巨大な積乱雲
「出力全開!」
「イエッサー」
サフラン王子と兵士達は必死に気流の流れから脱出しようと奮闘していた。
「お、王子…」
「どうした!」
「け、計器が…」
そう叫んでいる兵士がいるのに気付き、僕も一緒に近づいて見たら、計器の針がクルクルと回り出していた。
計器の故障かと思ったが、他の計器も同じように針が回転していたり、上下に大きく動いたりと計器の機能を全く果たしてなかった。
「どういう事だ!」
「分かりません」
「原因を調べろ!」
「イエッサー」
サフラン王子も焦っているようだった。
今まで、こんなに計器がおかしくなる事などなかったのか、どう対応して良いのか分からない状態のようだ。
「やっぱり噂は本当だったんだ!」
そう言いながら、兵士が持ち場を離れ何処かへ走っていく。
「誰か彼奴を抑えろ!」
サフラン王子の指示で何人かの兵士達が後を追っていく。
錯乱した兵士ほど怖いものはない。
何をしでかすか分かったものじゃない。
だが、それは一人ではないだろう。
兵士達に伝染し、皆、不安に思っているのだろう。
「噂など気にするな!
天竜が住んでいるなら、皆で見に行こうではないか!
いい土産話になるぞ」
サフラン王子は皆を奮起させようとしたが、周りはそれほど変わっていなかった。





