90 遭遇戦
朝食を食べ終わり、出発準備に取り掛かっていた。
昨日の事が嘘のように、森の中は静かで心地よい風が吹き抜けていた。
そんな中、突風が吹いたように木々を揺らしながら突き抜けて行く。
精霊達が、競争でもしているかのように四人が走り抜けていた。
「あれ、翔、美女達は?」
「外で遊んでいるよ」
精霊達は、今、人の姿ではないので潤には見えない。
ただ通った後に木々が揺れていることしか分からないだろう。
「潤、今日は長距離歩くけど大丈夫か」
「昨日、回復してもらったし、一晩寝たらスッキリだ」
「ルナは、大丈夫?」
「働く為に、頑張ってついていくわ。
勿論、今日から給金出るのよね」
ルナは、意外とチャカリしている。
一人忘れていた、アナンタは何処行った。
探していたら、洞窟の中でスヤスヤと眠っていた。
アナンタは歩きそうにないから、おんぶして行くことにした。
まだ軽いから、負担になることはないだろう。
「ルナ、どっちの方角行けばいいか分かる?」
「え~っと、ハムレットが南側だから、サボは西側に行けばいいはずよ」
「それなら、少し北よりに進んで街道に出るようにするか」
「敵の進行部隊が居るかも知れないが、街道の方が馬車とか捕まえられるかも知れないからな」
精霊達は、アナンタをおんぶして歩いているのに文句を言っていたので、回りに敵がいないかキチンと偵察できたら、後でおんぶしてやると言ったら、喜んで駆け抜けて行った。
ウェスタは、おんぶより抱っこがいいと言いながら飛んでいった。
これでキチンと偵察はしてくれるだろう。
後が怖いけれど…。
途中、魔物はいなかったが、食べられる獲物が何体かいたので、食料確保の為に狩りを行った。
「潤、動きが速いがレベルどのくらい?」
「今、レベル126」
「何で、そんなにレベル高いの、僕なんて今やっとレベル70まできたのに」
「翔、これには訳があるんだが、ゆっくりした時に話していいか」
「ああ、分かった。後でいいから聞かせてくれ」
暫く行くと街道に出た。
「この道を、真っ直ぐ行けばサボの街に着く」
「山道を行くよりは、綺麗に舗装された道を行った方が楽か」
その時、エアルからテレパシーが届く
『ご主人様、この先で馬車がゴブリン達に襲われていますが、どうしますか』
「どうした、翔」
「この先で馬車が襲われているらしいが、どうする?」
「ほっとけないだろ」
「だよな、僕と潤で先行するから、後から来てくれ」
僕と潤は急いで駆けていく。
「見えた」
馬車の回りを護衛が守って戦っているが、多勢に無勢、ゴブリン30匹に対して護衛は5人、数で押されていた。
ゴブリン達は武装しており、鎧兜に剣、盾を持って戦っている。
先行部隊、もしくは偵察部隊かもしれない。
「潤、一気に行くぞ」
「おう、翔こそ、遅れるなよ」
僕はスキル『疾風迅雷』を使い、加速する。
潤は、スキルを使わなくても、レベルも高いし訓練された聖騎士であるから、かなり強い。
馬車を挟んで僕達は別れてゴブリンに襲いかかる。
突如現れた援軍に、ゴブリン達は驚き混乱した。
その隙に、一匹ずつ始末していった。
ゴブリン自体レベル80はあったが、僕はスキルの恩恵で何とか切り刻み倒していく。
ゴブリンをすべて倒し終わった頃には、護衛の数も二人になっていた。
「大丈夫ですか」
僕は護衛の人に声をかけた。
「ああ、助かったよ。あのままだと全滅するところだった」
馬車から一人の男が降りてくる。
「いや~、とんだ災難でした。
あなた方ですか、助けてくれたのは。
ウム、確かに強そうだ。
どうかね、今、サボの街に向かっているんだが、その間護衛をお願い出来ないか。
勿論給金は弾むよ」
「僕達もサボの街に向かう所でしたので、ちょうど良かったです。
馬車に乗せて貰えたら助かります」
「ええ、それはもちろんよろしいですよ、私は奴隷商人のカロンと言います。
お見知りおきを」
「僕は翔、こっちは潤、後から仲間が来るのでちょっと待っていてください」
仲間が来る間、ゴブリンのドロップアイテム集めたり、カロンと少し話をしていた。
仲間達がやって来た。
いつの間にか、精霊達は、人の姿になっていたが、それを奴隷商人が見て、美女達を売っていただけませんか高いの値で買い取りますよ、と言ってきたが勿論断った。
精霊達は売り物では無いんだといいたかったけど言えなかった。
出発の為、馬車に乗り込む。
普通の馬車より、かなり大きく馬も四頭で引っ張っていた。
中を見ると広い空間になっていて、いくつかの鉄の檻が置かれていた。