77 王都市
今朝、セレナさんから呼び出しがかかった。
隣国へ訪問するので、至急王宮に来いと言うことだった。
僕とラウサージュは出掛ける準備にかかる。
そんなに荷物は無いので、すぐに終わった。
そんな中、今回は空も付いていくと言ってきかないので、連れて行くことにした。
この世界に来て、あまり外に出掛けたがらない空だが、少しずつ元の世界の時のような感じに戻ってきているように思えた。
「隼人、エリス、ラミア、あとは頼んだよ」
「任しとけ」
「食事が出るから、頑張って仕事するから」
「翔、俺と弥生も出掛けるから、暫く会えないから、挨拶しとく」
「龍興、頑張って行ってこいよ」
「翔くん、僕も行こうかと思って」
「祐太、腕を磨いて来いよ」
「皆の手助け出来るように頑張ってくるよ」
それぞれ暫くの別れを惜しみながら、僕達は王宮へ向かった。
僕、ラウサージュ、空、アナンタの四人なので小さな馬車で馬二頭で引いている。
少し速い馬車なので、王都まで休憩なしで突っ切る予定だ。
それでも時速20キロくらいだろうか。
歩くよりは断然速い。
流れる風景も普通の馬車に比べて、とても早い。
精霊達は、空を気持ち良さそうに飛んでいた。
デニスの街に寄らず、そのまま北上していった。
人通りは多かったけど、何事もなく王都へ到着した。
お昼頃には着いて、お腹が空いていたがそのまま王宮へと向かった。
王宮へ着くと、そのまま応接室に通された。
暫くすると、王とラウージャがやって来た。
「すまん、待たせたな」
僕達は立って、王を出迎え挨拶をする。
「そんな畏まらなくて良いぞ、ラウサージュ、元気そうだな」
「はい、お父様」
「早速だが、隣国から返事があり平和条約に調印するという知らせがあった。
ラウージャに行ってもらうが、勿論、最低限の精鋭部隊の護衛を付ける。
しかし、これでも心配なのだ。
そこで、ラウージャが翔殿を推薦したんだ」
「翔くんのやり遂げる力、そしてその仲間達に僕は一目置いている。
だから推薦したんだ」
「僕に護衛出来るでしょうか」
「翔くん、護衛といっても補助的なことでいいんだ。
ほとんどは精鋭部隊が守るから、あくまで精鋭部隊の補助をやってもらいたいんだ。
「は~あ」
「難しいことは考えず、いつも通りで大丈夫だよ」
精鋭部隊の補助って何すればいいんだろう。
そもそも精鋭部隊がいるなら、僕は必要無いんじゃないのか。
「そうそう、それとラウサージュは隣国には行かないように」
「どうしてですか、私も行きますわ」
「万が一の為だ、国王命令だからな」
そのあと要点だけ、陣形や隣国までの道、隣国の説明を簡単に受けた。
出発は明日の朝、今晩は王宮に泊まっていいと言われたが、ラウサージュが王宮には泊まらないと言い張ったので、魔法学校の寮に泊めて貰うことにした。
寮には、沙羅がいるはずだけど元気でやっているかなと思いながら、自室に入る
沙羅を驚かせようとドアを開け、
「ただいま」と中に入ると、
「キャー!」
沙羅の悲鳴が、よく見ると着替え中だったようで、下着姿でしゃがみ込んでいる沙羅の姿が…。
手で隠した姿が実に色っぽい。
赤い顔してにらみ、
「いつまでも、見てるのよ」
「あ、ご、ゴメン」
僕は慌てて部屋の外へと逃げ出した。
「翔様、またですか」
「見たいなら、私が見せてあげるのにマスター」
精霊達はそれぞれ言っているが、空とラウサージュは無言のまま睨み付けている。
…怖い。
「もう、いいわよ」
中から沙羅の声がしたので、部屋の中に入った。
「入る時は、ノックくらいしてよ」
「ゴメン、驚かそうと思って」
「も~う良いけど、今日は何しに来たの」
「泊めて貰おうと思って」
明日隣国へと行くことを話、泊めて貰うことにした。
「忘れていたけど、これ沙羅の分、金貨一枚皆に配ったから受け取って」
「いいの、魔法学校通わせて貰っているだけで有りがたいのに」
「いいから、これで好きなもの買って」
「ありがとう」
「あと、ラウサージュと空、アナンタを暫く泊まらせたいんだ」
「私は行くよ」
「私も」
「国王がラウサージュを行かせないと言うことは、多分怪しんでると思う。
隣国に行くと危険な目に合うかも知れない。
だから、空、ここでラウサージュと待っていてくれ。
アナンタも、まだ幼いお前を危険な目に合わせたくないから、待っていてくれ。
これはマスター命令だ
あと、ここも危険になりそうならフォレストパレスに戻ってくれ」
行く行かないで、少し問答があったが危険な目に合わせたくないという僕の気持ちが伝わり、待っていてくれることになった。
ラウサージュは、その間魔法学校に通うことになり、ついでに空も魔法学校に行くことになった。
アナンタは部屋でゴロゴロするからと、いつものことだけど。
夕食は外で食べることになった。
近くにあるレストランで、沙羅が友達とよく来るらしい。
食事中、沙羅と何度か目があったがその度、目線を反らしていた。
沙羅は、下着姿を見られたことに対して、そんなに怒っていなかったようだ。
そして何故か、精霊達も一緒に食事をしている。
食べなくていいなら、食べなくてもいいのに食費がかさむ。
「美味しいもの食べたいから」
と精霊達は言う。
今はまだお金が沢山あるから良いけど、明日から隣国へと出発する。
最後の晩餐にならないことを祈る。