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約3000字漫才集

漫才【卒業】

作者: 名もなき山田

ボケ=A(エー/小太り)


ツッコミ=B(ビー/細身)

A/B「よろしくお願いしますー」

A「ということでね、卒業のシーズンですよ」

B「ねー、何をもって9月を卒業のシーズンとしたのかは分かりませんけど。大学生の免許合宿かな」


A「そこで今日は『卒業式あるある』を、ぜひビーくんとね、やりたいと」

B「卒業式あるあるね……、僕あまりピンと来ないんですけど、例えばどんな?」


A「卒業生、号泣。とかね。こんな感じで」

B「うん、もうちょっとちょうだい」


A「部活の後輩からの、花束。とか」

B「ごめんもう一個」


A「寄せ書きで空白を埋めた、アルバム」

B「ねえ何か違くない? それあるあると何か違くない!?」

A「ええ(困惑)」


B「それ何て言うか普通にあることだよね? なんつーかまんまじゃん、何『卒業生、号泣』って」

A「や、だから『あるある』じゃない。ビーくん泣いた? 卒業式」

B「枯渇した井戸」


A「花もらった? 後輩から」

B「アルバムだけのリュック」


A「寄せ書き書いた? みんなで」

B「今も新品同様――やめろっ!」

A「てことは普通にあることが、ビーくんにとっては普通じゃなかった、と?」

B「と? じゃねえよ。僕の寂しい卒業式はいいのよ。一般的に見て普通じゃん、て話」


A「よくねえよッ!」 B「急にスイッチ入んのやめて、もう何」

A「……俺が同じ学校だったら、お前に寂しい思いさせてねえのによッ!」

B「え、エーくん、……お前中高一緒じゃねえか」


A「じゃあ今度ビーくん言ってよ、あるある。さぞかし面白いんでしょうけど」

B「さらっとハードル上げるお前に殺意覚えてる場合じゃねえな、よしわかった」

B(考え中)

B「来るなといった母をつい探してしまう……(白けた空気)ほらぁ、こうなるじゃん」


A「えっていうか卒業式にお母さんに来るなってどうかと思いますけど(義憤)。だって今まで毎日お弁当とか洗濯とか色々してくれてさ大きくなった自分を見に来てってならまだしも来るなっていうのはなんていうか自分やっぱり違うと思います。(自己完結)」


B「……じゃあエーくんは、その、お母さんちゃんと来たんだ」

A「はい、っていうかお母さんと来ましたし。卒業式、お母さんと来ましたし。式当日隣にお母さんいましたし」

B「クソ程マザコンじゃねえか」


A「まぁそれは置いといてね、いいじゃない、ビーくん。これあれだね、5割ぐらいが『あるある』って思うくらいがちょうどいい感じなのかね」

B「分かんないけどね。っていうか親が隣に座ってる変なデブいるって噂あれお前かよ」


A「じゃ次いこ。5割の共感を得る絶妙なのちょうだい。んですごい面白いやつ」

B「あーこいつ殺そっかな」

B(考え中)

B「絶対に何もないのに異性から何かあるんじゃないかと期待する」


A(審議中……)

A「バレンタイン、と被るな」 B「ほうか……」


B「みんなトイレで身支度に余念がない、これは?」

A「それ、も、バレン、タイン」B「あぁ、そか……」

B「チョ――(様子見)」 A「バレンタインッ!」 B「もうお前やれよ……」


B「下級生が泣いててちょっと引く、これいいでしょ。え、なんで~みたいな」

A「おお~、いいじゃないの。ねえ、みなさん! これならいいですよねぇ!(懇願)」

B「馬鹿か。おい、お前馬鹿か。これで許してくださいじゃねえよ」


A「あーなんか、卒業式の話してたらやりたくなったよね? 分かってるって。『卒業生、起立』」

B「強引の体現かな」

A「『卒業生の言葉』代表、3年B組A男くん」

B「そこA組じゃだめなの」


A「先生!――(宣誓)」 B「はいストップー」

A「何すか先生ッ!」

B「誰が先生だよ。違うでしょ、それじゃスポーツ大会じゃん」


A「――我々生徒一同は、日夜勉学に励み――」

B「すごいよ、やめないんだもん」

A「雨の日も風の日も、共に笑い、励ましあった仲間たちと――」

B「あら、いいじゃない」


A「最後の一人になるまで、正々堂々と殺し合うことをここに誓います!」

B「それバトルロワイヤルだね」

A「おらぁ柱の陰からヘッドショット!」 B「どこが正々堂々だよ」


B「もういいよ、やめよやめ。卒業式やめ」

A「そうするとビーくんの写真ひとりだけ背景違くなるけど、大丈夫?」

B「それは卒業アルバムだろ嫌なこと思い出させんな」


A「何だよビーくん全然いい思い出ないな。部活とかもしてなかったんでしょ?」

B「やってないですね」

A「じゃ孤立部か」

B「帰宅部だね」


A「あれれ~おかしいぞ~」

B「あんまそういう、分かる人と分かんない人がいるやつやめようか」


A「え、じゃあ3年間帰宅部って何してたの? 聞くのもおこがましいほど大変有意義な時間を過ごしておられたと思うんだけど」

B「……別に、家でゲームとかしてたよ」

A(驚愕)


A「ま、まさかR、P、G?」 B「ジャンルはどうでも――まぁそうだよ」

A(目を見開く)

A「彼のように、現実世界で仲間を作らず、ゲームの世界で仲間を作る。これが今の日本の抜本的な問題というか島国特有の閉鎖的文化ならびに現実リアル虚構フィクションの区別がつかなくなっている若者によくある世界との乖離、ってヤツなんでしょうなア……実に嘆かわしいことです(専門家)」


B(静観)

A「……こういう時こそ我々大人が彼らを導く標識――道標となってですね、そうね、そのぉ……(Bをチラチラ見る)」

B「ごめんなさいして続きやろうか」 A「ごめんなさい」


A「ま、でも漫才やるようになってからビーくんがゲームしてるの見たことないですから」

B「そうね、それこそ卒業したかな。エーくん何かある? 今までに卒業したもの」

A「え、俺? 言わせる? ここで? えー、ちょっ……どうしよぉ(照)」


B「何をそんなに――(あっという表情)」

A「知りたい人、いる? こんな、(自分の体を触る)ねえ、太っちょの、ど――」

B「ごめんやめた方がいいね! 口が滑りました、ごめんなさいね本当!」


A「ドラゴン〇エストの話」

B「そっちかー」

A「僕はマ〇ニャで卒業しましたから」

B「性癖が透けて見える。っていうか人のこと全然言えねーじゃん。お前が嘆かわしいわ」


A「『卒業生、退場』」

B「また急だね。僕あれ苦手だったなー、在校生がこう立って見送るの。『せんぱ~い』とか言っちゃって。早く退場させろよって思ってました」

A「根暗いなー。ま、その点俺は違いましたよ、みんな俺が通るとシーン、ってなって。震えてるんですよ、感極まって」


B「ホントに? そんなヤツいたかなぁ……」

A「それ見て俺もすごいジーンと来ちゃって……隣のお母さんに――」

B「それお母さんと退場してくるヤバいデブ来たから!」

A「またまたぁ、それでお母さんにハンケチを――」


B「お前またまたぁ、なんて浅いノリで返せると思うなよ。みんな怖がってただけだそれ」

A「ハンケチ?」

B「お前をだよ、何ハンケチってハンカチでいいだろ」

A「あ、そう……。そうだったのか……」 B「真実はいつも一つだよ」


A「…………………」

B「…………………」

B「何で俺が滑ったみたいになってんだよ」


A「じゃあここはひとつ、ビーくんがマザコンを卒業するってことで綺麗に終わりましょうか?」

B「いやお前だよ」


A/B「どうもありがとうございました」

_(._.)_

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