37 コカトリス
僕は、アナンタを肩に乗せゴンゲン山をグルグル回りながらモンスターを倒し少しずつ登っていく。
アナンタが可愛くて仕方ない。
アナンタの首を指でこちょこちょすると
『がぶっ』っと指を噛まれた。
「イタタッ」
愛らしく甘噛みで噛んでくるがすぐ放してくれる。
「ガワァ」
「勝手に触らないで、と言ってます」
でも僕は触りたくて仕方がない。
「僕も、アナンタと喋れたらなぁ」
「魔獣士になって言語を覚えるか、魔獣にあった言語スキルを買うか、またはアナンタのレベル上げて私達と喋れるようになるか、だいたいそのくらいでござるな」
「レベル上げるには、アナンタに戦って貰わないと上がらないのですか?」
「翔くんのパーティーに入れて戦えば、倒した経験値が分配されるでござる。
もともと普通の人より、多く貰っているはずでござるから、分配すれば丁度いいでござるよ」
「よし、それならアナンタのレベルを上げて、喋れるようにするぞ。
なあ、アナンタ」
通訳を通して話すよりかは、直接、話した方が話が早いし、何より大好きな爬虫類と話したかった。
元の世界でも爬虫類を飼っていたがあったが、話が出来たらどんなに楽しいだろうといつも思っていた。
今、それが現実になろうとしていた。
その為にも早くレベルを上げないと…。
僕はアナンタを最初ペットの一員に入れようと思ったが、経験値の分配率が悪いのと、ペットだからと言って別扱いするのもなんだし、アナンタも話す事が出来れば家族の一員だからと考えて、ファミリの一員に入れた。
最初の目的忘れて、爬虫類の為に張り切っていたが、こういう時に限って魔物がなかなか出てこない。
しばらく歩いていると、マップ画面にやや大きめの赤い点滅がしていたので、そこへ向かってみるとコカトリスが一匹いた。
雄鶏の身体に尻尾は蛇に、ドラゴンの翼が付いている。
まだ、こちらには気付いていないようだ。
「この辺りで、コカトリスなんて珍しいでござる」
「飛ばないよう、翼を先に狙いますか?」
「そうでござるな、あと頭が2つあるから気を付けるでござる」
「アナンタ、ちょっと降りていて」
アナンタをそっと降ろし、コカトリスに向かって走り出す。
コカトリスもこちらに気がついて、翼を広げ前足を浮かせて半立ち状態で
こちらを威嚇する。
そんな事は無視して僕はコカトリス近づき、そのまま翼に斬りかかろうとするが、嘴と足の爪の攻撃に阻まれ、なかなか懐に入れない。
攻撃を避けながら時計周りに、後ろに回るが後ろには蛇の頭があり、蛇の舌を出し蛇の頭がウネウネとしながら僕を威嚇している。
どう攻めるかなぁ、まずは遠距離魔法で、
『ウィンドカッター』
複数の風の刃がコカトリスの身体に飛んでいき、切り刻んでみたが皮一枚切り刻んだ程度で深くは切れていない。
僕の力不足なのか、コカトリスに傷を付けることが出来ない。
『レインプレス』
高圧の雨を降らせるが、頑丈過ぎてほとんど効いていない。
というよりも、やはりこちらも僕の力不足。
コカトリスの方が耐久力が高いということだろう。
僕は頭の中の引き出しを探し、今、何が出来るのかを考えていた。
「ん~」
「ご主人様?」
「そうだ!エルダ、ロックハウス」
コカトリスを覆い囲むように岩で出来た家が周りを塞ぐ。
これは、どこへ出掛けても直ぐに留まれる簡易的な家を作ろうと考えた技だった。
「プレス」
家をそのまま押し潰し、圧力をかける。
「ゲェー」
魔物は叫び声を上げるが、このくらいで死ぬなら苦労はしないだろう。
やはり、コカトリスは潰れた岩から抜け出そうと、岩の隙間から尻尾の蛇がゆっくりと這い出してくる。
僕は、剣で蛇の首を切り裂き胴体と離れた。
そこから蛇の頭を切った所為で怒ったのか、勢い良くコカトリスが岩を押し退けて飛び出てくる。
蛇の尻尾を切れた事と岩で潰された事で、かなり弱っているみたいだが、まだ油断できない。
更に追い討ちをかける。
『雨氷』
冷たい氷雨を降らせる。
コカトリスに触れた場所から少しずつ凍っていく。
コカトリスは苦しそうに暴れていたが、暫くすると、コカトリスは氷漬けになって身動きが出来なくなっていた。
『メテオ』
止めとばかりに空から岩石の流星が、コカトリスに向かって落ちていく。
重力で加速した流星は、コカトリスの身体に当たり次々と貫いていく。
そして、流星が過ぎ去った跡には、コカトリスは霧散して消えていた。
残ったのは、聖霊石と大きめのルビー、コカトリスの肉が落ちていた。