巨大な積乱雲
誰かが僕に安全な道筋を教えてくれているのではないだろうか?
そんな気持ちのまま線を辿っていく。
すると他の風に邪魔される事なく、無風地帯に入り木片の位置まで目の前の所まで来た。
「良くやった、翔。
ここまで来ればもう安全だろう」
サフラン王子が僕の後ろで言っていたが、まだ安心は出来なかった。
あの気流の壁がどうなっているのか分からなかったからだ。
線の道筋を誰かが教えてくれているなら、問題なく通り抜けられるはずだが、もし罠だったら…。
もしかしたら、この線は僕の空想で実際は何も関係無いんじゃないかとも思えてくる。
「壁に突っ込むぞ!」
サフラン王子の声に僕はハッとした。
目の前には気流の壁が迫っていた。
どうやら集中力がかけて、頭の中で考えて過ぎていたようだ。
そしてついに気流の壁に接触する。
『バチ、バチバチバチ』
「うぁ」
空中戦艦内の電力がいきなり落ち、兵士達にどよめきが起きる。
気流の壁には弾かれる事はなかったが、気流の壁に接触した瞬間、大量の電気が空中戦艦を襲い、放電しきれない電気が艦内にも流れ、コントロールパネルや計器類から電気がほとばしり、煙が上がった。
次の瞬間、艦内は電力が止まり、停電状態。
辺りは真っ暗闇、いや、真っ暗闇ではない。
外の明かりに照らされて、艦の中も多少は見渡す事が出来る。
その外の明かり、それは艦を包むかのように流れていたカミナリの高電圧の明かりだった。
この壁の向こう側は、雨風の強風域だけではなかった。
それと伴いカミナリの荒れ狂う高電圧地帯だった。
しかし、もう空中戦艦を止める事は出来ない。
空中戦艦内の電力が落ちてしまい艦を動かす為のエンジンは止まっていた。
エンジンが動いていたとしても、もう後戻りは出来ないだろう。
他に行く宛などないのだから。
結局、僕達はこのまま進むしかなかった。





