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13.学園の日常


突然ですが、私の通う学園は小中高校まで一貫の女子校です。

大学生になったら男子とも共学になりますが、高校までは女だけの世界で生きていくことになります。

一つの学校が小学校から、大学まで兼業しているので敷地面積はとんでもなく広く、また、女子生徒には上流階級やお金持ちの方々、社長令嬢や外国の留学生では貴族様までいますので〝お嬢様学校〟とまで言われてたりもします。


お嬢様と専属メイドの私はリムジンで、お姉さまと妹ちゃんは普通に他の執事さんが自動車で送迎してくれます。

この待遇の差はお嬢様の専属とそうでないメイドの差です。

この学園では専用のドライバーを雇って、リムジンでの送迎は特に珍しくもないです。


ですが良いことばかりではありません。

なぜなら、お嬢様の相手をするのは私だからです。


このじゃじゃ馬ワガママお嬢様と毎朝同じ空間で過ごすことがどれだけの苦労か!お姉さまには分からないでしょうね!


ずっーーとエデンオンラインやお嬢様のお兄さんの話を聞かされるこちらの身にもなってくださいよ。

それに朝のコーヒーのことで文句を言うのは辞めてください。

コーヒーなんだから熱いのなんて当たり前じゃないですか。

冷たいコーヒーなんて黒いだけの水。泥水です。お子様舌のお嬢様にはご理解頂けなくて残念ですね。


そうして適当にあしらったり聞き流したりして、戦車が三台並んでも通れそうなほど大きい校門を通り駐車スペースまで行くと、お嬢様よりも先に降りて鞄をお持ちします。

教室まで優雅にエスコートしようとすると、そこで私の頭痛の種が強襲して来ました。


「キリたんやっほー! 今日も柔らかいねー!」


「ひゃめてくらさいよ(やめてくださいよ)」


私に抱きつき、頬っぺたをむにむにと引っ張るお方。

忙しい毎日でもスキンケアを欠かさないもちもちした頬っぺたが軟らかくてさわり心地が良いらしいです。


お嬢様と私の鞄で両手が塞がっていることを良いことに、私の顔を蹂躙されています。

やめてください! メイクが! ナチュラルメイクが崩れちゃいます!


「こら! やめなさい、アンジェリカ。 キリカさんが嫌がってるでしょ」


「はーい、お嬢様!」


「ごめんなさいねキリカさん。 ところで、(わたくし)の専属メイドになる話は考えてくれたかしら?」


私の髪を指で解かしながら、頬っぺたに指先を這わせて私を勧誘するこの方の名前は【アナスタシア・ラスプーチン】。

ロシア人の留学生です。

彼女たちは主従そろって私の髪と頬がお気に入りらしいです。

髪の毛の滑らかさと甘い香り、頬っぺたのもちもち具合が堪らないそうで。ほっぺモチモチでも私は童顔じゃないです。絶対に違います。


アナスタシア様はお嬢様と同じ金色の髪ですが、派手目なお嬢様と違う淡い光を放つ美しい髪をお持ちです。髪色は彼女の方が好みです。

瞳の色もダークブルーという深く濃い青色で、とても落ち着きと知性を感じられます。

顔立ちもお人形さんのように整っておられますし、肌だってニキビ一つありません。


瞳の色に関してはリリアスお嬢様の情熱的な燃える炎の瞳もルビーのような鮮やかさがありますが、やはりこのキリカは青いものが好きです。


「ごめんなさい、アナスタシア様。 私はもうリリアス様という生涯の主を見つけておりますが故に、あなた様のお誘いには応じることができません」


深々と頭を下げて、丁寧に言葉を選んで御断りの意思を伝えます。この時、スカートの端を指先で摘まんで、下着が見えない程度に控えめ目に持ち上げておくのがメイドのマナーです。

……………これ最初に考えた人誰なんでしょうか?

ネクタイと同じで、優雅だけど無意味なものを感じられます。


「あらあら、残念。 ()()振られちゃったわ」


「待ってくださいよ~!」


残念そうに首を傾げると、踵を返してアナスタシア様は行かれてしまいました。

彼女にも〝様〟付けで呼称しているのは、アナスタシア様も御令嬢だからメイドは敬意を払わないといけないからなのです。


お姉さまには難しかったようで、粗相を連発するからリリアスお嬢様からのお目付け役は外された経緯があります。

本当に役に立たない愚姉(ぐし)です。


「私達も行かないとですよ」


私とお嬢様はこの学園では優等生の皮を被っていますが、このままだと遅刻してイメージ崩しちゃいます。

全力で、それでいてお淑やかに走らないと!








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