40 決闘後
拠点へ戻り、捕まっていた3人の傷や痣を残らないように、回復魔法をかけてもらい、繋がれた首輪も鎖も取り外した。
傷はほとんどが治りかけていて、酷い仕打ちをされた形跡は残っていなかった。
どうやら番長は約束を守ってくれていたようだ。
義理堅く約束を守る男、恐い噂はいろいろ聞いたけど、そんなに悪い奴ではないと思っていたが、何故、番長は山賊なんかに入ったのだろうか?
気になることはいろいろあるが3人が無事で取り敢えずは安心し、後は食事をして栄養を取り体力を戻さなければならない。
皆も心配しているだろうから、一度、自宅へと戻った。
「ただいま」
「勝負はどうなった?仲間は?」
「番長に勝てた?沙羅は?空ちゃんは?先生は?」
皆が駆け寄り、それぞれが話すが僕は聖徳太子ではない。
一度にそんな事、言われても全部聞き取れる訳ないだろう。
だから一言、
「見れば分かるだろう」
僕の後ろにはムラサメさん、エレナさん、沙羅、紗耶香、空、弥生先生と謎の少女が立っていた。
「お、番長に勝てたのか、ちょっと不安だったが良かったな」
「何だか、僕が勝てないように聞こえたが」
「だって番長だぞ、レベルもだけど厳つくて恐いじゃないか。
俺なら勝負なんてせずに一目散に逃げ出すな」
「翔くんと隼人くんを一緒にしないで欲しいわ」
「兎に角、勝てたから良いじゃないか。
空、弥生先生、ここが僕達の自宅だ。
部屋は、沢山余っているから好きな部屋使って。
もう知ってると思うけど、こちらが空、僕の幼なじみに、弥生先生。
と、この人は一緒に捕まっていた人」
「柊 空です。これからよろしくお願いします」
「綾部 弥生です。ここではもう先生ではないので、弥生と呼んでください」
「最後に、赤い髪の人」
「……」
返事がなかった
力なく項垂れているが、反応はあるみたいで右手をゆっくり上げようとしている。
メニュー画面で相手の名前などを確認しようとすると、ジャミングされて何も分からなかった。
「エレナ、まだ魔法か何かかかっているのですか?」
「いえ、体力も回復しているし、ステータスに異常も見られないわ、あまりの恐怖に精神的ダメージを受けたのか」
「でも、何か精霊に近いもの感じますわ」
「そうなのエアル、精霊ならもとに戻せる?」
「それは無理です。近いと言うだけで何かが違うの…」
「何か方法がないか調べておくでござるよ」
「ありがとう、ムラサメさん」
「それにしても、こんな酷い目にあわせて、番長は酷い男よね」
「沙羅さん、それはちょっと違います」
「どういうことですか、弥生さん」
「こうなってしまったのは私達に原因があるの。
この異世界に飛ばされた時、龍興くんが私と空さんを見つけて、森の中にあった小さな農村で取り敢えず3人で暮らしていたの。
村の人達は親切な人ばかりで、困っていた私達は村の人達に手助けしてもらいながら生活していたの、そこへ山賊が現れ略奪、強奪され、みんな奴隷にされてしまった。
中には反抗して殺された人もいたわ。
私達も山賊に襲われそうになった所を龍興くんが山賊に入る替わりに、私達は龍興くんの奴隷にはなって助かったの。
そしてそのあとすぐ街の酒場で翔くん達に会ったの」
「そうだったのか」
「もっと早く僕が探していたら、山賊に襲われなくてもよかったかも知れない」
僕は自分の力の無さに悔やんでも悔みきれなかった。
僕にもっと力があったら、仲間達を、そして罪のない人達だって守れるのに…。
「翔くん、過去を悔やんでも済んだことだし、助けられたからよかったじゃない」
「番長は、やっぱりいいやつだったわね」
「誰だ、この世界に来たから性格が変わったとか言ったやつ」
「番長も何とか助けられないかなぁ」
「みんなで、力会わせれば何とかなるでしょ」
「ところで、翔、ペットに奴隷、女子ばっかりでハーレム作りやがって羨ましいな」
「たまたま、こうなっただけで…、隼人だって探せばいいだろう」
「もちろん、翔よりも美人ばかり集めてハーレム作ってやる」
「もう、このバカ男どもが…」
「今日は、疲れたから先に寝るね」
「はーい、マスター」
「はい、ご主人様」
「翔くん、まさかその子達といつも寝ているの?」
「そうだよ、空」
「…、不潔」
「翔が不潔言われた」
「笑いごとじゃない!何もないから」
僕は、いつも通り精霊達と寝て、空は何かあったらすぐ駆けつけるといって、隣の部屋で寝ることになった。
空を取り返せて、とりあえずよかった。
今日は、いろいろありすぎて、そしてかなり疲れたせいかすぐに深い眠りについた。