天竜族の里
僕は慌てるように座布団に座る。
しかし、目の前の座布団にどうやって座るか?
正座か胡座をかいて良いのか?
この異世界のしきたりに疎い僕は、失礼のないように取り敢えず正座なら間違いないだろうと思い正座で座った。
だが、正座に慣れていない僕は直ぐに足が痺れてくる。
この正座で、あと何分持つだろうか?
そう思っていると、長が、
「フフフ、正座など慣れていないのであろう。
正座などしなくて良い。
楽な姿勢で話そうではないか?」
まるで僕を見透かすような感じがするがご厚意は有り難く受ける。
「分かりました」
とても有り難い。
正座なんてそんなに長く座っていられないだろう。
それにしても正座と言う言葉も知っているなんて、元の世界の知識が何故持っているのかが気になる。
僕は直ぐに胡座をかく姿勢をとった。
「ウム、おい」
長は誰かを呼んだ。
すると奥から綺麗な着物姿の女性が何かを運んで現れた。
手には、おぼんに徳利とお猪口が二つ載っていた。
「まあ、初めての挨拶代わりだ」
長がそう言うと、おぼんを持って来た女性は、目の前でお猪口に徳利の中の液体を注ぎ、お猪口の1つをまずは長に渡し、そしてもう1つを僕に渡した。
渡した瞬間、ぷ〜んと匂う独特の香り、お酒の匂いだった。
「同じ酒だから毒など入ってはないからな。
これは我が里で作った特別な酒だから、味わって飲むが良い」
僕は一口、口を付けた。
飲みやすい。
今までいろんな酒を飲まされてきたが、これほど飲みやすく美味しいと感じた物は無かっただろう。





