天竜族の里
目を開けると目の前には透き通るほど綺麗な青色の空。
懐かしささえ感じる。
一瞬、元の世界に帰って来たのではと勘違いしてしまうくらい、あの頃の空に思えた。
「やっと起きましたか」
側で声がした。
そうだ、誰かが僕を起こしていたな。
僕は何を悠長な事を言っているんだ。
もし、敵意のある人物なら僕が眠っている間に、殺害しているだろう。
僕は生きている。
それは側にいる人物に殺意がないからか。
拘束はされていないか?
手や足を少し動かしてみる。
うん、ちゃんと動く、拘束はされてないようだ。
僕は身体を起こした。
目の前に広がるのは、片田舎の集落の風景。
田んぼや畑に囲まれ、至る所に物置小屋?いや、あれが家だろうか?
他に家と言う物が見えないからだ。
昔風の家で壁は板や土壁、屋根は藁や葦といった草で出来ている。
あっ、水車も回っている。
小さな川が流れ、その脇の家に水車が取り付けられていた。
タイムスリップしたかのような風景だった。
「翔殿」
あっ、そうだった。
僕を呼んでいたのは誰だったのだろうか、声のする方へ目を向けると、そこには神官の衣装を着た人物が立っていた。
見た目からかなり年配の男性だと思うが、優しそうな感じの印象を受けた。
「あの〜、ここは…」
「ここでは何ですから、主の元へと案内させて頂きます。
私について来て頂けますか?」
こんな所にほっとかれてもどうしようもないので付いて行くしかないだろう。
「分かりました」
僕がそう答えると、神官姿の男性は振り向き歩き始めた。
僕は、ちょっと待ってよと言いたかったが慌てて立ち上がり何も言わず付いて行くしかなかった。





