71 それぞれの思い
自宅に戻った僕達は、王竜の来襲で今朝まで二日酔いで苦しんでいたのが、嘘のように吹き飛びリビングで、だらだらとしていた。
「翔くん、幼女ばかり増えてきたね。
幼女が好きなの?」
「空、それは無いだろう、勝手に集まってくるんだから仕方ないだろう」
「いつの間にか、婚約者までいるし」
「それは...」
ちょっと怒り気味の空に何て言えばいいのか分からなかった。
空はただの幼馴染だし、僕と空とはそれだけの関係だ。
じゃあ、何故、番長から空を助けたのだろう。
正義感から?知り合いだったから?自分自身に疑問を問いかけていたが、答えなど分からなかった。
「そのくらいで勘弁してやれよ、空」
「隼人は、黙っていて!」
隼人が助け船を出すが、逆に返り討ちに合った。
「話のところ悪いんだが、俺からも話があるんだが」
「どうした、番長」
「番長は止めてくれ、この世界では番長では無いからな。
龍興と名前で呼んでくれ」
「それで何か話があるの、龍興くん」
「ああ、実は暫くこのフルールイルを出ようと思うんだ」
「え~、どうして、何か嫌なことあった?」
「そう言う訳では無いんだ。
前から思っていた事なんだが、自分で武器や防具を作って見ようかと思って、少し遠いけどボンゴの紹介でドワーフの村に行く事にした」
「それで私も一緒に付いて行こうと思ってるの」
「弥生先生も?」
いつの間に、そんな関係になっていたのだろうか。
二人を見ていたがそんな感じは全然しなかった。
だって番長は、硬派という感じで恋愛なんてしそうにないし、弥生先生は生真面目だから先生と生徒の関係なんて持ちそうにないし、まあ、ここでは先生でも生徒でもないか。
「僕からもいいかな」
「何だ、祐太」
「ついでだから、僕も騎士になる為に勉強をしたいと思うんだ。
遠いけど、2つ先の国に騎士の学校があるらしく、そこに通えたらなと。
授業料は、魔物でも倒しながら稼ごうと思っている」
「それなら、皆に渡そうと思っていたお金があるんだ」
「翔、これは?」
「僕がクエストで貰った金貨100枚、本当はギルドに30枚渡すはずだったんだけど、これから街を管理するにはお金が必要だからと言って全額貰ったんだ。
だから皆に1人金貨1枚ずつ、そして三人を奴隷から平民にする為に1人金貨1枚ずつ配るつもりだったんだ。
だから、遠慮なく使って」
「翔、いいのかよ、お前が稼いだお金だろう」
「いいんだ、仲間だから僕は皆と平等に、そして異世界に来てしまったから頼れるのは仲間だけだから皆と仲良くやっていきたい。
だから、受け取って龍興、弥生、祐太」
「ありがとう、助かる」
「あと、皆の分、博の分は恒明さんに預けます」
「どうしてだ、翔、俺信用できないのか」
「ああ、お前に渡したら1日で使ってしまいそうだからな。
あと、ラウサージュ、影虎にも」
「私達も貰っていいの?」
「勿論、仲間だからな。
明日は、サンピースの街で奴隷解放と旅支度の用品を買いにいくか。
あと、山賊砦で拝借した宝を換金しないとね」
昼からは、フルールイルの街の整備が急ピッチで進められていたのでその手伝い。
道路の舗装と家の増築など手伝い、夕方は、森の中で精霊達、アナンタ、ラウサージュ、影虎と瞑想を行った。
皆それぞれの道を歩みだそうとしていた。