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9 長老

長老の家は、傭兵団本部のすぐ近く桁外れに巨大な大木の上あった。

茎の部分は周囲200メートルはあろうか、上を見上げても先端部は勿論、長老の家など見えなかった。

こんなに巨大な大木など今までに見たことのない。

木の根も一本一本が太く立派で、一本の根の周囲が5メートルはあるだろう。

巨木の根元は根が地上まで突出し、タコの足のようにくねくねうねりながら辺り一面に大きな根を張り、絡み合い、根と根の間に幾つもの空洞が出来ていた。

巨木の高さは300メートルくらい、大きく幹を広げ、葉が青々と生い茂り、辺り一面に大きな影を作っていた。

良く見ると微かに見える木の隙間から家があるようだが、上に登る為の梯子はしごのような物は付いていないようだ。


「あそこまで、どうやって行くの」


「まさか、木登りする?」


「魔法で、飛ぶんじゃない」


とクラスメイト仲間で話していたら、


「残念でした~、どれもハズレです」


とセレナさんが言いながら、木の根元まで来ると裏の方に回る。

根の絡みあった1つの隙間に入って行くとそこは根で出来た広い空間となっていた。

その奥には扉があり、扉を開けて中に入るとそこは上まで突き抜ける広い空洞になっており、その周りに螺旋階段らせんかいだんが上まで続いていた。


「な~んだ、階段があるじゃないか」


「でもかなり高さあるよ」


「落ちたらどうするの」


「落ちないよう、手摺がちゃんと付いているじゃないか」


「何段くらいあるんだろう」


「数えてみれば分かるんじゃ」


「それじゃ、上まで登るから皆落ちないように付いてきて」


セレナさんの後ろを僕達は階段を登りながら数えていたが、途中から、きつくなり数えるのをやめた。

ぐるぐると回る螺旋階段、目が回りそうになる。

かなり登って来たように思えたが、まだまだ出口が見えない。

辺りの景色が変わらないので、まるで無限回廊に迷い込んだように感じてしまう。

どのくらい登った登ったのだろうか?

あとどれくらいあるのだろうか?

皆、運動不足なのか『はぁ、はぁ』『ぜぇ、ぜぇ』

運動部だった隼人以外皆、呼吸が苦しく階段を登るのも億劫になる。

やっと階段が終わり、出口を抜けると気持ちいい風が吹いていた。

「はあ、やっと着いた」

「気持ち良いわね、これだけでもここまで来たかいがあるわね」

ここまで来ると、かなり高い場所にいることが分かる。

下を見ると人が蟻のように小さく動いているのが分かるくらいで、下を見ていると引き込まれ、落ちそうに感じてしまう。

「どうしたんだ?紗耶香」

「私、高所恐怖症で高い所が苦手なのよ。」

「大丈夫だよ、紗耶香。

ほら、ちゃんと柵もついているから落ちることもないぞ」

「それでもムリムリムリ...」

僕も流石にこの高さは怖いと感じる。

柵も付いていると言えば付いているが、木をツルで固定しただけの柵、自分の身を預けるにはちょっと遠慮したい。

遠くを見ると、大きな山が連なり街だろうか、遠くに砦のような物が幾つか見える。

でも不思議だ、こんな大きな巨木なら遠くからでも気付きそうだけど、僕はセレナさんに聞いてみた。


「この街には、防護壁が張っているけど、こんな大きな巨木があったら目印になってしまうじゃない。

だから防護壁がこの巨木を見えなくしているみたいなの、

どういう仕組みかは聞かないで、私にも分からないから」


セレナさんも良く分かっていないらしい。

防護壁の魔法を張っているのは長老達らしく、セレナさんはそういった魔法が得意ではないらしい。

大木の頂上付近に出たが、さらに先に住居らしき建物が見えている。

大きく太い枝と枝の間に作られた平屋一戸建て、丸太で作られており、何だか子供頃に憧れた秘密基地のように思えてくる。

建物まで、約50メートル、大木の大きな枝に道が作られ落ちないように手摺も付けられている。

下を見ないように恐る恐る建物の前まで来ると、1人の若いエルフが入り口の前で立っていた。

護衛なのか、ただのメイドなのか分からなかったが、挨拶を交わし建物の中に案内された。

建物の中に入ると新緑の匂いで溢れていた。

部屋の大きさは12畳の1部屋しかなく、壁には異様な飾りがしており、エルフ独特の演出なのか、それとも何か呪術的な物なのかは分からなかった。

そして部屋の奥にはエルフが2人、座っていた。

セレナさんが一歩前に出て話し始めた。


「長老、新しく家族になった人を紹介します」


セレナさんが、深々と頭を下げる。


「こら、お前達も頭を下げないか」


セレナさんが小声で呟く。


「まあよい、頭を上げて顔を見せてくれ」


中央に座っていた長老らしき人が言った。

見た目には、セレナさん達とあまり変わらない年齢に見えるが、エルフは、よく長寿だと言われるので見た目で年齢は分からないのかも知れない。


「この者達、放浪者です」


「セレナや、本当に放浪者か?

突然この世界に来て大変だったね、私はこの傭兵団の長老を努めているカーラじゃ、この傭兵団を作った初代団長の妻でもある。

初代も放浪者でな、そして女たらしで、幾人もの女をたぶらかし…」


「長老、愚痴ぐちになってますけど」


セレナさんが突っ込む。


「あ~、すまんすまん、で、どこまで話したか。

え~っと、そうだ、初代は20年くらい前に亡くなったが、今は娘達と初代傭兵団の残ってくれたもの達でやっている。

しかし、初代が亡くなってから傭兵団を辞める者が続出してな、我団の戦力が激減してしまったのじゃ。

今、何とか戦力を増強して元の輝きし傭兵団に戻している所だから、あなた達にも頑張って欲しいんじゃ。

そして、あの日の輝かしい栄光を取り戻しておくれ。

因みに、セレナ、エレナ、ミレナは私の娘だ、人族とエルフの間に生まれたからハーフエルフになるか。

仲良くしてやってくれ」


「長い話は、それくらいにして本題に入られては」


「ウム、わかった、リーフ」


「長老の一人、リーフです。

さっそくですが、あなた達がどの職業に向いているか診断させて頂きます。

一人ずつ前に来て下さい」


リーフさんは、水晶玉を前に置いて何か準備をしている。

その間にセレナさんは、誰から占ってもらうか考えているようだった。


「それじゃ、誰から行こうかなぁ~、隼人くんは終わってるから...、祐太くん行ってみる?」


祐太が前に出て、リーフ長老の前に座る。

何やら、呪文みたいなものをリーフさんが唱え初め水晶の中をのぞきこむ。


「そうだね、防御力は高いみたいだら壁役としてナイトとか仲間を守る職業目指したらいいかも」


判定が終わり次々に順番が回ってくる。


「海斗くんは、存在感があまりないようだから、斥候役、アサシンなんかどう」


本人を前にして存在感がないと言い切るのはどうかと思うが。


「紗耶香ちゃんは、癒す力が高いみたいだから、回復役、ヒーラーどうでしょう」


「沙羅ちゃんは、集中力が高いみたいだから追撃役、ハンターなんかいいんじゃない」


最後に自分の番に、回ってきた。

どうせやるなら勇者とか憧れるけどな。

せめて、剣士なんかもカッコいいから好きなんだけど。


「ん~」


何やらえらく考え込んでいる。

もしかして僕にだけチートな能力があるとか。

力が凄過ぎてどれにするか悩んでるんだろうとか、職業何でもできるからどれがいいかとか、勝手に予想していたら、


「ん~、そうだね。どれも平均以下だから、何になってもいいよ」


開いた口がふさがらないとは、こういうことを言うのだろう。

簡単にいうと役立たずということなのだろう。

一瞬、僕は凍りついたような気がした。

ショックで、一時いっときは立ち直られないだろう。


後ろで、皆が笑いをこらえているのがよく分かる。

僕が皆の所へ戻ると隼人が、


「ドンマイ」


と笑いながら話しかけてきた。


あまりにも悔しくて『ちくしょう』と僕は心の中で叫んだ。

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