54 魔法学
「皆さん、席に座ってください。」
講師の先生が、教室に入ってくる。
黒い三角帽に黒いローブ、少しぽっちゃりした体型の女性、いかにも魔法使いという格好だ。
教室は、大学の講堂のような形になっており、階段状に奥につれて高くなっている。
机は教壇を囲むように、扇状に10名ほどが座れる椅子が100人分はあるだろうか、僕達は、中央付近に、ラウドを挟むように左側にカンダス、右側に僕と沙羅が座った。
そして周りに、同じ講義を受ける女子達が取り囲んだ。
更にその周りを男性陣が取り囲み、ラウドに対してのひそひそ話が聞こえてくる。
まあ、これだけモテていれば男子から嫌みを言われるのは当たり前か、そして妬まれていれば、嫌がらせを受けるのは当然な流れになるか。
「まず、編入生を紹介したいと思います。
お二人、立って挨拶してもらっていいですか」
初めての挨拶って緊張するな、異世界なら尚更何を言っていいか分からない。
取り敢えず、名前だけ言っとくか。
「僕は、翔と言います。
よろしくお願いします」
「沙羅です。皆さんと仲良くできたらと思ってます。」
「はい、皆さん仲良くしてくださいね。
お二人とも座ってください。
それでは、授業を始めます。
私の名は、ピッキーノ、魔法学を教えています。覚えていてくださいね。
そうね、最初に編入生の魔法力を確認しましょうか?
お二人、前に出て来てちょうだい」
僕と沙羅は席を立ち教壇の前まで行く。
何が始まるのか、知らない人ばかりの中とても緊張する。
直径20センチくらいの丸い水晶を取りだし、教壇の上に置く。
「どちらからでもいいけど、沙羅さんからしますか、この水晶に両手を当ててちょうだい」
沙羅は、言われるがままにそっと水晶に両手を触れる。
「それでは、沙羅さん、呼吸するように大きく息を吸って、水晶に吐くようなイメージでやってみて下さい」
大きく息を吸い、吐き出すと水晶の中にモヤモヤしたものが貯まっていく。
「はい、いいですよ。
中の上くらいですね、中々素質は有ると思いますよ。
これからの努力次第では立派な司教になることも可能でしょう」
沙羅は少し照れ笑いして嬉しそうだった。
「次、翔くんの番ね、先ほど沙羅さんがやったようにしてみてください」
僕は、水晶に両手で触れ大きく息を吸い込む、そして力一杯吐き出した、すると、
『バン、ガシャーン』
水晶は、突然、音とともに粉々《こなごな》に砕けた。
「大丈夫?怪我しなかった?ヒビが入ってたのかしら、こっちでもう一度お願い」
大きく息を吸い込み、吐き出そうとした瞬間、
慌てて先生が、
「ちょっと待って!こちらでやってみて」
取りだしたのは、直径30くらいか先程よりかなりでかい。
大きく息を吸い、吐き出す。
見る見るうちに、水晶の中のモヤモヤが一杯に成り、また破裂しそうだったので、途中で込めるのを止めた。
「凄いわ、凄い才能が眠っているわ。
頑張れば、大魔導師も夢じゃないわよ」
「おぉー」
皆から驚きの歓声が上がる。
照れながら教壇をあとに、自分の席に着いた。
それからの授業は、有意義な授業内容だった。
元の世界の授業は、何気なく受けて赤点取らなければいいやという感じだったが、魔法学はとても面白い。魔法の意味、強力な力の出し方など、さらに覚えたかった回復魔法の勉強もある。
護衛の任務を忘れ授業に没頭していた。





