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59 執事

しばらく待っていると、執事が慌てたように走ってやってくる


「坊っちゃんに、手出しする事は許しませんよ」


執事は僕達と博の間に割って入った。

執事は、見た目若く見えるが、30才前後だろう。

背は高く180センチ位、如何いかにも執事という格好のタキシード姿に白い手袋を着ているが、かなり薄汚れている

髪型は七三分けにしていて、メガネをかけている。

男前でモテそうな顔だけど、あまり食べてないのか、ほほが痩せこけている


「違うんだ、執事、同級生だ」


「坊っちゃんの同級生ですか?」


執事は、一人一人をよく確認しているようだった。


「確かに、覚えている顔が何人かいますね。

私は代々、中小路家につかえている藤堂とうどう家の人間で、恒明つねあきと言います、お見知りおきを」


右手を直角にお腹の辺りに曲げ、深々と挨拶をする。

『おお、執事らしい挨拶、初めて見た』と思っているのは、僕だけだろうか。

浮かれている場合じゃなかった。

一言ひとこと、言ってやるんだったと思い


「恒明さん、少し博を甘やかし過ぎではないですか」


「何処がでしょうか、翔様」


「博に何もさせていないということだよ」


「それは、私は坊っちゃんを守る義務があります

だから、当然のことをしているだけなのです」


「それが甘やかしと気付かないのですか?

恒明さん、もし貴方あなたに何かあったら博は一人で生きていけると思いますか?」


「私は、坊っちゃんを残して死んだりしません」


「この世界で、本当にそう言いきれますか?

元の世界に帰れるか分からないのに、みんな、必死で今を生きてます。

それなのに…」


「話は、終わったかい?」


現れたのは、サンピースの街で誘拐しようとしていた人物の一人、名前は…別にいいや


「今回は逃がさないぜ、おい野郎ども出てこい」


僕達の周りを取り囲むように、30人ほどが姿を現す。

建物の上にも仲間がいるようだ。

実は、近づいて来てるのは精霊達によって感知していたが、一役かってもらおうと思って放置していた。


「さぁ、恒明さん、大事な坊っちゃんが危険な目に会いますがどうしますか?」


「坊っちゃんに危害をくわえさせません」


そう言うと、執事は誘拐犯の中に一人飛び込んで行った。


「何だテメーは、こいつからやっちまえ」


沙羅もうごこうとしたが僕が止めた。

小声で、沙羅とラウドに指示をだす。


「少し待って」


「何か考えがあるのね、翔くん」


「ああ、だから少し様子を見てから」


執事は、警棒を取りだし両手に一本ずつ持っている

元々、護衛の訓練を受けていたのか、人数の多い誘拐犯達を翻弄ほんろうしている


「中々やるわね、恒明さん」


「そうだな、意外に強いかも」


しかし、長くは続かなかった

段々と執事は追い込まれていき、最後は、よってたかって痛めつけている


「次は、お前達の番だからな」


「坊っちゃんには、手出しさせません」


「しぶといな、もっと痛めつけろ」


「翔くん、まだダメなの」


沙羅が泣きそうな顔で訴えてくるが、駄目か失敗なのか、手出しするべきか悩んでいた時、一人の男が動いた


「僕の執事から離れろ」


「坊っちゃん、こっちに来ては行けません」


博が、執事を助ける為に動いた。


「なんだテメーは邪魔だ」


博に、蹴りが飛んでくる。

レベルが低いせいか、戦闘経験がないせいか分からないが腹にまともに受けて悶絶もんぜつしている。


「坊っちゃん!

貴様ら、坊っちゃんに…、許さんぞ」


「何が許さないだ、動けないくせ

そうだ、お前の目の前で、その坊っちゃんを痛めつけてやろうか」


「止めろ~!」


「お前の目の前にガキを連れて来てやる…。

何だ、いつの間に、テメーもやられに来たのか」


いつの間にか、翔が博の所にいる。

さっきまで、隣にいたはずなのに沙羅とラウドも驚いていた。


「やればできるじゃないか、博。

ここから、交代だな」


「何だ、次はテメーか、袋叩きだ」


僕はスキルを唱える。


「駿足」


誘拐犯達は集団で僕をたたこうとしたが、そこにもう僕は居ない。

レベル差なのか、スキルの所為かは分からなかったが、僕の動きに誘拐犯達は見えていないようだった。

僕はスキルを生かし、既に執事の近くにいた。


「恒明さん、棍棒ちょっと借りますね」


僕は恒明さんと同じスタイルで棍棒を左右対称に持ち、一度振り回して確認する。

よし使えそうだな、これなら相手を殺す事はないだろう。


「よし、精霊達は上の敵をお願い

では、いきますよ」


多分僕の速さを確認できる人物は、この中にはいないだろう

集団の中を縦横無尽に走り敵を倒していく。


「バカな、化け物かよ」


一人、また一人とやられていく誘拐犯達

完全に混乱におちいっているようだ


「伏兵、かまわね~から弓矢を打ち込め…

伏兵~!」


上にいた伏兵は、すでに精霊達によって倒されていた。


「さて、残りはあんただけけど、どうする」


「何だと」


辺りを見回して、やっと状況が分かったらしい


「くそ~、あれだけの人数集めたのに」


「お前に2択を選ばせてやる

誰に雇われたかを素直にしゃべるか、それとも拷問ごうもん受けてしゃべるか選べ」


僕達は、博と恒明さんを荷車に乗せ、治療屋へ運んでいた。


「まさか、クラスメイトのべレストが犯人だなんて」


「まだ犯人とは決まってないよ、直接聞いた方が良さそうだ」


「確か、べレストは僕が魔法学園に入るまで、成績優秀で、人気投票一位だったらしい

今は、僕が一位だけどね」


それは自慢ですか、普通の男達なら嫉妬してしまうけど、ラウドは女性だからそんなに悔しくない。

僕もモテた記憶がないが、できればモテたいと思うのは僕だけだろうか、だからモテる男を嫉妬してしまうんだろうけど。


「それにしても、翔くん、何あの動き全く見えなかったわ」


「サンピースで見たときよりも、格段に強くなってない?」


「そうかな、今回は精霊の力使ったせいかな」


そう言う話をしている間に、治療屋に着いた。


「回復魔法が、誰か使えれば良かったんだけど」


「仕様がないでしょ、まだ覚えてないから」


治療屋に入ると、いろいろな薬品が置いてあり、とても不思議な匂いがしていた


「今日は、どのようなご用で」


店番のお姉さん?なのか分からないが背の低く顔はネズミだ。

二本足で立って服もちゃんと着ている。

ネズミ族というのか?


「この二人の治療をお願いしたい」


「どれどれ、中々の傷だね

そうね、回復魔法を使うから二人で銅貨10枚というところか」


「銅貨10枚って高いの?」


妥当だとうなところよ」


「なら、お願いします」


二人に回復魔法をかけてもらった。

ついでに回復薬がないか聞いてみたら、こちらは銀貨1枚と少し割高となっていた。

回復魔法は自分の魔力を使用している為、必要なのは自分の魔力だけ、薬の方が材料やそれを取りに行く為の労力が必要になる為、それなりに元手がかかってしまう。

薬だけ買われたら自分の回復魔法の意味が無くなるので、薬の値段が高くなっているらしい。

もしもの為に薬を2本だけ購入する事にした。


「はい、終わりあとはゆっくり休養させることね」


治療が終わり体力も弱っていたので、寮に連れていき休ませることにした。

部屋についても、中にカンダスくんは居なかった

何処に行ったのやら。

僕の部屋のベッドを譲り、二人を寝かせた。

狭いけど仕方がないね

あと、ちょっと臭いからお風呂にも入れないと

いろいろやることはあるけど、一つずつかたずけていこう。








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