41 季節の変わり目
今朝も、村の中にある森の中で日課の瞑想を行っていた。
大分、瞑想も板に付いてきたのか、何となくだが動物の息遣い、木々の生命の息吹が分かるようになり、それが自分の身体の中に溶け込んでくるのが実感出来るようになってきた。
僕が瞑想している間、精霊達は僕が相手にしてくれないから暇なのか、それとも精霊達も木々の間を飛び回り、自然の気を集めているのか分からなかったが、僕の目の前を何度も行ったり来たりするのが感じ取る事が出来た。
暫くすると、僕の瞑想を邪魔するかのように、段々とちかくにある広場の方が騒がしくなってきた。
『何しているんだろう』
僕は何をしているのかが気になり瞑想に集中出来なかったので途中で切り止め、広場の方に行ってみると広場の中央付近で村人達が集まって何かやっている。
「翔くん、丁度よかった、ちょっと手伝ってくれない?」
「セレナさん、何をやっているんですか?」
「今日は、季節の変わり目の日だから、これから邪気払いするのよ」
広場の中央には、土で出来た牛と童子が飾られ、皆で着色を行っていた。
「これから何が始まるのですか?」
「まあ、いわゆる防護魔法の張り直しかな。
防護魔法を攻撃されたり、防護魔法を張ってから時間が経つと段々と防護魔法の効果が薄れていくの。
村1つをまるまる包み込む防護魔法だから、特別な儀式をしないと余程強力な術者じゃないと1人では無理なのよ。
だから年に1度、防護魔法を張り直す為に精霊を集めて、魔物が近寄らないように拠点付近を清めるのよ。」
「あっ、だから動物達は近くに居るのに、魔物は近づく事が出来ずに遠くに行かないと居ないのか」
「そういう事だから、翔くんも精霊集めるの手伝ってね」
「まだ、未熟者ですが出来ますか」
「あら、気付いてないのかしら。
翔くんが来てから、ここにいる精霊が増えて活発になってるの分からない?」
「えっ、そうなんですか」
まだ僕にはエアル達のように力を持った精霊でないと見る事も聞く事も出来ない。
最近は日課の瞑想のお陰か、少しは感じられるようになってきたが、まだまだその存在を確認する事が出来なかった。
「これから儀式に必要なシルフ、ウンディーネ、ノーミード、サラマンダーの4大精霊を呼び寄せるわ。
翔くんにも手伝ってもらえると嬉しいだけど…。」
「成る程いつも、お世話になってばかりだから手伝えることはやりますよ」
「おお流石、翔くん、それじゃ皆と精霊集めてくれる。
精霊達が集まった所で呪術を長老がかけるから」
牛と童子を中心に囲んで村人のエルフが20人、輪になって精霊を集め初める。
ファミリーの精霊達も何が始まるのか、興味津々《きょうみしんしん》で見つめている。
精霊達が集まったのか長老が呪文を唱え始めると、それに合わせて飾られている牛と童子が光輝き始める。
水、風、土、火の精霊達が集まり、数が増えるごとに光も増しているようだ。
既に眩し過ぎて飾られている牛と童子を直視する事が出来ず、僕は目を細め、ソッポを向いていた。
20分程の長い呪文の詠唱が終わると、まるで光が爆発したかのように牛と童子を中心に辺り一面、凝縮された光が波のように辺りに広がっていった。
光が収まり、ようやく眩しさから解放されたら、辺りが何か新鮮な空気が溢れているように感じられた。
「はい、終了~、お疲れ様」
「今回は、かなり遠くまで広がったね」
「翔くんのお陰ですね、今までにない精霊達が集まってましたから」
「そうなんですか?」
「うん、そうだよ。
翔くんを気に入っている力の強い精霊達がいるから、他の精霊達も集まりやすいんだと思うわ。」
「僕で無くて精霊達のお陰と言うことですか?」
「あっ、そう言う意味ではなくて、え〜っとだから、翔くんのマナが凄いと言うことよ。
この辺りにあるマナ地域よりも、翔くんのマナの方が力が強いと言うことよ。
だから翔くんのお・か・げ。
今日も、お祝いの宴会開くから多めに食材集めお願いね」
「宴会に遅れないように日が暮れる前に帰ってくるのよ」
僕は自宅に帰り、皆に朝食を取りながら先ほどのことを話した。
そしてまた同じ日課、いつものように狩りに出掛けていき、日が落ちると村に帰る。
代わり映えの無いその日暮らしの毎日。
たまには変わった事でも起きれば、気分も晴れるのだろうけど。
その気分転換の為なのか、何かにつけて宴会が多いのは気のせいだろうか、そして今日もまた1日が始まった。





