53 バレンタインデー
「今日から、学園に通うことになるけど、先にもう1人の護衛を紹介する、カンダスくんだ」
「カンダスだ、よろしく」
「翔です、よろしく」
「沙羅です、よろしくお願いします」
カンダスは、背は同じくらいだが筋肉ムキムキマンだ。
茶色の髪を、短髪にスポーツ刈り風にして、顔はゴツゴツした感じ、ドワーフ系の顔と言った方が早いか。
「この制服に着替えてくれ、寸法は計ってるから合うはずだけど、あとこれが教科書類」
『ドン』
教科書の多さもだけど、一冊一冊がとても分厚い。
「これ、どうやって持っていくの?」
「もう持ってるだろう、これ…。
指輪、このリングボックスの中に入れてしまえば、持ち運びが簡単さ」
「あ、なるほど」
僕は教科書をリングボックスの中に入れ、制服に着替える。
この服装は、ラウドがサンピースで逃げていた時の服装だった。
女子は、ズボンの代わりにスカートのチェック柄だ。
沙羅は、着替えの為1人部屋に戻って行った。
僕は、男ばかりなので、そのままリビングで着替えをしていたが、ネクタイの締め方が分からず、四苦八苦していた。
そこへ沙羅が、着替えて出てきた。
「見てみて、この制服、めっちゃ可愛いんですけど。
何やってるの?翔くん」
「いや、ネクタイ付けるの初めてだから、付け方が分からなくて…。」
「かしてごらん」
沙羅が、僕の目の前でネクタイを締めてくれてる。
沙羅の顔が目の前に、そして甘くいい香りが漂ってくる。
数十センチの距離に沙羅はいる。
このまま抱きついてしまおうか?
沙羅は、僕の事どう思っているのだろうか?
いかんいかん、また淡い妄想に入り込んでいた。
違うこと考えようと横を見ると、ラウドがにやけている。
「はい、終わり」
と、胸を両手で軽く叩かれる。
「何にやけてるの、ラウド?」
「いや~、お似合いのおしどり夫婦みたいだなと思って」
「そ、そんなこと…」
僕と沙羅、二人とも顔が赤くなり少し離れた。
「さあ、まずは学園長に挨拶に行くよ」
校舎の玄関付近まで来ると、凄い人盛りができていた。
何だろうと思い近づいて行くと、向こうから
「ラウド様よ」
「これ、受け取って下さい」
「私のも」
約100人ほどの女子に、囲まれプレゼントを受け取っている。
「何の騒ぎ何だろう、沙羅どう思う」
「そうね、やっぱりアイドルだから?
カッコいいもの」
騒ぎが一段落して、ラウドに聞いてみた。
「ああ、今日はバレンタインデーだからだよ」
「この世界にもあるの?」
「もちろん、君達の世界と同じなのかなぁ」
「僕達の所では、女性が男性にチョコ渡しますが…。」
「そうなの、こっちではチョコに限らず何でもプレゼントするけどな。
あと、女神ユノの祝日という話もある」
「そうなの、この世界にも神様いるんだ」
「もちろんいるさ、見たことないけど…
精霊とかも見たことないし、精霊の力は借りたりしているから、存在はしているはずなんだけど」
「そうなんだ」
僕と沙羅は、思わず顔を見合わせた。
いつも見ている精霊すら、見たことないなんて僕達は何気に貴重な体験をしているのだろうか、もしかするとこのままいけば、神様にも会えるかも知れないと思った。
校舎の中に入り一階にある園長室を目指す。
まだ授業は始まってないようで、生徒達は廊下で話していたり、教室で話をしたりそれぞれ有意義に過ごしているようだ。
一階、奥の方にあるドアにいろいろな彫刻が施されている園長室の前まで来て、ドアをノックする。
『コン、コン、コン』
「ラウドです、編入生を連れてきました」
「入りなさい」
「失礼します」
ドアを開けて中に入ると二人の男性がいる
1人は大きな机の椅子に腰掛け、扇型の帽子に白髪に長い白髭、白の豪華なローブを纏い、いかにも魔法使いという感じのする老人、多分園長だろうと、横に立っている人物、白の丸い帽子に、顔は少し痩せこけて中年男性、髪は黒色、白いローブをきている。
「私がこのノモコ魔法学園の園長をしているガーラインだ」
「そして、私が副園長のリベッタです」
「今回、多額の寄付をして頂いてるクレイダル男爵からの達ての頼みと言うことで、編入を認めましたが通常は編入は認めない。だが、いろいろ問題が有るようなので、今回は特例として認めました。
ラウドくんへの嫌がらせがあると言うことでしたが、こちらまで報告が来ていません。副園長はどう思われますか」
「その通りでございます。
いたずらではなく、たまたまが重なっただけで、それを妄想しているだけだと思われます。」
「学園長、それは何度も言ってますが」
「お黙りなさい!この学園は平和そのものなのです。
そんなことが、起こるはずがないです。」
「兎に角!編入生の二人はラウドくんと同じクラスにしました。
自分達の眼と耳で、きちんと確認してください。
以上です、教室に向かってください」
僕達は追い出されるようにドアを開け、部屋を出て教室に向かった。
「何、彼奴らのあの言い方、ムカつく」
「仕方ないさ、上は知らないの一点張りだから」
「何処でも同じだね、この学園は問題ありません、いじめはありませんよ、って」
「実際は、見えない所で起きているんだよね、そして自分ではどうしようもないから、助けてくれる人を待っている。
頼りたいのは先生なんだけどね。」
教室のドアを開けると、皆がこちらを見てひそひそ話を始める。
『わぁ~』
『気にしない気にしない』
周りを見渡すと、いろんな種族がいる。
エルフ、亜人、トカゲ人族、猫人族、犬人族等、いろいろな種族が、魔法を習いに来てるのか。
これから授業が始まるが、いったいどんな授業なのかとても楽しみ、護衛任務も忘れずにしないとね
そして、授業開始の鐘が鳴り響く。