巨大な積乱雲
「ちょっと行ってくる」
「翔、何処に行くんだ?」
「どうやら僕を呼んでいるみたいだから、会いに行ってみるよ」
「会いに行くって、天竜族の所にか?」
「他に行く所があるか?」
「なら、俺も一緒に連れて行け!」
「なんで隼人も連れて行かないないと行けないんだ?」
「それは翔がお宝を独り占めしようとしているからだろう」
「何を言っているんだ?」
僕は単に天竜族に会いに行くつもりなのに、お宝、お宝って、そんなに大事な物か?
確かにお金はあれば有るほど良いに決まっている。
だが、現状、お金に困っているのか?
困っていないはず。
生活に何の支障のなく、ご飯も食べられ欲しい物だって買える。
それで十分じゃないのか?
世の中には貧しくて何日も食べられない人もいるのに、その人達から見れば羨ましく思えるのではないのか?
上を見たらお金持ちなんてきりがないけど、僕は現状で十分満足している。
それなのに天竜族のお宝だって?
天竜族が何か悪い事でもしたのか?
悪い奴からお宝を取っても犯罪にはならないけど、何もしていない人からお宝を取ると立派な強盗だろう。
それを分かって言っているのか?隼人。
分かって言っているなら、犯罪者にさせない為にも止めるのが友達と言うものだろう。
「俺達も連れて行け、翔」
「それは出来ない。呼ばれているのは僕だけだし、隼人、お前は天竜族のお宝を盗むつもりか?」
「あたりまえだろう。
竜族のお宝なんてゲームの世界でもレアな品が眠っているに違いない。
強力な武器が手に入るかも知れないのに留守番なんて出来るかよ。
お宝なんて早いもの勝ちだろう」
「何を言っているんだ。
何もしていない竜族のお宝を盗むのか?
そんな事すれば、お前は盗賊と同じなんだぞ。
分かっているのか?」
「なんだ翔、そんな事言って、やっぱりお宝を独り占めするつもりだろう」
「そんな事する訳ないだろう」
「なら俺達も連れて行け!
俺が監視してやるから」
ふと、隼人の言葉に違和感を覚えた。
確かにいつも口の悪い事で有名だった隼人だが、ここまで僕に突っかかって来ることはまずなかった。
お互いいつも何処かで妥協し、納得していた。
それが今もまだ繋がる隼人との腐れ縁だと思う。
なのに、何かがおかしい。
何処がおかしいと言われても、自分でもよく分からないが、僕はその違和感を探していた。





