45 3年4組
「エレナさん、どういうことですか?」
自宅に戻り、今回の件について説明を受けていた。
番長は回復魔法かけてもらったお陰で、傷や痛みは殆ど無くなり別室で安静に眠っている。
「それより、何でサラマンダーが翔くんの腕に、しがみついてるの?」
空がいつもの調子に戻ったらしく、明るい無邪気な声で叫んでいた。
それに賛同して、ほかの精霊達も何か言ってるが聞こえない振りをした。
「エレナさん、話を進めてください」
「わかったわ、まず私達が受けた依頼は山賊討伐のクエストを受けたわ。何といっても報酬がよかったから、金貨100枚に、山賊を討伐すれば所持している物すべて貰えるから。
だけど、山賊のアジト、山賊達の事を調べていたのだけど、山賊達も警戒してなのか、なかなか尻尾を掴ませてくれなくて困っていたんだ。そんな時、ミレナと翔くんが街に出掛けた時、番長に出会って番長が目当ての山賊の一員だと分かって、ムラサメが跡をつけたらアジトがわかったの、番長がわざとつけられるようにしたかも知れないけど。
その後アジトは分かったけれど、アジトを調べると村人達が100人ほどが人質として捕まっていたから、私達が襲撃したら人質が殺されるかも知れないから襲撃出来なかったの。
でも今回、わざわざ仕返しをする為に、ほとんどの山賊が拠点を襲いに出掛けたから隙きができ、逆に私達がアジトを襲撃したと言うわけ。
そして山賊の貯めた財宝と人質の100人を手に入れたと言う事」
「村人達は、解放しないのですか?」
「残念ながら、全員奴隷になってるの。そのまま解放しても奴隷だから過重労働させられて終わりだから、ここで普通に暮らした方がいいと思うよ」
「奴隷を平民にすることは出来ないのですか」
「出来はするけど、莫大な資金と権力が必要になるわ」
「空達も、奴隷のままと言うことですか」
「今のところは…、力不足で申し訳ないけど、私達にはまだ権力も資金もないから…」
「そうですか…」
「ゴメンね、空」
「ん〜ん、翔くんが謝ることじゃないから」
「そうそう、仲間達がいれば、これからの生活、何とかなるはず。」
「ありがとう、隼人くん」
「それにしても、サラマンダーの火力は凄まじかった。」
「いや〜、それほどでも。長い間の鬱憤と翔くんからマナを貰ったから…。
あと、あたいはちゃんとウェスタと言う名前があるから」
その時、奥のドアが開いた。
そこにいたのは番長だった。
壁に手をかけ、今にも倒れそうなくらいフラフラしているようだ。
それもそうだろう。
あれだけ大量に血を流して死ななかったのが不思議なくらいだ。
いくら傷が癒えたとしても体内の血はたりないはず。それにまだ体調も万全じゃないはずなのに、なんで動いているのか。
体調が戻るまで寝ていれば良いのに。
「番長、もう起きて大丈夫なのか」
「ああ、世話になった。」
「もう少しゆっくり寝ていれば?」
「いや、もう十分だ。じゃあまた会おう」
「何処行くの番長」
「ここに居ても迷惑だろうから出ていく」
「いやいや、番長。もう仲間だろう」
「そうそう、元の世界の人間だから、一緒にやろうぜ」
「私達を助けてくれたじゃない。今度は私達があなたを助ける番よ」
「ありがとう。だが俺は山賊の一員だぞ」
「元だろう」
「元だとしても本当に俺、ここに居ていいのか。
この前まで敵だったのに」
「ああ、もちろんさ番長。
それに山賊は討伐されたし、昨日の敵は今日の友と言うしな」
「番長じゃない、龍興だ。それだけは言っておく。
すまんが世話になる。」
「よかったわね、仲間が増えて。
そろそろ人数も増えてきたから、1部隊として任せてもいいかしら」
「部隊か、すごいな」
「部隊名は、どうする」
「部隊名は、3年4組ってどうかな」
「もっとかっこいい名前にしようぜ」
「学校のクラスか、いいんじゃない」
「俺のクラスは、違うが…」
「いいじゃないの」
「それじゃ、部隊名は決まりね、隊長は…やっぱり翔くんにやってもらおうかなぁ」
「え、僕ですか」
「頑張ってね」
優柔不断な僕が隊長で、大丈夫だろうか。
なんか、誰も立候補しないなら、嫌な役は適当な奴にやらせればいいさ的な。
まるでクラスの役員決めのように感じるのは僕だけだろうか?
それに人と話すのも苦手な引きこもりの僕。
断ろうと思ったら、既に隊長は決まったかのように、皆、それぞれ別の話をしていた。
学級委員もなったことないのに、そんな大層な役を受けて皆をまとめる事が出来るだろうか。
1人の方が気楽なんだけど、不安ばかり募っていく。