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6 回想

そう、あの日、セミの鳴き声が煩く、とても暑い夏の日だった。

確か、夏休みに入ったと言うことでウキウキワクワクしていた頃だった。

僕は少しずつ頭の中の記憶をたどり引き出していく。

高校生3年の夏休みに最後の記念という事で、クラスの皆で何かをやろうという話があった。

僕は、別にヤル気は無く、夏休みの間は家に引きこもりゲーム三昧するつもりでいたのに、そんな面倒な事やるつもりは無かったのだが、誰が言い始めたのか忘れたが、皆がその提案に乗り、様々な意見が出たが、その中で生徒会長、もう二年生の生徒会長にバトンタッチしているから元生徒会長の稲垣いながき じゅんが、UFOを呼ぼうと提案してきた。


潤はいわゆるオタクで、未確認生物のことになると話が止まらないくらい未確認生物が大好き人間だ。

皆、なるべく未確認生物の事を潤の前では話さないようにしていたが、潤に捕まったら最後、生け贄として差し出され、その他の者は、そっと離れ蜘蛛の子を散らすように離れて距離をおく。

僕も逃げたかった。

だって、そんな事をするよりゲームをやっていた方が有意義に過ごせると思っていたからだ。

でも、そんな思いとは裏腹に潤に捕まってしまった。


「勿論、翔も来るよな」


「う、うん」


曖昧な返事で誤魔化し、当日バックレるつもりでいたが、


「じゃあ、迎えに行くからな」


『えっ』心の中で叫んでいた。

それじゃ逃げられないじゃないか。

僕の有意義な夏休みが消される事が確定した。

潤が説明を始めたが、準備や時間がかかる事、熱いグランドでする事ではないと皆が意見を言うが、その度に潤は熱くUFOについて語ってくる。

潤の話は長くなるので、別の事をしようとあの手この手でもっていこうとするのだが、結局、生徒会長の話に押仕切られUFOを呼ぶ事に決まってしまった。


面倒な事は、とっとと済まそうと、決まったのは夏休みの最初の日曜日で、UFO呼ぶなら夜にという提案もあったが夜は外出できないと意見があり、昼間に集合する事になった。


そしてUFOを呼ぶ日が来て、学校のグラウンドにクラスメイトが40人程と、他のクラスの人が10人程が面白半分期待半分で参加、あとは担任の女教師が集りUFOを呼ぶための魔法陣を、生徒会長の指示のもとライン引きの石灰で絵描えがいていた。

ライン引きはそこまで難しい事ではなかったが面倒くさい、そして兎に角、暑い。

真夏のグランドは特に暑いのではないのか?

日陰もないし、今は風1つ吹いていない。

お陰でライン引きがはかどるのだが、よくこんな中、部活なんてやれるよな...、周りの生徒達を見てそう思う。

帰宅部の僕は殆ど家から出ない。

親も仕事で居ないから家の中でゴロゴロ、クーラーをかけながらゲームをやったりしていた。

そう言えば夏休みで初めて外に出たのではないか?

久しぶりの熱い日差しの中、汗水垂らしながら作業を進める。


「早く書かないと、日が暮れるぞ」


「どこで、こんな面倒くさい魔法陣、手にいれたのか...」


皆、ぶつぶつと面倒くさいと言いながらも、元生徒会長の潤の指示通り正確にキチンと描いていく。

キチンと書かないと潤の五月蝿い話が長いからだ。


「この魔法陣は、滅多に出回らない裏ルートで手に入れたものだから確実にUFO呼べるぞ」


「本当かよ」


この手の話を信じてしまうオタクは、困ったものだ。

グラウンドの周りには、部活をやっている生徒なども沢山いたので、邪魔にならないグランドの端を使っているのだが、時々、ボールが飛んで来てはラインを消され、その都度、潤はキレて文句を言いに行っている。

僕達がグランドの隅っこを使わしてもらっているのだから、邪魔なのは僕達の方で文句をいうにはお門違いだと言いたかった。


「よし、出来た」


昼に集合と言っていていたが、実際は元生徒会長の潤や一部のクラスメイトは午前中に集まり、魔方陣を描いていた。

勿論、僕はこの手の話は信用出来なかったが、朝早くから潤が迎えに来たので、慌てて着替えを済ませ誰よりも早く学校に来ていた。

昼には既に半分くらいが描いていたが、昼御飯を食べる間もくれないくらい潤は、頑張っていたので仕方なく昼御飯を我慢して描いていく。

綺麗な円じゃないとダメ、線が曲がっているなど、ダメだしで何度も書き直し、それでもようやく魔方陣を描き終えたのは15時近かったと思う。


「みんな、魔法陣の周りに手をつないで、囲むんだ」


「こんなんで、呼べるのかよ?」


「大丈夫さ、みんなでねんじれば必ず来る」


元生徒会長の潤の指示で全員で輪になり手を繋いだ。

僕は半信半疑で心の中では、こんな物ではUFOなど来ないだろと思いながらも、10分くらい空を見ながら『UFOよ現れろ』と念じた。

そして暫く無言が続き誰が言った。


「全然、来ないじゃん」


「念じかたが足りない。もっと集中してきて、絶対来るから」


生徒会長の潤は、本当にこれでUFOを呼べると思っているらしく、皆に催眠術をかけるかのように話していた。

これで来なかったら僕達の念じ方は足りないと、僕達の所為にされそうだし、UFOが来るまで終わりそうに無かった。

いつまでこうしていれば良いのだろうか?

クラスの付き合いも有るからと僕は皆に言われてグランドに来たけど、今、頭の中は早く帰りたい。

その一言だけだった。

なんでこのくそ暑い中、グランドに立たされなくてはいけないのだろう。

見たいテレビもあったし、やりたいゲームも有るのに早く終わらないかなと思っていた。

夏の昼間のグランドは、更に気温が上昇してとても暑かった。

周りでは部活の生徒達が汗水垂らして頑張っている。

こんな暑い中、毎日部活なんて良く頑張るよなと感心してしまう。

僕達は汗がしたたり落ちながら空を見上げていた。

いつまでこうしてれば良いのか、いつまで続くのか分からず、いい加減、来るか来ないか分からないUFOを呼ぶ事に飽き飽きしていた。

空は青く澄みわたり、UFOなど全く見えずに遠くの方に積乱雲の大きな雲が見えた。

その時、突然グラウンドで風が舞い小さなつむじ風がおきた。

最初は風の勢いは小さかったが、徐々に大きくなり突風へと変化し、そして竜巻となっていろいろな物を空中へと吹き飛ばし始めた。


「みんな、逃げろ!!」


しかしその時には、すでに竜巻は目の前まで来ており、皆のさけび声だけが木霊こだましていた。

いろいろな物が上空に巻き上げられ、幸いにも人はまだ巻き上げられていなかったが、巻き上げられた物が風の中を飛び回り、そのうちの1つが突風で飛んできて僕の左手に当たった。


「痛っ!」


左手を見てみると突風に飛ばされた木が、深々とさっていた。

見る見るうちに、血が流れ出し滴り落ちる。

そして、落ちた血が魔法陣に触れた時、魔法陣が輝き初め僕は光の中に飲み込まれた。

段々と人の叫び声、風の音、回りの雑音が聞こえなくなっていく。

それからの記憶が無くなっていた。


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