29 20階層
マップを再度確認してみる。
先ほどのアルケーの攻撃で、この階の敵はほとんど居なくなっていた。
だけどゴブリンがたった10匹なんて少なすぎる。
やはり何かの影響を受けているとしか考えられなかった。
そしてこの階の中心にあった最後の大きな空間に来ても、ボスは居なかった。
早々に次の階へと進み出す。
7階層は6階層とは逆に中心部から外に向かって渦巻き状となっているようだ。
「もう、ゴブリンは余裕でござるな」
「何とか、慣れてきました」
本当はまだゴブリンを殺すのに戸惑いがあった。
どうしてもゴブリンを刺す時、一瞬、躊躇してしまう。
レベルの高い者なら、その隙を見逃さず攻撃してくるだろう。
それは自分でも分かっているんだけど、何故か心の奥底でブレーキがかかってしまう。
まだまだ足りない。
もっと敵を...、そして僕に慣れさせてくれ、感情を奥底に閉じ込めるように無心で剣を振るっていた。
「魔物が少ないから、どんどん進むでござる」
「はい」
次の階の敵もマップで確認するが、モンスターが数十匹しか居ないことがわかる。
通り道で出会った魔物を、次々と倒して行く。
『まだ、足りない。もっと多くのモンスターを』
これでは番長に傷1つ付けることは出来ないかも知れない。
いつの間にかゴブリンに番長の姿を浮かべ剣を振るっていた。
出現する魔物が少ない為、あっという間に今日1日で20階層まで来ていた。
1階層で手こずっていたのを考えると、魔物が少ないとはいえ脅威的なスピードだ。
今のレベル33、剣のレベル16、精霊魔法レベル20まで上がっていたが、まだまだ足りない。
エアルのレベル21、アルケーも同じくレベル21になっている。
「う~ん、ここの魔物は少なくなっているから、早々に30階層まで行って別の場所で鍛練するでござるか」
「そうですね、もっとモンスターを倒して強くならないと、このままでは番長に絶対勝てない!」
「おおっ、俄然やる気になっているでござるな。だけどそんなに焦らないでござる。
焦るとミスをしやすくなるから、気をつけるでござる」
「しかし、時間が...」
「大丈夫でござる、自分では気付かないかもしれないでござるが、精霊との連携は中々《なかなか》のものでござる。
精霊との攻撃を軸に、戦闘を考えると良いかも知れないでござる」
「精霊との攻撃...」
「マスターの為なら頑張りますよ」
「何でも言ってよ、マスター」
「ありがとう、エアル、アルケー、頼りにしているから」
「照れるです~」
「この調子なら、明日1日で最下層まで行けそうでござるな、ここからはオークがメインで出てくるでござる。
明日、早く出発するでござるから、ここで夜営してゆっくり休むでござる」
ダンジョンの中なので、僕には昼と夜の区別がないが、ムラサメさんには時間が分かっているようだった。
早くレベルを上げて番長よりも強くなりたいのに、なかなか上手くいかないものだ。
それにしても、何故、空の事が気になるのだろうか。
幼なじみという事以外あまり喋らないのに、そんな事を考えながら今日も1日が終わる。