巨大な積乱雲
風の膜の中にいると、外の流れの速さが分かりにくかったが、外の気流の流れはとても速く、風の膜がなければ空中戦艦は、限界を超え空中分解している事だろう。
そして、ついに風の壁の存在が確認出来た。
今、流れている気流の直ぐ右横に違う流れが生じていた。
気付いたのは、艦の横を通り過ぎて行った小さな飛行艇。
向こうも成すすべもなく、流されるまま流されていた。
それが右側に少しずつ寄って行ったかと思ったら、風の壁にぶつかり粉々になって壁の中に飲み込まれていった。
よく見ると壁の中は更に流れが速く、こちらの気流の速さと壁の中の速さの差で壁が出来ているように見えていた。
例えるなら、壁の向こう側は高回転で回っている独楽、今いる気流は、その回転する独楽に吸い寄せられる周りの空気。
独楽に当たれば弾き出されるか、破壊されるかのどちらかだろう。
「王子!右側に気流の壁を確認!」
「見れば分かる!」
「はっ、失礼しました」
「後は天竜にでも祈ろう。
気流の壁を無事、通過出来るように」
なんと投げやりな、もう少し悪あがきをしても良いんじゃないかと思ってしまう。
脱出するすべがないんじゃ、運に任せるしかないか。
僕は念の為に風の膜の強度を限りなく強くした。





