謎の仲間 70
「なんで、なんで…、殺す必要などないだろう」
僕は涼太の消えていった跡を見つめながら呟いた。
そんなに仲が良った訳ではなかった。
僕が一人を好み、クラスの皆とは関わりを持たなかった所為かもしれないが、涼太と話をしたという記憶がなかった。
挨拶くらいしかした事ないのではないだろうか。
それでもクラスの仲間だ。
親しくもないのに、何故、こんなに哀しいのだろうか?
唯一、残っていた腕輪を拾いあげながら、タナトスを睨みつけた。
「我に挑むつもりか?
止めておけ、お前に我を倒す力はまだない」
「それでも、仲間を…、涼太を殺されて黙っておけるはずない!」
「それならばこちらからも言わせてもらおう。
お前は、人の親の気持ちと言うものが分かるか?」
「それは…」
「大事に育ててきた愛娘を誘拐され、その上こんな場所で奴隷としてこき使われて、この悔しさ分かるか?」
タナトスの言いたい事も分かる。
僕に子供はまだ居ないけど、もし誘拐されれば必死に探し回り、意地でも犯人を捕まえるだろう。
だが、その時、子供が奴隷扱いされたり、暴力を受けたりしていれば、僕だって怒りに任せて犯人を殺してしまうかも知れないが、仲間を殺されて納得いかない物もある。
「我を憎みたければ憎めばいいさ。
そして我を殺したければ、逃げも隠れもしない。
いつでも魔族の国で待ってるぞ」
今の僕にではタナトスに勝てない。
それを相手は分かっているのだろう。
取るに足りない雑魚だと…。
それならもっと強くなって戦いを挑んでやる。
タナトスは自分の娘と魔族の娘を数名を宙に浮かせ、一瞬で消えていった。
テレポートを使ったのだろうか?
『ほれ、早く腕輪をはめろ』
「どうしてですか?」
『宿主が死んでも腕輪がある限り魅了は解けない。
だから、翔、お前が腕輪を付けて解除するのだ』
「なるほど、分かりました」
僕は腕輪を左手に装着して魅了を解除した。
これで大丈夫なはず、タナトスが連れっていった幼女達にも、ちゃんと解除されていれば良いけど。
僕は魅了を解除したので腕輪を外そうとしたら、何故か僕の腕に吸着したかのように取れない。
「あの〜、腕輪が取れないんですけど」
『腕輪がお前を次の主に迎えたのだ』
「それはどう言う事?」
『…』
「おい、指輪!」
指輪は何も返事がなかった。
クソ!この指輪め。
取り外して捨てようかとしたけど、指輪も何故か外れない。
「騙したな指輪!
責任取れ!」
だけど何を言っても返事は帰って来なかった。





