58 首都散策
都市の中を散策する為に、僕達は学生寮から出掛けた。
首都というだけあり、人通りはサンピースの街に比べかなり多い。
道幅も車の4車線分はあるだろうか、人、人、人の波、どれだけの人がいるのだろう。
活気にあふれ、商店街が建ち並ぶ中を僕達は散策している。
これだけ多いと、刺客からどうやって守ればいいのか、影虎さんの姿も見えないから、影で護衛していると思いたいがそんな時ラウドが、
「こんな人ごみの中、襲ってこないから楽しく探索しよう」
と言ってきたが、僕は精霊達に周りの見張りをやってもらうことになったが、その条件として人の姿で守ると言い出して聞かないので、仕方なく了承した。
「大丈夫?人の姿で守る事できるの」
僕は、ラウドを護衛しなければならないという義務から、精霊達に聞いてみた。
「大丈夫よ、前にも言ったけど私達は下級の精霊達、眷属を使役する事ができるの、だから人のままでも、精霊達が周りを飛び回っているから何かあればすぐ探知できるわ」
「頼もしいなぁ」
「だ~か~ら~、マスター、手を繋いで歩きましょう」
と、まず、エアルが腕にしがみついてくる。
そして精霊達による腕の取り合い争奪戦が始まった
まるで子供喧嘩だなと思いながら、最後は結局順番で左右一人ずつ交代制になった。
まだまだ子供だから、妹を連れて歩いているような気分だが、ウェスタだけは見た目の年齢があまり変わらないので、ちょっと照れてしまう。
その光景にラウドと沙羅は、
「セクハラ」「ロリコン」
等と口ずさむ。
さて置き、今日はラウドが奢ってくれるというので、精霊達と沙羅は喜んでいた。
「とりあえず、何か食べる?」
「はーい」
「美味しそうな匂いがします」
確かに、美味しそうな匂いが漂ってくる。
商店街の先には屋台が建ち並び、いろいろな匂いが混ざっていた。
「どのお店から行く?」
「焼き鳥がある~、これにしよ」
かなり、はしゃいでいたが、精霊って食べ物、食べれるの?
気になったので聞いてみた。
「人の形をした時は、食べても食べなくても大丈夫だけど、一度味覚えたら美味しいもの食べたいと思うでしょう。」
食べなくてもいいなら、食べるの無駄じゃないのかと思うが、皆、喜んでいるからいいか。
散策というより、食べ歩きになっていた。
片っ端から料理に手を伸ばし、焼き鳥、唐揚げ、焼き魚、焼そばのような物まであった。
デザートに焼き菓子を食べながら、屋台の列を過ぎると、人通りが少なくってきた。
「ここから先は貧民街になるわ、残念ながらこの平和な国でも貧困格差が出来ているわ。
これをどうにかしないといけないけど、有効的な手段がなく格差が広がるばかり。」
先の方を見ると、確かに人々が道端に座り込み、空き缶置いて、お金を恵んで貰おうとしている様子がわかる。
「一人にあげると、群がってくるから早く離れよう」
ラウドが言うので、その場を立ち去ろうとした時、何か見知った顔を見たような気がした。
多くの人々が座り込んでいるその方向をもう一度、一人一人確認して見ると、『あ、いた』思わず二度見してしまった。
髪はボサボサ、服もボロボロのローブをかぶり、顔も汚れて真っ黒、げっそりと痩せこけているが、間違いなく中小路 博だ。
二年生の時に同じクラスになった。
家がかなりお金持ちらしく、いつも執事が送り迎えして付き添っていた。
自信過剰の上、何でもお金で解決法するというイメージしかないが、今の状態は全く正反対だ。
「博?」
呼ばれた声に反応して、気力がないのか、ゆっくり頭をあげる。
「あ…、し、翔じゃないか、良かった迎えに来てくれたのか、どうやったら帰れるのか分からなかったんだ。
執事がもうすぐ戻ってくるから、元の世界に一緒に帰ろう」
「いや、博、残念ながら帰れないんだ」
「どうしてだ、あ、お金がないからか?
帰ったら好きなだけ、渡すからそれでいいだろう、なぁ」
「違うんだ、僕達もこの世界に来て、帰る方法が分からないんだ」
「そ、そんな…」
博は、ため息をつき、また同じ格好になった。
「執事は、何処行ってるんだ?」
「お金を稼ぐ為、魔物を倒しに出かけている」
「それで、お前はここで何してるだ」
「執事がここ座っていろと、空き缶置いて、お金貰えと」
「は~あ、お金1厘も入ってないじゃないか、執事に任せきりにしてるのか」
「だって、俺じゃ何も出来ないし…」
「それは、皆同じだ!
この世界に来て右も左も分からない状態で、生きる為に頑張ってるんだ。
それなのに、お前っていうやつは…。
皆、すまないけど執事が戻ってくるまで少し待つから」
何もしないで座ってるだけなんて、段々腹が立ってきた。
甘やかし過ぎなんだ、執事にも一言、言わないと気がすまない。
自分達が、どれ程危険な目にあって過ごしてきたのか、少しこらしめないと気が済まなかった。