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巨大な積乱雲
「やはり、空中戦艦の周りにある膜は翔が作った物だったか」
サフラン王子は一人で納得していたが、どういう判断をするのか、僕は緊張感が高まっていた。
「良いぞ、翔に任せる」
「えっ」
呆気ない言葉に僕は逆に戸惑ってしまう。
サフラン王子の事だから、違う作戦を考えたり、僕の作戦に付け加えたりするかと思ったが、任せるだなんて全責任を僕が負うことになる。
そう考えてしまうとやはり僕は口出ししなければ良かったと後悔してしまう。
そして胃がキリキリと痛みだしてくる。
でもサフラン王子や兵士達を見殺しにする事は出来ない。
僕一人で逃げ出してもきっと後悔する。
サフラン王子達は逃げてくれない。
それならば僕が出来る事はやろうと思う。
「分かりました。
サフラン王子、それでは風の力で艦の方向を変えたいと思いますので、皆さん防護姿勢をとって下さい」
「分かった。
皆、聞いただろう。
これから風の壁に突入する。
衝撃に備えよ」
さあ、目指すはあの木片の流れる場所。
艦を動かすのに強い力はいらない。
ほんの少し方向を変えてあげれば良いはずだ。
僕は流れる木片を見つめていた。





