75 夢
『ハッ』と目が覚めた。
まだ周りは暗闇の中、朝日は昇っていないが起きてしまった。
昨日の出来事が、夢だったのかと思ったが左手には指輪が二つ、害は無いようだがこの指輪は何だろうか、とても気になる。
台所に行き、地下通路の入り口を確認すると、紋章はなくなっており、入り口を塞ぐ石も回りの石とかみ合い全く動き気配がない。
夢なのか、何かに化かされたのか。
不思議な気持ちになりながらも、近くの大きな木の下で日課の瞑想を始めた。
瞑想が終わり目を開けると、見知らぬ女性がいる。
ウェスタとアナンタ、そして三人の女性、見た目の年齢は変わらないぐらいか。
暫く見とれていたら、五人組が気付き、こちらに走ってくる。
「ご主人様、見てみて」
「マスター見てください」
と五人とも、抱きついて来るのが。
アナンタは、まだ子供だからいいがあとの四人は、自分と変わらないような年齢なので、こちらが恥ずかしい。
「ちょっと、キミ達誰ですか」
「え~、分からないのですか、エアルです」
「アルケーです」「エルダです」
「精霊達なの、姿がいきなり変わったんだけど」
「そうです、私達ランクアップしました」
「ランクアップすると、姿まで変わるの」
「そうみたいです、ご主人様」
「さらに強力な力を手にいれましたから、マスターの為に頑張ります」
「あの~、照れるから離れてくれないか」
「嫌です、繋いでいたじゃないですか、マスター」
「それは子供だから、今は違うだろう」
「中身はおんなじですよ、ご主人様」
それへラウサージュが起きて来て、さらに修羅場になる。
「翔様、そちらの方はどちら様ですか!」
「い、いや、精霊達だろう」
「若い娘が抱きついて良いのですか」
「これには深い訳が…」
「あら~、羨ましいのかしら」
とウェスタが言った時から、言い争いが始まった。
六人がそれぞれ主張して言い争っている。
僕は蚊帳の外で、黙って聞いていた。
こうして見ると六人とも美少女だなぁと思ってしまう。
今まで見てきた女性の中で、ベスト30には入るだろう。
ベスト10の中には、やはりエルフ族、セレナさん三人姉妹が入るだろう。
僕はその光景を、微笑ましく見ていたら、
「何、にやけているのですか」
と、こちらに火の粉が飛んできた。
その時、子供達が起きてきたので
「朝食を作らないと…」
と言ってその場から逃げ出した。
どうにかしないと、言い争いばかりしている。
何かないかと、皆で朝食を食べている時に考えていた。
朝食を終え、荷物を馬車に積み込む。
荷物はそんなになったが、荷物と子供達を馬車に載せたら、一杯一杯だったので、僕達は歩くことになった。
馬車の速度も落として、時間はかかるけど足の早さに合わせて進んだ。
ラミアとアナンタは、一緒にのんびり歩いている。
精霊達は、人に見えないように姿消して空を飛んでいる。
「ラウサージュ、皆ともう少し仲良く出来ないかな」
「翔様、だって皆が…」
「それは、分かっているが…、
皆も聞いてくれ、仲良く出来ないものは仕様がないので、切り捨てていくからな」
「それは困ります、マスター」
「私達の力がないとご主人様も困るでしょ」
「ああ、困るがその時は別の精霊を捕まえるから」
「ええ~、困ります」
「仲良くするので捨てないで」
「ご主人様の言うこと聞きますから」
「ラウサージュも、空もいいな」
「はい、分かりました」
本当は切り捨てる気は無いが、こうでも言わないと言い争いばかりするから
昼ちょっと過ぎに、フルールイルに到着した。
子供達は、馬車に揺られて何も言わなかったが、クラスメイト達が、疲れたとか腹減ったとかいろいろブツブツ言っていた。
自宅に着いたら、先にお昼の準備をしないとね。