69 セレナ対決再び
広場に来ると、宴の準備をしている途中だった。
「セレナさん、何か手伝うことありますか」
「あ、翔くん、それじゃ料理を運んでもらおうか、王女様は座っていて下さい」
「いえ、私もこれからお世話になるので、お手伝いします」
「拙者も、手伝うなり」
料理をテーブルの上に運び並べていく。
並べ終わった頃、続々と集まり出した。
同級生の皆も、やって来た
「翔、居ないと思ったら、もう来ていたのか」
「ああ、何もする事なかったから手伝ってた」
「翔くん、お帰り」
隼人の後ろから声がかかる。
あ、空だ、しまった何て言えばいいのか、いきなり婚約者が出来たなどと言えないし困った。
すると、ラウサージュが挨拶を始めた。
「始めまして、翔様の婚約者のラウサージュです。
これからよろしくお願いします」
一瞬、空が固まったように動かなかった。
「婚約者?翔くん、どういうこと」
「いや、その、これには深い訳が」
同級生達も驚いていた。
それはそうだろ、僕が一番驚いているんだから。
さらに、いつの間にか精霊達が人の姿で現れる。
「あんまりですわ、ご主人様、私というものがありながら」
「マスター、浮気ばかりいけません」
変な誤解をされるので、それ以上何も言わないで。
「翔くん、後で話合いましょ!」
空は、怒って何処かへ去っていった。
同級生の皆は、
「修羅場だ」「モテる男は辛いね」
などと言っているが、今までモテた記憶がない。
空には、後できちんと話そうと思った。
宴が始まり、ラウサージュと影虎が紹介される。
「翔くんの婚約者、ラウサージュ様と護衛の影虎さんです。
皆さん、仲良くしてくださいね。
それと知っているかと思いますが、士爵と騎士団の名、それと街として統治する事になりました。
これから、忙しくなると思いますが、頑張りましょう」
「おー」
セレナの挨拶が終わって宴会が始まる。
僕の婚約者は言わなくて良かったのに、皆が「おめでとう」と言いながら、お酒を注ぎにくる。
隣に座っているラウサージュと影虎は、お酒を注がれながら、
「あまり飲めませんから」
と言いながら、かなりの量を飲んでいる。
二人とも酒豪ではないかと思う。
その分、僕に注がれるお酒は減るのだけど。
そう言えば、空はどうしただろうか。
回りを見渡したら、同級生達と一緒にいるみたいだ。
空を見ていると、かなりのハイペースでお酒を飲んでいる。
あっちも酒豪なのか、やけ酒なのか分からなかった
セレナが、スッと立ち上がり話を始める
「今日は、試練受ける人居ないから見世物がないので、今回は、私を倒す自信のある人かかってきなさい。
ちょっと、酔っているから今なら勝てるかもよ」
誰も戦おうとしない、それはそうだろう、この団で一位二位を競う実力者にかなうわけない。
セレナは続ける。
「誰もいないのかな、それなら私に勝てたら結婚しても良いわよ」
『え!』
僕は、鼓動が早くなるのを感じた。
セレナさんと結婚する…、好きなのかも知れない。
が、それよりも憧れているのかも知れない。
初めて会った日から、この人のようになりたいと想っていた。
この人に勝ちたいと…。
でも今は勇気が足りないし、まだ勝てないだろうから、だから、もう少し自信がつくまで待っていて下さい。
と僕は思っていたが、隼人が
「翔、お前の実力見せてやれ」
と叫んだら、それに皆が煽り出した。
「いけ、翔」
「お前なら勝てる」
いや、絶対勝てないレベルが違いすぎる。
「翔くん、かかってきなさい」
セレナの声につられて、僕はセレナの前まで来ていた。
ハッと気づいた時は、開始の合図が始まる前だった。
僕は無意識のうちに進み出たようだ。
「私は、木刀使うけど翔くんは真剣で良いわよ」
やはりまだ、格下に見られているな、
「僕は、これで」
前に木で作ったT字の木刀を二本取りだし、左右に持って構える。
「翔、トンファー何て使えるのか」
「隼人、これトンファーっていうの」
「知らなかったのか、確か沖縄の方で使っていたはずだが」
トンファーっていうのか、僕にとってこれが使いやすいんだよね、攻撃にも防御にも使えるから。
「でわ、行くよー翔くん」
「はい、よろしくお願いします」
戦いが始まった。
セレナさんは、前と一緒で後ろに回り込もうとしている。
前回の時は、動きが見えずに一方的にやられたが、今回は、動きがよく見えた。
左側から背後に回ろうとしていたので、僕も後ろをとられないように同じ方向に動く。
それに反応してセレナは、こちらに向かってくる。
そして木刀を振り下ろす、僕はそれを左手のトンファーで受け流し、右手のトンファーで腹を狙ったが、セレナは後ろに飛んで交わす、すかさず右足蹴りが飛んでくる
僕は、横に避け両方なトンファーをセレナに叩きつけたが、セレナは横に回転しながら避け、距離をおいて次の出方を伺っていた。
回りから、
「うおー」「すごいぞ」
と歓声が上がる
「翔くん、大分腕をあげたね」
「まだまだです、セレナさん、全然息上がってないし」
戦って見て分かるが、やっぱりセレナさんはすごい。
腕が上がれば、相手の強さがよく分かると言うが、まさにその通りだ。
「次は少しスピード上げるよ」
そう言うこと、一瞬で僕の目の前に来て木刀を振り下ろす、咄嗟に僕は、二本のトンファーで防ぐ、
そのあと、腹に蹴りを入れられ僕はきっと数十メートル飛ばされた。
お腹に激痛が走る。
「油断しないよ、まだまだ行くよー」
セレナが突っ込んでくる。
僕はスキルを使う。
電光石火、心眼を使うとセレナの動きがスローモーションのように見える
次はセレナは木刀を横払いに切りつけてきたが、僕は一瞬でセレナの背後に回り、両肩にトンファーで打撃を加える
セレナが膝を付いたかと思ったら、一瞬で切り株になっていた。
変わり身の術か、セレナは僕の背後から木刀を振り下ろすが、手応えがない。
僕の姿は、ゆらゆらと消えていった。
スキル蜃気楼だ。
そして僕は後ろから交差するようにトンファーを振り下ろす。
ヒットするが、当たった瞬間逃げられたようで、手応えがない。
「翔くん、やるね、私も頑張っちゃうよ」
次からの攻撃は、全く見えなかった。
精霊は使いたくなかったので、いろいろなスキルを試してみたが、少しずつセレナにおされていく。
最後は、木刀を捌ききれずに直撃を受け、膝をつき立てなくなった。
「強くなっているけど、まだまだだね。
翔くんなら報酬、無期限に伸ばして上げるよ」
「え」
小声で言ったのと、回りのざわめきで僕以外の人には聞こえなかっただろう。
どういう意味だろう。
セレナさんは脈ありなのだろうか
傷を回復してもらい、宴会に戻る
「惜しかったな、翔」
「いや、全然駄目だ、実力が違いすぎる」
先ほどの戦いを見て、さらに人が集まってくる。
「なかなか強いじゃないか」
「まるで舞のようで、凄かったな」
とかいろいろな話を聞かされながら、お酒を注がれる。
セレナさんと精霊達とラウサージュは、一緒に飲みながら何か言い争いしているようだったが、巻き込まれるのは嫌だし、僕の回りに人が少なくなってきたので、酔いを冷ますため宴会を抜け出し、また、城壁の上へと向かっていた。
影虎と半蔵が、ごちゃ混ぜになっておりましたので、
博の執事を藤堂 恒明
ラウサージュの影を影虎
にしました。
すいませんでした