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39 決闘

僕は拠点の中にある森で1人瞑想をおこなっていた。

拠点の中にある割には、とても静かで精霊達の力で満ち溢れていた。

マナ力を上げる為でもあったが、負けるイメージしか浮かばない僕は、ただ無心になる為、そして集中力を上げる為でもあった。


「いたいた、翔くん、そろそろ出掛けるよ」


「もうそんな時間ですか?」


「なかなか帰ってこないから、ミレナちゃんが迎えに来てやったのよ、喜びなさい」


「あ、ありがとうございます」


僕はミレナさんに急かされ、ミレナさんと一緒に急いで自宅へと戻った。


「ただいま」


「お帰り」


隼人と祐太、海斗が返事をした。


「あれ、女子達は?」


「ここでござるよ」


ムラサメさんに、ヒモでしばられてつながれている沙羅と紗耶香がいた。


「ど、どうしたの?」


「ん、逃げ出そうとしてから捕まえたでござる」


「だって~」


「だってじゃない!翔くんを信じなさい」


「そうでござるよ、ミレナも景品になっているのに信じているでござるよ」


「あ、そういえば私も景品だったわね」


「ミレナ…」


「まぁ、それは置いといて早く支度して、時間がないから急いで決闘場所まで行くわよ」


沙羅と紗耶香は、縛った状態のまま馬車に乗せ、サンピースの街近く、指定場所まで移動した。

指定した場所は、街近くの森の中にある広い空き地になっていた。

そこまでは獣道を通り馬車で移動した。

目的に着く頃には、既に番長達は待っていた。


「よく逃げずに来たな、翔」


「当たり前だ、そらを返してもらうぞ」


「それでは、これから決闘するが、私がこちらの見届け人のタナトスと言います。

お見知りおきを」


声は淡々とした喋り方で不思議と心地よい感じがする。

だが、その姿は灰色のローブを頭からかぶり、顔もよく見えない。

ローブ姿は細身だが得体がしれない。

メニューで見ても、名前しかわからずステータスや、他の情報はスキルなのかジャミングされてよくわからない。

むしろ、タナトスの方が脅威きょういを感じる。

声から判断して若い男だと思う。


「そちらの条件の人質、3人ですね」


「空!」


空は返事がなく、見た感じ気力がなく、何処を見ているのか目の焦点があっていないように見える。

3人とも同じで、うつむいて鎖の首輪で繋がれていた。

最初会った時より、傷やあざが少なくなっている気がする。

それに手当もされているようで、包帯で巻かれたり、絆創膏のような物を貼られたりしていた。

約束通り暴力などは振るわれていないようだ。


「暴れたり、逃げたりすると困るので魔法をかけてます。」


『ギリッ』


逃げられないように魔法をかける?

人間を何だと思っているんだ。

よくも空をこんな目に合わせて、絶対に取り返して見せる。

沸々と怒りが込み上げてくる。


「翔くん、勝負はまだよ」


僕はすぐにでも殴りかかろうとしたが、ミレナさんはそれを押し留めた。


「それでは、こちらの見届け人はムラサメ、そして交換条件の私ミレナちゃんと沙羅、紗耶香ね。

これでいいかしら」


「ああ、上等だ」


「それで勝負の勝敗はどうする?」


「それは、どちらかが死ぬまでやる」


死合しあいではなく、決闘だから…。

そうね、相手が気絶するか、参ったと言うまでいいんじゃない?」


「ウム、どうでもいい。負ける事はないからな、問題ない」


「翔くんは?」


「はい、それで大丈夫です」


「それでは、お互い位置に付いて」


広場の中央辺りで、二人向かい合う。


「おいおい、俺は武道家だぞ、まさか素手で戦うつもりか?」


「ああ、もちろん、だけど僕には魔法があるぞ」


「魔法など効くか!あまちゃんだな、俺は殺すつもりでいくぞ」


「俺も、そのつもりだ」


「ワッハッハ、笑わせる」


「翔くん、番長、このコイン投げて地面に落ちたら試合開始よ」


「番長じゃねぇよ、龍造寺りゅうぞうじ 龍興たつおきという名前があるんだ!

覚えろ!!」


「番長の方がいいんじゃ?」


「ほざけ!」


「コイン投げるよ」


ミレナさんはコインを空高く投げた。

コインが、スローモーションのようにゆっくりと見え、えがきながら地面に落ちる。


落ちた瞬間、お互い近づきこぶしと拳が交わる。

お互いの身体にヒットするが、僕だけが逆に飛ばされる。

腕のリーチを考えていなかった。

番長の方が腕のリーチが長いので先に当たり、僕の拳の勢いは半減されてしまう。


「ワッハハ、こぶしが軽いな!」


直ぐに追い打ちとばかりに、番長の蹴りが飛んでくる。


「ロックシールド」


土の盾を作って受け止める。


『ズドーン』


盾に、ものすごい衝撃が伝わる。

番長の蹴りは容赦なく凄まじい。

今までに出会ったモンスターの中でも1番強いのではないと思ってしまう。


「グハッ」


盾で受けきれない衝撃が身体を突き抜け、衝撃でも盾を吹き飛ばされてしまった。


「まだまだ、これからだぜ」


さらに右拳が飛んでくる。


「ウインドフロー」


風の力で、拳の軌道を変え受け流す。


「ロックスピア」


番長の足元の地面から、無数の槍状の土が突き上げる。

番長は、空中へと飛ばされる。

すかさず、


「ウインドカッター」


風の刃が番長を切り刻むが、皮一枚しか切れていないようだ。


かないな、次はこちらからだ」


『分身』


番長が7人に増えた。

僕にはどれが本物か偽物か、それともすべて本物か分からなった。


「それじゃ、こっちも分身、ゴーレム」


土から10体の僕そっくりの土人形が出てきた。

もちろん形だけでまだ動かすことが出来ない。


「バカか、分身作っても気がかよってないやつは偽物だ。

本物は、お前だ!」


7人の分身の攻撃が一斉に、僕目掛けてくる。

7人の攻撃がヒットしたかに見えたが、僕の姿は陽炎かげろうのように消えていた。


「なに!」


「ウォータープレススピア」


複数の水で出来た槍が、高圧で噴射される。


『ドドドッドーン』


「グハッ、まだまだあ!」


確かに命中したはずなのに…、防御力が高いのか、そのまま僕に向かって突撃して来る。

番長が僕に見えない速さで拳を撃ち抜く。

僕は番長が過ぎ去ったあと、痛みて拳の衝撃で番長の通った跡と同じ方向へと突き飛ばされる。


「グッ、クソ」


「もう終わりか?」


直撃を食らって足にきている、僕は必死に立とうとするがなかなか立つ事が出来ないでいた。

流石、番長、拳の一撃一撃がかなり重く効いていた。

ダメージが、かなりたまっているらしく思い通りに動かない。

一気に勝負をかけるか?


「ロックパレット、瞬足」


右手に岩の塊をつけ、そして風の力で無理やり身体を動けるようにした。


「いくぞ、番長」


「こいや」


僕は番長に向かってステップ踏みながら近く、番長は身構えて待っている。


番長はカウンターを狙っていたが、一瞬速く僕の拳が番長の腹を撃ち抜く。


岩で固めた拳を殴る力と風のジェット力で、加速し勢いを増した拳で番長の身体を吹き飛ばした。


「うぉぉぉぉぉ」


番長は、数十メートルは飛ばされた。

が、番長は何もなかったように立ち上がる。

僕は最後の力を振り絞り、それこそ全身全霊をかけて攻撃したのに効いていないのか?

やはり番長は強かった。

にわか煎じでレベルを上げても番長には勝てなかった。

僕にはもう戦う力は残されていなかった。


「拳が熱いぜ!」


そう一言いうと、そのまま仰向あおむけに倒れた。

何だか呆気ない終わり方だった。


「やった、翔くん」


「勝負ありでござるな」


「さすが、ご主人様」


「マスター、すごい」


「さぁ、タナトス、約束よ」


「勝負だからな、今回は致し方ない。

約束はきちんと守ろう、奴隷となっているから、誰かに奴隷としてつけないといけないが…」


「それは、翔くんが勝負して勝ったから翔くんにして」


「わかった…、これでいいだろう」


僕に、奴隷の欄に3人の名前が付いた。


「また、いずれ」


そう言って、番長を空中に浮かしたかと思うと一緒に消えて居なくなった。


僕も、限界だった。

あそこで番長が立ち上がり、反撃されたら僕は負けていただろう。

僕は、そらに近づき呼んだ。


「空…。」


魔法も解かれて、空はゆっくり顔を上げる。


「…翔、くん」


そう言うと、泣きながら抱きついてきた。

僕は、そのまま受け入れ頭をでていた。


「翔くん…」


そのあとの言葉は、出なかった。

幼馴染というだけの関係、それ以上の感情はないはずなんだけど、今はただ無事を確認して抱き締めていた。


「さぁ、終わったでござるよ」


「拠点に戻って、今日はゆっくりしますか」


沙羅と紗耶香は、ほっとしていた。

巻き込んでしまって申し訳なかったが、結果オーライと言うことで許してもらおう。

でも沙羅の視線が妙に痛い。

これは、なかなか許して貰えそうもなさそうだと覚悟した。










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