巨大な積乱雲
『バチッ、バチバチバチ』
艦体に高電圧が流れ込んで行く。
それでも空中戦艦は気流壁の中へと引き込まれて行く。
他の場所と比べて気流の流れが弱いと言っても、艦は壊れそうなくらい小刻みに振動していた。
僕の作った風の膜は意味がないかとも思ってしまう。
飛行能力を失った空中戦艦は、少しずつ気流の壁の中へと進んで行くが、それに伴い艦の振動も大きくなっていた。
大丈夫だろうか?
空中戦艦が本当に保つのか心配になってくる。
心配事はそれだけではない。
薄明かりの中、この艦内にどれだけの怪我人が出ているか、とても心配している。
今も艦内に高電圧が流れる火花放電が至る所で流れている。
感電した者もいるのではないだろうか?
そんな中、サフラン王子はテキパキと兵士達に指示を飛ばしていた。
「怪我人は医療室へ、鉄の部分からなるべく離れろよ!
機械室へエンジンを再始動出来るように指示しろ!」
騒がしいが僕は僕で頑張るしかない。
カミナリを弾くにはゴムが良いんだろうけど、この巨大な空中戦艦を包み込むようなゴムはない。
ちょっとでも高電圧を他に流す為に風の膜の内側に水の膜を厚めに張った。
これでは多少は艦に流れる高電圧が水の膜で散らす事ができるだろう。
そして気流の壁の中へ入り込んで行くと、そこは光の渦の中だった。
高電圧のカミナリが常に発生し、放電したままなので、辺りは白く輝いている。
おまけに壁の中に入ったのは良いけど、激しい気流の流れの為、あっと言う間に流されて行く。
まるで竜巻の中に飲み込まれたのではないかと錯覚するほど空中戦艦はグルグルと回転しながら、流されていた。
そしてついに空中戦艦は気流の流れに耐えきれず、各所で亀裂が走り始めた。
『ミシ、ミシ、ミシミシミシミシミシ』
小さな亀裂が成長するかのように大きな亀裂へと成長して行く。
やはり外の風を防いだとしても、艦の負担を減らすことは出来なかった。
 





