99 仲間
ラウサージュと沙羅が目の前まで来ると、少し怒った表情をしていた。
『怒られる』と思いきや、いきなり泣き出した。
「どれ、だけ、しんぱい、させる、のよ」
「れんらく、とれない、から、しんだ、かと、思う、じゃない」
二人は、泣きじゃくりながら、辿々しく喋っていた。
僕は、一言
「ゴメン」
としか、言えなかった。
あとから、空、隼人と同級生メンバーが現れた。
空は、既に泣いていたのか、目の回りを真っ赤に染めて、
「もう、心配させないで!」
少し怒り気味で言い放った。
隼人は、
「まあ、翔なら大丈夫だと思ったがな」
隼人らしい言い方だと思った。
「そろそろ、挨拶していいか」
潤が馬車から降りて、いつの間にか僕の後ろに立っていた。
「あ、会長」
「会長、生き延びていたのですね」
「ああ、皆良かった。
生きていてくれて、僕のせいでこんなこんな事になってすまない。
皆にあったら言おうと思っていた」
「翔くんと同じ事を言うのね」
「そうそう、そんなこんな気にしてないって」
「隼人くんなんて、ゲームの世界に来たって喜んでいるくらいだから」
「最初は、元の世界に帰りたいと思っていたけど、長くこの世界にいると仲間も居るしこの世界の生活もいいかなと思えてきた。
勿論元の世界に帰れたらいいけど、それまではのんびり生活して、帰る方法探せばいいかな」
「潤、言っただろう。そんな事気にする必要ないって」
「ありがとう、皆、僕は命にかけて皆を守るよ」
「命は、かけなくていいから、全員生き残る方法考えよう」
「会長、またお会いできて光栄ですわ」
声をかけて来たのは紗耶香だった。
「今は会長ではないから、潤でいいよ」
「わかりました、潤様」
紗耶香の熱い眼差しが潤を捉えていた。
その後ろで腕を組み、少しふて腐れている博の姿があった。
「お話の途中、申し訳ありません」
声をかけてきたのは、奴隷商人のカロンだった。
「無事にサボの街まで到着しましたので、お約束通りエマさんをお渡しします」
無理に連れてきたのだろうか、カロンは嫌がるエマの手を引き、引きずるようにしてやって来た。
そう言えばそういうはなしになっていたっけ。
「新しい仲間になるエマだ。皆よろしく」
「翔くん、美女ばかり集めてアイドルユニットでも作るつもり」
「羨ましいぞ、翔」
「そういうつもりはないけど、別に強制している訳ではないし、いつでも離れていいんだけど」
「私達は、離れませんよ」
「そうよ、ダーリン」
ダーリン?いつの間に呼び名が変わっているんだ。
精霊達は、それぞれ何か言っていたが、いつもの事なので聞き流した。
「翔くんも戻ってきたので、今夜、夕食を取りながら軍の方針を伝えるから、それまではゆっくり休んでて」
セレナは、皆に聞こえるよう伝えた。
僕達は陣営のある方に移動する。
エマは…、精霊達がなんだかんだで、はしゃぎながら上手くエマを連れてきていた。
僕には、まだなついていないので精霊達に任せた方が良さそうだ。
さて、夕食まで何をしようかな…