51 出発
「翔くん、金貨100枚、100枚だよ」
「セレナさん、お金のことあまり分かりませんが、そんなに高いのですか?」
自宅に戻り、領主邸宅での出来事を皆に話していた。
「はぁ~、そうね。
この辺りの狩りとかしかやってないから、お金を使うことあまりなかったわね。
まず1金貨が100銀貨、1銀貨が100銅貨、1銅貨が100銭貨、1銭貨が10厘と同じになるわ」
「なるほど、大体が100単位になってるのですね」
「ちなみに、今、受けているクエストの報酬っていくら?」
「1銅貨です。」
「100金貨稼ぐには、何回受けないといけない?」
「1000回」
「違うだろう、隼人、百万回だよ」
「どれだけ100金貨が、高い報酬か分かるでしょう。
受けなさい、翔くん」
「護衛なんて、僕に出来るでしょうか。
それにまた三年間勉強だなんて」
「同情するぞ翔、俺なら受けないぜ」
「隼人くんと翔くんを一緒にしないで」
「そうだそうだ、それに隼人より翔の方が勉強できるだろう」
「悪かったな、でも翔とは似たり寄ったりだぜ」
「あの~、すいません」
「どうしたの、沙羅ちゃん」
「私も、この世界の学校が気になって…、行きたいな~と思って」
「でも、今回、翔くんへの依頼だから」
「僕からもお願いします、一人では心細いけど二人ならやれる気がします」
「そうね、年齢は変わんないし、あとは学園に二人入れるかよね。
連絡してみるわ」
セレナが連絡をとっているようだ。
話が少し長引いているようだが大丈夫だろうか。
「翔くん、ありがとう」
「いや、本当に独りだと寂しいけど沙羅がいてくれるなら助かる」
「翔くん、それって…、」
沙羅が言いかけたところで、セレナさんが話かけてきた。
「オッケーよ、何とか二人、編入学ということで学園に入れるから、すぐ支度して領主邸宅に行ってちょうだい。」
「今受けているクエストどうしよう」
「安心しな、俺達が代わりにやるから」
「隼人、ありがとう」
「行ってる間に、クエスト、バンバン受けてレベル抜いてやるかな」
「ああ」
「トカゲはどうするの」
「動かないから、餌だけやっといてくれ」
「沙羅、さっき言いかけてたのは」
「んん、何でもない」
「そっか、それならいいけど」
僕は準備にかかる。
荷物なんて、そんなに無いから一時間程で準備がおわった。
沙羅はまだ準備の途中みたいだ。
女性だから荷物も多くなっているようだ。
「アナンタは、お留守番だな。」
撫でながら、声をかける。
「ガォー」
「返事のつもりか?、精霊達は…付いてくるよな。
姿見せないように、ついてきてね」
沙羅と二人、サンピースに向け出発する。
サンピースまで、最近行ったり来たりするのが多いような気がするが、まあ、パートナーがいつも美人だからいいけど。
エルフもいいけど、眼鏡っ子も可愛い、委員長だからなのか、いつも怒っているイメージしかなかったけど、ここに来て案外話すと笑って、優しい人だと感じた。
いつも委員長と言う責任ある仕事だから、生真面目にやってたんだろうけど、今は、普通の女の子に戻っている。
「魔法学園って、どんな所だろう。
翔くん、どう思う、楽しみ~。」
ここに来て最初会ったとき、部屋で一人泣いていたのに…切り替わりが早いな。
「翔くん、早く、置いて行くよ」
「そんなに急がなくても逃げないから」
沙羅が急いで行くので、予定より早くサンピースの街に着いた。
時間まで何処に行きようもなかったので、ちょっと早いが領主邸宅に向かうことにした。
領主邸宅に着くと、やはり向こうも準備が出来ておらず、待合室で待つことになった。
その間、沙羅とくだらない話に盛り上がり、時間を忘れ話に夢中になっていた。
「いや~、待ったかい」
「いえ、こちらが早く来すぎたので」
「そちらが、沙羅さん?」
「あ、はい、安藤 沙羅と言います。
よろしくお願いします」
「私は、ラウドです。よろしく」
「か、かっこいい」
『なに~』確かにカッコいい。
先ほどまでわいわいと話を弾ませていたのに、一気にどん底に落とされた気分だった。
アイドルグループにいそうなイケメンだが、なぜか自分の彼女を取られたような気分になるのは何故なんだろうか。
自分自身、独占欲が強いのだろうか。
いろんな妄想ばかりする自分に嫌気が挿す。
「さあ、出発しよう。馬車を用意してある」
「王都まで、どれくらいかかりますか?」
「そうだな、馬車で3時間位かなぁ、間で休憩するから」
馬車で3時間か、ずっと座っているとお尻が痛くなるんだよね。
車があれば、1時間も走れば着きそうな感じだが、馬車しかないこの世界、我慢して座ってるか。
半分の道のりを過ぎて、やっと休憩になった。
小さな小川の流れる大きな木の木陰で、皆、座って休んでいた。
流石に一時間、座りっぱなしだと、お尻が固くなり痛い。
馬車ならもう少し乗り心地を良くしてくれたら、この旅も随分楽になるはずなのに、そう思いながら固くなったお尻を柔らかくしていた。
沙羅と一緒に適当なストレッチを行ない、そして近くの小川に足を浸けて涼んでいた。
「そろそろ出発するぞ」
「は~い」
あと半分我慢すれば、王都に着くだろう。
あと半分、あと半分、それまで僕のお尻よ、もってくれと祈っていた。





