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289 会談2

僕達が広場に姿を現したのを確認したネイロ帝国の兵士達は、席を立ち僕達を出迎える為に歩いてこちらに向かってくる。


ラウージャが小声で指示を出した。


「翔、今回は兵士と一緒に僕の後ろで周りを警戒してくれ」


「分かった」


「僕とバーティン軍指令とミネルバ姫、ガクシン、ネイバンで会談の席に座る。

あとの者は、翔と一緒に護衛してくれ」


と言いながら皆でゆっくりと会談場へ歩いていく。

何メートルか歩いた所で、ネイロ帝国の兵士が目の前まで来ていた。

兵士達、皆が甲冑や服装が明らかに普通の兵士と違い、かなり上の人間だということが分かる。


「わざわざ、お越し頂きありがとうございます。

ミネルバ姫も丁重に保護されているようで安心しました。

早速ですが、会談を進めたいと思いますので、会談の席へどうぞ」


喋っていたのは、席の真ん中に座っていた人間、この兵士達の中では一番偉いだろう。

敵国の人間なのに、何故か好印象を受けた。

偉い人なのに、一切、怖いとか偉ぶった感じを受けず、とても穏やかで優しい人に思える。


僕達はネイロ兵士達の跡を付いて歩いていき、席に着いていく。

僕は、ラウージャに言われた通り、後ろに他の兵士達と一緒に周りに気を配っていた。

ネイロ帝国側も席に着いている10名とそれを守るように1人ずつ後ろに護衛が付いていた。

中央に座る偉い兵士が話始める。


「それでは会談を始めたい通り思います。

私はこの西方地域部隊の司令官のグレンダと言います。

早速ですが、こちらの要望はミネルバ姫とその部下達、そして空中戦艦の返還を求めます」


「ナーガ国からは私、司令官のバーティンが発言したいと思います。

ナーガ国からは、現在ネイロ帝国から占領しているキュウリュウベイとチョウサイの街をそのままナーガ国の統治として認めてほしい事です」


それぞれの言い分が終わり、それに対して妥協案が話あわれた。

小一時間は経っただろうか。

ラウージャの後ろで立っているのに飽きてきて、注意散漫になりかけた時、やっと話が終わりかけてきた。

結局、最後はお互いの意見を尊重する形を取り、最初の言い分通りにすることで話がついた。

この束の間の平和がいつまで続くか分からないが、次の戦闘が始まる前までに国力を上げないといけないだろう。

まぁ、それは国の上の人達が決めることだろうけど。


「それでは最後にお互い調印して終わりです」


お互いの司令官が名前を2つの書類に書き、1つずつお互いが持ち握手を交わす。

皆が拍手をしていたので、僕も一緒に拍手をしたが、何か釈然としない。

兵士の数では圧倒的にネイロ帝国の方が多いのに、一気にナーガ国を攻めずにここに来て和平条約を結ぶのか、何か別の目的があるのではないだろうかと考えていたが、僕の頭では上の人の考えは分かるはずもない。

最後にガクシンさんが握手を求めてきたので握手を交わした。


「次に会う時までに、もっと腕を上げておけよ。

俺もまだまだ強くなるぞ」


「出ればもう戦いたくないですね」


「そう言うな、強敵と戦うのが俺の楽しみだからな」


そう言うとガクシンさんは、笑いながらネイロ帝国兵士の方に歩いていった。

それにつられて、ミネルバ姫とネイバンも歩いていった。


「それでは、これで会談を終わりたいと思います。

それでは皆さん、急いで戻りますよ」


「ちょっと待つのじゃ、グレンダ」


「どうしたのですか、姫」


「会談でわらわはネイロ帝国側に引き渡されたと言う事で間違いないな」


「はい、間違いありませんが」


「では、父に言っておいてくれ、わらわは翔殿の元に行くと」


「何をおっしゃっているのですか」


「分かっておる。

わらわは、王女と言う肩書きを捨てて婚約者の元に行く」


な、何を言っているのですか、王女様。

それにいつ婚約者になったのですか。

折角、会談が纏まったのに台無しじゃないですか。


「姫、そんな大事な事は国王様に直接言われてください。

私達では、そんな事、口が避けても言えません」


「そこを何とかしてくれ、グレンダ」


「無理なものは無理です」


「姫様、グレンダの言い分もお聞き下さい。

グレンダも困ってるではないですか」


「爺、じゃがわらわも、国に戻ると出れなくなるかも知れないのじゃ。

だから、このまま…、」


「姫!」


突然、大声で叫ぶように言ったネイバン、突然の声にビックリして僕もビクッと反応してしまった。

ミネルバ姫の方を見ると、少し青ざめているように見える。


「姫は、爺の言う事が聞けないのですか」


「いや、じゃが、わらわにだって、その」


「姫!言いたい事は全て自分の口で国王様に伝えてください。

そうしない事には他の人に迷惑がかかります」


「だが、わらわは…、」


「姫!一度王都に戻りますよ」


「致し方ない。翔殿、わらわは王都に一度戻らなければならないが、もし翔殿の所に戻れなかったら、わらわを迎えに来てほしい。

頼むのじゃ」


僕は何も返事をしなかった。

確かに姫は美人だし、魅力的な女性だと思うけど、これ以上妻候補を増やすと、今のメンバーからいろいろ五月蝿く言われるだろう。

このまま別れた方がいいだろうと僕は考えていたが、別に付き合ってもいないのに別れるという言い方も可笑しい。

もう会わない事を望むだけだった。


ネイロ帝国兵士達が引き上げていくのを見送りながら、ラウージャが一言、


「モテる男はつらいな」


王子の方がもっとモテるだろうとツッコミを入れたかったが、他の兵士が見ていたので言わずに黙っていた。

そして僕達も引き上げる事にした。

帰りは一時間の距離だが、僕とラウージャ、バーティンの三人はディメンションルームで先にチョウサイの街へと戻って行った。


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