97 帰還
進行方向に、やっと小さな明かりが見え始めた。
長い暗闇のトンネルを抜け、出口に近づいているような感覚だ。
早くこの暗闇から逃げたしたいと僕は思っているが、馬車の早さは変わらない。
逆に遅く感じてしまう。
段々、進むにつれて明るさが大きくなっていく。
長かった暗闇の森を抜けた瞬間、眩しさに目がくらむ。
少しずつ明るさに慣れ、辺りの様子が分かるようになると、そこには大きな街とその回りを大軍勢が取り囲んでいた。
最初、軍勢が攻めているのかと思ったが、攻めている様子はない。
敵ではなく、味方の軍勢だと少し後で確認できた。
街は、珍しく城壁が無い。
この辺りの街は、すべて城壁があったにここには無かった。
攻めてくる敵がいないのだろうか、と思っていたら奴隷商人のカロンが、強力な魔法壁を張っているから、迂闊に攻めいることは出来ないそうだ。
街の回りに駐留している大軍の中で、白銀騎士団を探していた。
セレナさんは、サボの街に来ていると言っていたからいるはずだけど…。
暫く探していると白銀騎士団の旗を見つけた。
近づいて見ると、『いた!』
セレナさん達、同級生達が固まって駐留していた。
僕は、馬車を降り一番近くにいたセレナさんに、
「ただいま」
どう言えばいいのか分からなかったので、取り敢えず挨拶をした。
「翔くん」
そう言うと僕はセレナさんに強く抱き締められた。
「心配したのよ、翔くん」
「あ、え、す、すいません」
僕は突然のことで、気が動転してしまった。
セレナさんの肌の感触、温もり、そして胸の感触、それをつい堪能していたら、回りの視線が…、とても痛い。
セレナさんも気付いたらしく、慌てて離れた。
そのあとミレナさんが来て、何も言わず頭を数回撫でてくれた。
奥に、ラウサージュと沙羅がいた。
僕に気付いたらしく、こちらへとやってくる。