巨大な積乱雲
『ドドーン』
空中戦艦が積乱雲に突入する際に、摩擦の所為なのか分からないが音と多少の振動と共に雲の中に入った。
目の前は普通の雲と変わらない真っ白な世界。
視界は何も見えず、レーダーと高度計、羅針盤だけが頼りだった。
「計器を確認しろよ!
異常が有れば直ぐに教えろよ」
「イエッサー」
僕もマップ画面で確認しているが、周りは何もない空白域。
自然な物は何も表示されないということか。
周りの景色は真っ白な世界から奥へ進むに連れて、どんよりとした灰色の景色へと変わって来た。
『ギギギギキッ』
艦体が軋む音と少し艦が左右に振られているような感じがしていた。
「サフラン王子、積乱雲の中ってこんな物なのか?」
「くくくくっ」
「何が可笑しいんだ?」
「翔、本番はこれからだぜ」
「えっ」
「ジェットコースターの気分をあじわせてやるから楽しみにしてろ」
僕が高所恐怖症だということを知っているのか?
ジェットコースターなんて考えただけでも乗りたくない。
そんな場所に行くなら僕もDルームで待機するかとも考えたが、万が一、艦が落ちそうになったら乗組員を退避させなければならない。
そう考えて暫く様子を見る事にした。





