんて聞いてたらお昼になっちゃいますよ。
まだ食べてるお嬢様を置いて、私は席を立った。
「待って! 私遅刻しちゃうのに! 待ちなさいよ!」
慌てるお嬢様を無視して私は鞄を肩に下げてお屋敷を出ていく。
遅刻するのはいつまでもゲームして朝寝坊するお嬢様が悪いんです。私は悪くないもん。