49誘拐
「小僧、もう逃がせね~ぞ」
「大人しく捕まりな」
金髪の男の子は、袋小路に迷い込み、逃げ場を失っていた。
「はぁ、はぁ~、誰に頼まれたんだ?」
「誰だっていいだろう。
お前を捕まえて身代金をたんまり頂く、それだけだ」
「全く、いつもいつも面倒くさい」
「待ってても、護衛は来ないぜ。
もっと強い護衛付けとくことだな」
「待て!」
「なんだ~!」
「う、暴力止めて話し合いしませんか?」
「翔、なんだそれ」
「だって、顔が怖いんですけど…」
「悪者は、顔が悪いって決まってる。
交代。
やい、その人を放しな」
「おいおい、ガキが俺らに楯突こうってか」
「ああ、寄せ集めに負けるか!」
「上等だ、かかってこい」
おいおい、ケンカする気か相手はヤクザみたいな感じだけど、僕だったら目を合わせず逃げるな。
隼人は、1人の男に向かって突進していく。
相手は武器を持ってないみたいだが、隼人も武器を構えてない。
殴りあいになるか、隼人は相手の近くまで寄ったら、ボクサーポーズをとり、軽くステップを踏む。
相手は、両手を大きく広げ威嚇している。
そういえば、隼人はボクシングジムにも通っていたことを思い出した。
隼人が仕掛ける。
右のストレート、顔面にヒットするが効いてないみたいだ。
相手は、両手で掴みかかろうとするが、ステップでかわす。
顔面へのワンツー、そして離れる。
相手は、右蹴りを仕掛けるが、隼人は足を掴んで倒す。
相手は、すぐに立ち上がる。
そして、殴りかかって来るが、それに合わせてクロスカウンターが炸裂する。
相手は立とうとするが、軽い脳震盪を起こしたのか足が麻痺して立てないみたいだ。
隼人の敵ではなかったが、後ろから蹴りが飛んできて直撃する。
「卑怯だぞ」
「何言ってる。
誰が1対1で戦うと言った。
俺達は四人いるんだぞ」
確かにそうだが、怖いけど僕も参戦するしかないか、剣を取り出し構える。
「おいおい、剣を出したら、こちらも使うしかないな」
「翔!」
「多分大丈夫、ムラサメさんより速くないから」
「おい小僧、大口叩くな、なら俺達三人で相手してやる」
僕は、ゆっくりとしたモーションから動き始める。
三人の動きを確認する。
真ん中の人は、まっすぐこちらに斧片手に向かってくる。
左手の人は、短剣を握って少し遠回りしている、後ろに回るつもりか。
右手の人は、長剣を振り回しながら真ん中の人の少し後ろを走ってくる。
まずは、真ん中だ。
振り下ろされる斧を剣で流し、剣の柄でみぞおちに一撃、痛みで前かがみになった所へ背中に二撃、後ろから来ていた敵の長剣の横切りを、倒れ込んでいる敵の背中を台の代わりに飛びかわす。
そのまま背後から蹴りを三撃、遅れてきた短剣使いの突きを剣で弾き、横腹に肘鉄一撃、腕を絡ませ投げ飛ばす。
あと、最初のやつは…、隼人が動けないことをいいことに、腹いせに気絶するまで、タコ殴りしていた。
「よし、終わった」
「大丈夫か、怪我ないか」
「助けてくれなくても、何とかなった」
「これだから、男は…、行こうぜ、翔」
「ああ。
あ、そうだ。このブローチきみのだろう」
「そ、それは…、あ、ありがとう、きみの名は?」
「俺、隼人」
「お前じゃない」
「翔」
「翔か、強いなきみは、また会おう」
そう言うとそのまま走って去っていった。
「こいつら、どうする?」
「そのままでいいんじゃ」
「ギルドに急ぐか」
僕達は、ギルドに赴き手頃なサイクロプス討伐のクエストを受けて、拠点に戻ることにした。
レベルも上げたいけど、お金のない貧乏人は嫌だな、何も買えないと思いつつ今日も1日が終わる。