巨大な積乱雲
目指すは木片。
気流の流れに乗り、向きを少し変えるだけで良いはずだ。
強過ぎる力は空中戦艦が壊れるかも知れないので、周りの流れを見極めるんだ。
きっとあの木片に向かう流れが何処かにあるはずだ。
何度か気流の壁にぶつかりながら、流れを見定め考えていると『見つけた!』
流れに乗っていると絶対にたどり着けない。
流れと流れの間にある小さな無風地帯。
そこが通り道だった。
僕は風の力で艦の向きを無風地帯に向けた。
だがそれは決して簡単な事ではなかった。
気流の流れから逸れて無風地帯に方向を変えなければならない。
行き過ぎてもまた違う流れに乗ってしまい、無風地帯にたどり着けなくなる。
まるで針に糸を通すような僅かな道を通さなければならなかった。
僕は神経を研ぎ澄まし、木片までの道を通す為に集中していた。
なのに…、
「翔、行けるか?」
「今やってます。黙っていて下さい!」
「あ、すまん」
集中したい時に限って誰かが邪魔をする。
サフラン王子が声をかけてきたけど、僕はほんの僅かな道の綱渡りをしている途中で、ちょっとしたミスで無風地帯には行けず、違う方向に行ってしまう。
大事な時なのに邪魔して、思わず強い口調で言ってしまったが、相手は王子だ。
全てが終わった後、謝る事にしよう。
僕は風を微妙な力加減で空中戦艦の方向を変えていた。





