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32 祭壇

「よし、いける」


僕は一撃離脱戦法をとる。

ステップを踏みながら右へ左へと、オークの攻撃を交わしながら一気に素早く近づき一撃剣で切り裂き、反撃を受けないうちに離脱する。

そして何度目かを繰り返した時オークが叫びを上げた。


『ヴォォォォォォォォォ!』


「翔くん、狂化きょうかモードになったでござる。

危険度が1つ上がったから気を付けるでござる」


「はい」


狂化モードってなんだ?

僕は返事はしたが、よく分かっていなかった。

見た目は何も変わってない感じだが...。

とりあえず同じ戦法で行くか?

そう考え僕は先ほどと同じように素早くふところに入り、切りこうとした瞬間、オークの棍棒が勢いよくはなたれる。

『速い!?』


先ほどと違い、明らかに棍棒の勢いが速い。

まるでスローモーションのように僕の身体に棍棒が直撃する。


「グフッ」


「マスター!!」


「翔くん!!」


なんとかエアルが機転を効かせてくれて棍棒が当たる瞬間、咄嗟とっさに風で防御してくれたが、それでも勢いが止まらず僕は数メートル飛ばされてしまった。

僕は慌てて起き上がろうとしたが、腹に激痛が走しり立つことは出来なかった。

幸い、お腹に穴は空いていなかったが、まるでお腹に穴が空いたかと思えるほど痛い。

風防御でも勢いが止まらなかった攻撃、これが直撃だったらと思うとゾッとする


「大丈夫でござるか?

不用意に突っ込み過ぎでござる。」


僕は痛みに耐えながら何とか立ち上がり剣を構える。

腹が痛い、先に回復魔法覚えればよかったと後悔こうかいしていた。

さて、どうするか?

狂化モードでさらに速くなってるし...。

相手よりも速く動くには...。


「エアル、僕でも風を思い通りに動かせるか?」


「マスターの命令は、私の命令でもあるから出来るはずだけど、コツさえつかめば可能ですよ」


「そうか、僕も風を使ってみたいんだが、どうすればいい?」


「任せて下さい。

私が手伝いします」


そう言うとエアルは、自分の身体を風に溶け込ませ始めた。

少しずつ身体が薄くなったと思ったら霧状に消えて行った。


「エアル!?」


『大丈夫です。マスターの近くに居ます。

マスターが思ったことを感じて私が風を動かしますから、風を動かす感覚を覚えて下さい。

今、私とマスターは風で繋がってますから、話さなくても考えるだけで意思を伝える事が可能ですよ』


「考えるだけ...」


『これで良いのか?』


『はい、大丈夫ですよ』


『それじゃ、頼むよ。

イメージは、少し浮かせてジェット機みたいに噴射する感じで』


『了解、イメージ受け取りました』


身体の回りに風が巻き付き、少し体が浮いたような感覚になった。

身体がとても軽い、これなら行けそうだ。

よし行ってみますか。

一歩、一歩と蹴りながら走ると、今までにないくらい速く走れる。

これなら余裕で100メートル走の世界記録を更新出来そうだ。だが速さに身体がついていかず、オークを通り過ぎてしまった。


『あっ、やべ、行き過ぎた』


まだ思い通りというわけにはいかなかった。


「凄い速さでござる。とても低レベルとは思えないでござるな」


「エアル、もう一度行くよ」


オークに向かって走り出す、目と身体がまだついていかないが、すれ違いざまに一太刀ひとたち浴びせる。

オークの体は深く傷つき、痛みの為か、威嚇なのか分からなかったがオークは一声あげた。


「グォォォォォォォォォ」


水が帯びている剣に勢いがついた為、かなりの打撃を与えている。

行ける。

僕は、オークを中心に回るように横にステップを踏みながらオークを切り刻んでいく。

最後にオークの体の中心に鋭い突きを入れる。

剣は反対側まで貫通かんつうしていたが、オークはそれでも棍棒を振り下ろそうとしたので、エアルとアルケーの力を借りて僕は剣を切り上げた。

刺した部分から上が裂け、オークは振り上げた棍棒をそのまま落とし、ひざを地面に着いた。

そしてそのまま倒れ込もうとした瞬間、霧散むさんして消えて行った。

残ったのは、ドロップアイテムの鉄の胸当てと鉄鋼石だった。


「上出来でござる」


「何とか、精霊達がいなかったら...」


そう、精霊達が僕を守ってくれなかったら、先に死んでいたのは僕だっただろう。


「いやいや、まだまだ余裕あったでござるよ」


「そんなことないですよ、エアルとアルケーがいなければ勝てませんでした。」


「うん、自分を過剰評価せず、きちんと評価出来ればこれからもっと強くなると思うでござる」


僕達は祭壇のある方へ向かって歩き出す。

祭壇の前まで来ると、まるで神社みたいに鳥居があり、奥に小さな建物、中には木で掘られた仏像らしきものが飾ってある。

その横には大きな岩が何個かあり、日本庭園みたいな作りで水が流れていただろうか、今は水が流れていないが滝と池の跡がある。


「やはり、枯れているでござる」


「エネルギーが供給されていないと言うことですか?」


「そうでござる。

エネルギー、またはマナともいうでござるが、まったく感じないでござるよ」


「復活させることは、出来ないのですか?」


「出来るでござるが、ダンジョンは契約によって保たれているでござるから、今の契約者を探して契約し直さないといけないでござる。

だけど、ここに居ないとなると探すのが困難でござるよ」


「そうなんですか…」


「翔くんも、ダンジョンキュレーターになりたかったでござるか?」


「そういう訳では無いんですがダンジョンが何故か、可哀想かわいそうな気がして」


「翔くんは、変わってるでござるな、

ここに居ても仕様しょうがないので地上へ戻るでござるか」


「待って、この横にかすかなマナ感じます」


エアルが言った方向、神社の横辺りを調べて見ると、確かにわずかだがマナを感じる。

言われなければ気付かない程度のマナだ。

しかし、そこには壁しかないがマップで確認してみると、確かに壁の向こう側に部屋があることが分かった。


「エアル、アルケー、この壁壊せる?」


「まかせて」


水と風の力で壁を壊し、吹き飛ばして行く。


「穴、空いたよマスター」


人が一人分なんとか通れそうな穴が空いたので中に入ってみると中は広く生活していたであろうか、家具や生活用品などが、朽ち果て散乱していた。

1番奥には、立派な椅子いすこしかけている人物がいた。

近づいて確認してみると、もう人ではなく何年も前に亡くなったであろうか、骸骨がいこつ姿すがた亡骸なきがらであった。

そのわきを見ると、わずかなマナの正体である1人の少女がいる。


「エルダ!!」


エアルとアルケーが同時に叫んだ。



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