12.メイドの日常
ゲームの話ばかりでは退屈ですし、ここで読者の皆様には私たちの日常をご覧頂きましょう。
朝はお嬢様を手玉に取っている間、私の姉妹………使い物にならない駄メイドの烙印を押されている人災ダメメイドの愚姉と、ダメな子だけど可愛い妹ちゃんの紹介をしましょう。
「キリカは誰に話してるのかしら?」
「さあー!わかんない!」
お姉さまと妹ちゃんに頭がかわいそうな人を見る目で見られてしまいました。頭を叩き割ってその貧相な脳を私への供物にしてもよろしいのですね?
「かわいそうなキリカ………お嬢様のお世話係にされてしまったばかりに………」
両手で顔を覆って嗚咽を漏らすふりをするお姉さまと、よく分からないけどお姉さまの悪ふざけに乗っかって真似する妹ちゃんは可愛い。
それと、お姉さまは大学生にもなってその泣き真似はやめてくださいよ。殺したくなります。
まあ実際にお姉さまと本気で喧嘩したら、殺されるのは私なんですがね。
忌々しいことに、この脳筋メスゴリラは脳が育たなかった癖に腕力では鍛えた殿方を、速さと戦闘技術では私を凌ぎます。
私が手を出せないと分かっているお姉さまは、指の隙間からわざと、わ・ざ・と!私に見えるように口の端を吊り上げて笑い顔を作っています。
これはウザイ。正直に言ってよろしければ速やかに天の国までその笑顔のままで飛んでいって二度と帰って来ないで下さい。
唯でさえメイドの仕事では使い物にならない無能なあなたのせいで私のお仕事が増えているのに、なんでこうまでして私のマウントを取りたがるのでしょう。
ほっんとうに腹が立つ姉です。
「キリカで遊ぶのはやっぱり面白いわね~」
「ね~!」
私が拳を握って余りある怒りでぷるぷる震えていると、お姉さまと妹ちゃんの今度は作り物じゃない本物のスマイルがなおさら腹が立ちます。
かわいい妹ちゃんの笑顔は満点です。癒されます。
お姉さまはマイナス百億点の汚ない笑顔なので、今日のおやつのシュークリームに引くくらいワサビを混入してその顔面を崩壊させて差し上げましょう。
辛いものが大の苦手なお姉さまなら、きっと可愛い顔で苦しんでのたうつ………楽しませてくれます。
後でひとりでこっそり楽しむ用に写真撮影もすれば完璧です。
お姉さまたちが私の作ったフレンチトーストをもきゅもきゅと頬張っていると、お嬢様もキッチリ身支度を整えて来ました。
軽いメイクで目の下の隈を隠していらっしゃるので、どうやら昨晩も遅くまでゲームをしてたようですね。
これでは授業中に寝てしまいますね。
「あら、あなた達。 今日も私の、わ・た・く・し・の! キリカにちょっかいかしら?」
背後から抱きつかれて胸を揉まれました。
「うん、この柔らかさ、この大きさ、弾力、形。 百点満点の完璧なお胸ね」
この手つきはセクハラ親父のそれです。
今日もおはようの挨拶にセクハラですか?
女好きなのは知ってますが、立場上は逆らえない従者に対してセクハラとかふざけてるんですか?
身内だから良いとでも?
女同士なら許されると?
背中ごしに肘鉄を打ち込んで黙らせます。
鳩尾をしっかりえぐったので、しばらくは床で這いつくばってるでしょう。
「おはようございます、リリアス様。 今日もお美しい髪ですね」
お姉さまと妹ちゃんの興味がお嬢様に移りました。
私の姉妹とお嬢様がじゃれている間に眠気覚ましにエスプレッソコーヒーをストレートで用意しました。
「お嬢様、おはようのコーヒーです。 速く飲んでください」
「ちょっ、ちょっとキリカ、口に押し付けないで!」
お嬢様は自分じゃいつまで経っても飲まないじゃないですか。
早く飲んでくださいよ片付けができないじゃないですか。
「熱っっ、あつ、熱い! 火傷しちゃうから! 死ぬから! 私は猫舌なのよ~!」
ふふふ、私を困らせるお嬢様はもっと苦しめばいい。




