295 ヒメルグラースの街
島と島を縫うように進んでいく船。
時々、『ゴンッ』と船が当たる音が聞こえて来るが、この辺りは水深が浅く船がギリギリ通れる深さらしい。
僕は水の中を確認してみると、確かに海の底が見えていた。
底は砂に覆われ、海はエメラルドグリーン色で、まるで南国のリゾート地に来たみたいに海の水は透き通り、とても綺麗だった。
周りの島もほとんどが無人島みたいで、水面から岩が出ている小さな物から、木や草が生い茂り、家を建てれば自給自足で住めそうな大きな島まである。
その大きさは東京ドーム1個分は有りそうな大きな無人島だった。
10分ほどだろうか。
島と島の間を抜けて、ようやく見えてきた。
「あれが火の国、またの名をムツキ国。
そして海の玄関口、ヒメルグラースの街か」
僕は急いで自分の船室に戻り、仲間達をディメンションルームから呼び戻し、荷物の準備をさせた。
そして僕達は甲板に戻り、港の様子を見ていた。
港は、防波堤などなく砂浜のリゾート地と思えるくらい港らしくない所だった。
防波堤が無くても、周りに無人島が幾つもあるので、沖合いが荒れていても湾内に着く頃には波は穏やかになっている。
遠浅の砂浜が続いているので、リゾート地から500メートルくらいの桟橋が沖合いに伸びており、船が発着する場所は底を深く掘っているようで、海の色が船の航路の部分だけ濃い色をしていた。
暫くすると船は桟橋に接岸してロープで固定される。
乗客は順番に船から降り始め、荷物を船から降ろして運ぶ者達など、周りが一気に活気付いていた。
僕達は船から降り長い桟橋を歩いていた。
「長いな、この桟橋」
「この桟橋、木で出来ているけど壊れないのかな」
「それにしても、この国暑いな」
「火の国と呼ばれるくらいだから、どこかでずっと燃えているとか」
「ダーリン、この国は火山大国ですわ」
精霊達は姿を消していたが、ウェスタが小声で話しかけてきた。
「そうなのか」
「はい、お陰で私の力が高まっていますわ、これなら今まで以上に敵を焼き付くしてしまうわよ」
「ウェスタ、物騒な事はするなよ。」
「ダーリン、分かってますわよ」
僕達は桟橋を気長に歩いている。
500メートルなんて短いようで、歩くと意外と遠い。
海を見ると小さな小魚が沢山いるのが見えた。
豊富な食材がこの辺りには沢山あるのだろうと感じた。
桟橋が終わりに近づき、兵士達が大勢いるのが見えた。
入り口は1ヶ所しかなく、門のような建物以外は柵がされ、他の所からは入れないようになっていた。
僕達は入国審査待ちの列に並ぶと、流れるのが早かった。
本当に審査やっているのかと思えるくらいだったが、実際、自分の番が回って来たら、水晶に指輪をかざすだけだった。
これだけで何が分かるのだろうかと思っていたが、指輪の中には犯罪歴や反乱を起こしそうな人は直ぐ分かるそうだ。
皆、無事に入国審査を通過し、これからどうするか、相談したところ、街を散策しながら、ギルドか酒屋を探して情報を集めようとなったので、早速移動しながら探していた。





