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33 エルダ

「こんな所でなにしてんの!」


「探したんだよ」


「...あ、エアリエル、アルケー、ひ、ひさしぶり...でちゅね」


エルダと呼ばれた少女は、力なく返事を交わす。

密閉された室内、見渡す限り食べ物もなく、周りは何年も経ち風化している。

この少女はどうやって生きて来たのだろうか?

エアルとアルケーの知り合いという事だから、この少女も精霊ということか?


「こんなに弱ってしまってマナがほとんど無いじゃない!」


「このままじゃ消えてしまうわよ」


「もう...い、いいの...ご主人さま...と...いっ...しょ...」


ご主人様というのは隣の椅子に座り、亡くなってから、かなりの年月が過ぎ白骨化した人物の事だろうか。


「ダメよ、エルダ。約束忘れたの?

誰が最初に最上位の精霊にたどり着くか競争していたじゃない」


「3人の約束でしょ、エルダ」


茶色の髪をした可愛い少女で服も茶色だが、服も真っ白な肌も後ろの背景が見えるほど薄く透き通っていた。

エルダは、既に喋る力もないようで静かに目を閉じた。

このままマナが無くなるとどうなるのだろうか。

消えて無くなるのか、それとも意思の無い光のオーブのような物に戻るのだろうか。


「ダメよ、マスターお願いマナをエルダに分けてあげて」


「アルケーからも、お願いします」


「マナって、どうやって分けあたえるの?

それに、この子は誰なの?」


「この子は大地の精霊ノーミードのエルダって言うの」


「早くしないと消えちゃう」


「マスター、話は後でするからマナを分ける為にエルダに触れて、あとは私たちが手伝うから」


よく分からないが、まだ若い少女がそれで助かるなら...、言われるまま僕は、消えそうに透き通っている細く小さな少女の手に触れた。


「それじゃ、マナを移動させるわ」


一気に身体が重くなり、過度の疲労感が全身を襲う。

触れている所から僕の何かが流れ出ているのが感覚で分かる。

これがマナの流れだろうか、段々と身体のだるさが酷くなってきている。

10分くらい吸われただろうか、マナの流れが止まりエルダの身体が元に戻り精気が溢れ出していた。

その分、僕の方が頭がクラクラして立っているのも辛く倒れそうになる。


「...あ」


「エルダ、気がついた?」


「うん、何だかご主人様の臭いがしまちゅ」


「私たちのマスターが?」


「もしかして、ご主人様生まれ変わったのでちゅか?」


「それは、僕にはわからないけど...」


「そうでちゅか」


「エルダは、どうしてこんな所にいたの?」


「話が長くなるけど...いいでちゅか?」


「う~んそうね、マスターが疲れきっているからダンジョンから出てからでいいかしら」


「その方が僕も助かる。」


あまりにも疲労感の為、早くベッドで休みたいと思う。


「あとこのダンジョンを復活させることが出きるか?」


「はい、それは簡単でちゅ。

元ご主人様から誰かに管理者を変えればいいだけですから」


「翔くん、管理者になってみれば」


「僕ですか、ムラサメさんの方がいいのでは?」


「翔くんの方が、契約主のエルダがいるでござるし、ちょうどいいでござる」


「私も、新しいご主人様が管理者になってもらった方がいいのでちゅが」


何故か新しいご主人様になっているが、これまでの戦いでかなり精霊に助けられているから、精霊が増えるのは心強いし僕も助かる。

念の為、リングメニューを確認するとエルダの名前がいつの間にか増えていた。

でも管理者って、僕とダンジョンが1つになってダンジョン内にある核が破壊されたら僕も死ぬとか、よくあるある話だから迂闊に受ける訳にはいかない。


「管理者って、何か制限あるの?」


「特にはありませんでちゅ。ただダンジョンを管理するだけでちゅ。

マナも、私が大地のマナを直接ダンジョンに引きますのでマナの心配は要りませんでちゅ。

ただ私はダンジョンを制御するだけでちゅので、私が自分を維持するのに翔様のマナを少し貰わないといけないんでちゅ」


まあそのくらいなら、もう既にエアルとアルケーにマナを与えているけど、正直自分ではマナが取られているのは分からなかった。

マナを取られるのが二体も三体も変わらないし、既に家族の一員となっているし、


「それなら僕が、管理者になるよ」


「分かりました。ご主人様を管理者に登録しまちゅ」


「ところで僕はここに居なくてもいいの?」


「はい、必要事項はメニュー画面でほとんど出来まるはずでちゅ」


リングメニューを確認すると、確かにダンジョン管理者の項目が増えていた。

項目がいろいろ有りすぎるので、後でゆっくり確認しようと思う。


「それでは、一旦地上に戻るでござる」


僕達が部屋から出ようとした時、空気に触れたせいか風化ふうかが一気に進む。

家具も、食器も、元ご主人様の骸骨も小さな粉になって消えていく。

まるで自分がいたという痕跡を消すかのように。


『俺のようになるなよ...』


「えっ、何か言った?」


「誰も何も言ってないでござる」


気のせいか、怠くなった身体を引きずりながら地上へ戻る。

次にまたこのダンジョンに入るときは、多くのモンスターであふれていることを祈りながら歩いていた。






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